高市新首相が、未来志向で安定的に関係を発展させたいと重視する日韓関係。
そんな韓国で今、深刻な問題が起きていました。
ソウル中心部に長蛇の列ができています。
並んでいるのはいずれも高齢者です。
長蛇の列をなす高齢者のお目当ては、無料食堂。
週に3日、70歳以上を対象に無料で食事を提供していて、あっという間に満席になりました。
訪れていた80代の男性は、「無料給食がないと私たちは飢えるしかない。お金がないからもらい食いをする」と話します。
背景にあるのが、深刻化する高齢者の貧困です。
韓国の66歳以上の貧困率は40.4%と日本の倍以上で、先進国を中心に構成されるOECD(経済開発協力機構)の中で最悪となっています。
貧困の実態は、住まいにも。
ソウル駅のすぐ近く、この一帯には、1部屋2畳ほどの集合住宅が立ち並んでいます。
韓国語で狭い部屋を表す「チョッパン」。
75歳の住人の男性は、いつも冷蔵庫の横で寝ているといいます。
部屋は、足を伸ばして寝るのも難しいほどの狭さで、風呂、トイレは共同です。
チョッパンで暮らす男性(75):
(Q.どのくらいここで暮らしている?)10年ぐらいになりました。(Q.家賃はいくら?)(月)33万ウォン(日本円で約3.5万円)です。
また、約40年前からチョッパンに暮らしている70歳の男性は、「ここが生活空間。格子のない牢獄だ。(食事は)お弁当、教会でたくさんくれる。おいしくなくても腹を満たせる」と話しました。
こうした貧困の原因の1つとされるのが、「年金制度」です。
韓国で年金制度が導入されたのは1988年。
受給率は50%ほどにとどまっています。
さらに、年金制度の構造にも問題が。
日本が国民年金と厚生年金の2階建てなのに対し、韓国は基本的には国民年金のみ。
最新の調査では、年金受給者が受け取った金額は私的年金などを合わせても、ひと月平均約69万5000ウォン。日本円で7万4000円ほどしかありません。
そのため、中高年を対象にした就活のイベントには、働かざるを得ない高齢者の参加が増え続けています。
会場には、高齢者のためのメイク講座やパーソナルカラー診断のブースも。
さらに、悩める高齢者の心理的負担を和らげようと、タロット占いのブースまで設けられています。
占いを受けていた人:
肉体的に大きな無理がなく、近くで働けることがあるか調べに来ました。
韓国内では、高齢者の雇用機会を確保するため、高齢者とする年齢を現在の65歳から70歳に引き上げることも専門家の間で議論されているといいます。
仕事を求める高齢者:
(年金だけで)どう生活ができるんですか。せいぜい食べて過ごせるだけです。もっと仕事をしなければならない。
韓国社会に暗い影を落としている高齢者の貧困。
高齢化が進む日本にとっても対岸の火事ではありません。