激戦州で劣勢 巻き返し狙うトランプ大統領の新戦略

新型コロナウイルスの感染で、選挙活動を中断していたトランプ大統領が選挙活動を本格的に再開した。フロリダ州を手始めに13日には、ペンシルベニア州を訪問。数千人の支持者を前に「抗体ができた。スーパーマンになったかのようだ」と完全復活を宣言し、「そこに行ってキスをしよう。男性も女性もみんなだ!」などとトランプ節を連発した。会場からは「We love you!」「あと4年!」と大歓声が沸き、演説後には、おなじみの「ヤングマン」に合わせて十八番のダンスも披露した。

大統領専用機でペンシルベニア州の会場に乗り付けたトランプ大統領
大統領専用機でペンシルベニア州の会場に乗り付けたトランプ大統領
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選挙活動再開を急ぐ背景には、新型コロナウイルスの感染以降、勝敗のカギを握る激戦州で軒並み、民主党・バイデン前副大統領がリードを広げているという事情がある。トランプ陣営は、得意とする対面形式の支持者集会を連日開催し、劣勢挽回を狙う。

最大の武器はより過激なトランプ節の演説と人目を引くパフォーマンスだ。集会を沸かせ、2016年の選挙で予想外の勝利をもたらした「支持者の熱狂」を再現する新戦略だ。

「ヤングマン」に合わせてダンスするトランプ大統領
「ヤングマン」に合わせてダンスするトランプ大統領

選挙戦最終盤のこの動きを、激戦州の有権者たちは実際、どのように見ているのか。再選への“切り札”を握るトランプ支持者は、より結束を強めるのか、それとも既に愛想を尽かしているのか。接戦が予想される重要州、ペンシルベニアを取材した。

通称「トランプ・ハウス」には一日1000人以上が集結

東部から中西部に広がる製造業の集積地帯「ラストベルト(さびた工業地帯)」に位置する州西部の街に、熱烈なトランプ支持者の家がある。通称「トランプ・ハウス」。トランプ大統領への支持を呼びかけるため、自宅を星条旗カラーに塗り変え、トランプ大統領の巨大パネルを設置したものだ。

通称「トランプ・ハウス」 巨大パネルも設置 ペンシルベニア州ラットローブ
通称「トランプ・ハウス」 巨大パネルも設置 ペンシルベニア州ラットローブ

トランプ愛溢れるこの木造家屋を一目見ようと、2016年のオープン以来全米各地から多くの人が訪れてきた。トランプ大統領の感染後も客足が衰えることはなく、来場者数は今も一日1000人を超えるという。オーナーのレズリー・ロシーさんは、訪問客にトランプ・グッズを無料で配り、支持を呼びかける。

「トランプ・ハウス」の訪問客 老若男女さまざま
「トランプ・ハウス」の訪問客 老若男女さまざま

レズリー・ロシーさん:
多くの人がここに来て、民主党から共和党に支持を変えている。私はそのためにトランプ・ハウスを運営する活動をしている。トランプ大統領は国民のために行動しているし、約束を守ってきた。一番大きな成果は、経済を再生させたこと。おかげで、国民の生活はより豊かになった。それにカリスマ性もある。だから彼のことが愛している。私の人生で最高の大統領だと思う。

「トランプ・ハウス」を運営するレズリー・ロシーさん
「トランプ・ハウス」を運営するレズリー・ロシーさん
ロシーさんはトランプ大統領と面会した経験も
ロシーさんはトランプ大統領と面会した経験も

ロシーさんは、トランプ大統領が9月に亡くなったギンズバーグ最高裁判事の後任に、保守派のバレット判事を指名したことも評価。「最高裁の構成が保守寄りになる」と期待感を示す。

一方、トランプ大統領の新型コロナウイルス感染については―――

レズリー・ロシーさん:
感染がわかったときには、いろんなことがあって大変だった。皆、号泣していたの。ある女性はすごく動揺して、ずっと神に祈っていた。ある時には、民主党支持の男がここにきて、大統領の死を願うようなことを言った。私は怒って追い出したわ。これほど早く回復し選挙戦に復帰したのはすごいことよ!

選挙直前なので、このことで有権者が支持を変えるとは思わないし、たくさんの支持者集会を計画しているので、残された3週間でより強力になって勝利すると思う。彼は馬車馬のように働き、私たちの元に戻ってきた。それが彼という人。彼は(劣勢を)ただ座視するようなことはしない。

訪問客には帽子やTシャツを無料配布
訪問客には帽子やTシャツを無料配布
民主党バイデン前副大統領を揶揄するパネルも
民主党バイデン前副大統領を揶揄するパネルも

トランプ大統領の“完全復帰”で、選挙戦はより強力になるとの見方を示す。

果たして「トランプ・ハウス」を訪れる人々はどう考えているのだろうか。

感染でも冷めぬ「トランプ愛」 しかし岩盤支持層離反も・・・

家族連れの男性:
素晴らしい場所だったよ。今まで見た中で最も愛国的な場所だった。ずっとここに来たいと家族と話していた。誰に投票するのか決めるのはなかなか難しいが、トランプ大統領に投票するつもりだ。

「トランプ大統領に投票する」と話す家族
「トランプ大統領に投票する」と話す家族

バイカーの男女:
トランプ大統領が大好きなんだ。ここで旗やTシャツをもらった。とても愛国的だと思う。

ーートランプ大統領が過去に所得税を支払っていなかったという疑惑についてどう思う?

バイカーの男女:
彼はビジネスマンだ。他のビジネスマンがやっているのと同じことをしただけで、間違ったことはしていない。私の方が税金を払っているかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。全く気にしないよ。

様々なトランプグッズを掲げる支持者
様々なトランプグッズを掲げる支持者

クリスチャンの女性二人組:
彼の髪型が大好きだし、しっかりした考えをもち、正しい立場を取っているから。私は社会主義者でもないし、リベラルでもなくて、中絶反対なの。誰に投票するかは秘密だけど・・・トランプ大統領が好き。なぜなら、良きクリスチャンだから。

支持理由はさまざま
支持理由はさまざま

好調な経済、アメリカ・ファーストの愛国心、中絶反対、キリスト教保守派・・・、トランプ大統領を支持する理由は人それぞれだ。熱烈な支持者は、トランプ大統領が感染から“完全復活”したことで、より結束が強まったとも主張する。まさにトランプ陣営が描く新たな再選戦略の狙い通りと言える。

しかし、州内では、共和党内でトランプ大統領からの離反の動きが加速化し、特にトランプ陣営が懸念する「岩盤支持層」の支持離れも起きている。(後編へ続く)

【執筆:FNNワシントン支局 瀬島隆太郎】

瀬島 隆太郎
瀬島 隆太郎

フジテレビ報道局政治部 元FNNワシントン支局