福井県内の魅力を再発見する「小旅」では今回、国の重要文化財に指定されている勝山市の「旧木下家住宅」を訪ねます。江戸後期のかやぶきの庄屋屋敷が、当時の暮らしぶりを伝えています。
福井市中心部から東へ車を走らせること約30分。
勝山市北郷町に国の重要文化財・旧木下家住宅はあります。敷地面積は約200平方メートルで、今から約180年前の江戸時代後期に建てられました。
大きなかやぶき屋根が特徴で、破風には豪華な装飾が。
ここには当時、村のまとめ役の庄屋が暮らしていました。玄関を入るとまず目に入るのが「ニワ」と呼ばれる広い土間と「オイエ」と呼ばれる板敷の広間です。
オイエには囲炉裏が設けられていて、今も毎日、火が焚かれています。
日々の雨などで濡れた木材を乾燥させることで家を丈夫に保つ目的があります。
そして家の中心には8畳の座敷が4つ、奥には仏壇を置く部屋と僧侶専用の間があり法事などの際に使われていました。
嶺北の浄土真宗への信仰の深さがうかがえます。
旧木下家住宅の構造は、福井市から勝山市や大野市にかけて分布したもので、明治以降に建てられた瓦ぶきの大型の民家に継承されています。
丈夫な地盤に高い精度で作られた旧木下家住宅は、江戸時代の大工の高い技術がみられるほか、大きな増改築がなく当時のままの外観や間取りをよく留めていること、移築されず元の場所に残っていることが評価され、2010年に国の重要文化財に指定されました。
住宅内には、建てられた年代や工事の経費を記録した資料が現在も保管されています。趣ある古民家が、地域の歴史や暮らしの知恵を今に伝え、地域を見守っています。