ドンコの煮つけに、ヤドカリのから揚げ?
日本人の魚離れの救世主として今、“未利用魚”が注目を浴びています。

取材班が訪れたのは、魚介専門の居酒屋「四十八漁場 池袋東口店」です。

店員が説明するおけに盛られた魚。
手前の見慣れない魚が未利用魚です。

四十八漁場事業部長・高畑智弘さん:
見た目がそんなにおいしそうじゃないっていう魚が実はおいしかったり、口に運んだ時に全然違う、想像とは違ったおいしさっていうのが、それがお客さまにとっても新しい体験になっている。

未利用魚とは、見た目や知名度の低さから水揚げされることなく廃棄されるものや、水揚げされたとしても市場に出回らずに廃棄される魚のこと。

日本では、推定で年間約100万トンの魚が未利用魚として廃棄されていると言われています。

全国各地の漁師から直接魚を取り寄せているこのお店。
10年以上前から、漁師からの提案で未利用魚のメニュー導入が始まったといいます。

店員:
(Q.この魚って何ですか?)どんこ。なかなか関東では見ないですね。

岩手・大船渡から送られてきたという“どんこ”は、熱湯で臭みをとってから、丸ごと煮つけに。
大皿に丸ごと盛り付けられた、どんこの煮つけです。

食べた人は、「ちょっと黒いグロテスクなんですけど、おいしいですよと(店員に)言われたから注文しました。(Q.食べてみて?)GOOD!結構、淡泊でさっぱりしておいしい」と話しました。

そして、北海道産のオホーツクホンヤドカリも、どーんと丸ごと、から揚げに。
ヤドカリのから揚げをオーダーした人は、「エビを揚げたような感じ。全部食べられますね。シッポの方はどちらかというと白身という感じ」「カリカリしてる。えびせんべいですね。エビっぽい、おいしい」と話していました。

地元漁師の間では、おつまみの定番だというオホーツクホンヤドカリ。
希少なため、首都圏に出回ることは珍しいといいます。

未利用魚を味わったお客さんからは、「ヤドカリは食べられるって、考えたことなかったです。食べられるんだったら、食べ物を増やす可能性として食べた方がいいですよね、おいしいし」「(今まで)市場に出ないような(魚が)みんな出れば、すごい高級魚になっちゃう」といった声が聞かれました。

農林水産省の統計によると、日本人の魚介類の消費量は右肩下がり。
この20年間で47%、半分近く落ち込んだ一方、肉類の消費量は増加傾向です。

こうした日本人の魚離れの切り札として、近年、水産庁などが推進しているのが未利用魚の活用です。

(一社)大日本水産会 魚食普及推進センター・早武忠利さん:
高級な鯛とか売れる有名な魚以外で、実際は食べられるような魚もあるのに、せっかく海に取りに行ってるのにもったいない。タンパク源として貴重なものだから食べた方がいいんじゃないかということで、未利用魚も利用しましょうという形になってきている。

こうした中、27日に発売されたのは「コノシロ さかなのスナック」。
未利用魚のコノシロを、子どもにも食べやすくスナック菓子にしたのです。

また、一般の人でも未利用魚を漁師から直接購入できるサイトも登場。
「へんな魚ボックス」として未利用魚ばかりをセットにしたものもあり、人気となっています。

(一社)大日本水産会 魚食普及推進センター・早武忠利さん:
知られていないだけでおいしい魚ってたくさんあるので、これからまだまだ世界人口は増えていく。タンパク質は圧倒的に不足する。周りを海に囲まれている日本の人こそ、魚を大事に上手に食べたいなと。