本格的な紅葉シーズンは福井県内でも間もなくです。土砂崩れによる国道158号線の通行止めで一時、観光客が激減した大野市では、7月にう回路が開通しにぎわいが戻ってきました。その矢先、今度はクマの出没が急増。紅葉シーズンを前にした大野市の現状を取材しました。
田島嘉晃アナウンサー:
「大野市の九頭竜ダムです。木々は一部が色づき始めています」
秋が深まり、山の表情が少しずつ変わる大野市和泉地区。
九頭竜湖でボートをレンタルする会社を経営する藤原秀揮代表は「猛暑の影響で、9月や10月入ってもかなり暑い日があり、色づきが例年に比べて遅いような気がする」としながらも「ここ数日は朝に冷え込み無用になってきたので、ポツポツと色づいてきた。ここ数日ですね」と話します。
本格的な紅葉シーズンになると、九頭竜湖周辺は赤や黄色など色鮮やかに染まります。ウェザーニューズによると、11月初めには見頃を迎えます。
この地域では、3月に国道158号の大野市上半原で発生した大規模な土砂崩れにより、岐阜県境にかけて約4カ月間通行止めに。観光客の姿は途絶え、地域は静まり返っていました。
そして7月、待望の仮設道路が完成し、東海地区との往来がようやく再開しました。
藤原代表は「7月に通行止めが解除になって仮設道路で岐阜県から今まで通り入って来られるようになり、他府県からの来訪が増えている実感はある」と話します。
九頭竜湖から大野市街地に向かう途中にある「道の駅越前おおの荒島の郷」にも、人の流れが戻ってきています。
店頭には、旬を迎えている特産の里いもや九頭竜まいたけ、新米などがズラリ。
奥越の秋の味覚を目当てに県内外から大勢が訪れています。
清水和英駅長は「7月のう回路が完成後は客足が徐々に戻ってきた。昨年並みか少し落ちるくらいまで戻ってきた状況」と話します。
通行止めが解除された7月以降、観光バスや団体客が復活。売り上げは前年の9割にまで戻ってきています。「紅葉はこれから見頃を迎える。奥越はサトイモ、コメなど農作物がおいしい。紅葉を見ながら買い物に来るお客さんが増えるといい」と清水駅長は期待を込めます。
一方で、地域を取り巻く新たな不安が、クマの出没です。
今月に入り奥越エリアでは出没件数が急増。道の駅近くの大野市下唯野では、カキの実を食べに来た痕跡が見つかるなど、生活圏に迫る気配も出ています。
道の駅の利用者に話を聞くと―
「私のところはクマはまだ出ないが、勝山はひどい。鈴は持って歩いているがクマが来ると恐ろしい」
「クマは危険。人気のないところは行かない」
「山の方には行かない。本当は紅葉を見に行きたいが自粛している」
「私はキャンプをするが、山は怖いのでなるべく海に行くようにしている」
道の駅荒島の郷では、以前から屋外にごみ箱を設置せず、餌となる生ごみや食材はすべて屋内に保管。人とクマが接触しないための対策を徹底しています。
清水駅長は「お客さんの対策は大切。クマ対応をふまえて紅葉の奥越を楽しんでほしい」と話します。
観光地として息を吹き返し始めた大野市和泉地区。豊かな自然が魅力の一方、クマへの警戒もより一層必要となっています。
今年の紅葉シーズンは“クマ”の存在が気になり“行楽気分”とはいかないかもしれません。県内各地で目撃情報が相次ぎ、29日には勝山市で県内で初めて緊急銃猟が行われました。
クマの出没は例年、11月頃までがピークで紅葉の時期と重なります。行楽地を訪れる私たちも、クマへの警戒や対応が求められています。