2025年10月からスタートしている高齢者らを対象にした新型コロナウイルスワクチンの定期接種。今シーズンは、国の補助がなくなり、居住地によって自己負担の金額に大きな差が出ている。

自治体の補助で異なる個人負担額

福岡・苅田町の『たじり消化器・肝臓内科クリニック』。65歳以上の高齢者などを対象に、新型コロナワクチンの定期接種が10月1日から始まっているが、1回8300円の国の補助がなくなり、自治体の補助(補助金額の設定は、自治体の判断に委ねられる)だけになっている。そのため居住地によって個人負担額に大きな違いが出ている。

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「補助なしで普通にワクチンを打とうとすると、1万5000円~1万6000円くらいかかるが、苅田町は、3500円」と『たじり消化器・肝臓内科クリニック』院長の田尻博敬さんは話す。

苅田町では、町が1万1000円余りを負担しているため、自己負担額は、3500円で接種することができるのだ。

この日、ワクチン接種に来ていた70代の男性は、「隣の北九州市の人から見れば、羨ましいと思われている」と負担額に納得している様子。

明確なルールがない中、どのように自己負担額を設定したのか?『苅田町役場 保険健康課』課長の北浦善栄さんは、「ワクチンの接種費用の25%前後で計算している。加えて隣接する行橋市とみやこ町、それに京都(みやこ)医師会と一緒に協議して決めた」と経緯を説明する。

自己負担“ゼロ”~1万2千円まで

福岡県内60市町村の新型コロナワクチン自己負担額は、大任町が唯一『自己負担なし』の無料。飯塚市や直方市など26自治体の4000円台が最も多い。この他、北九州市が7800円。久留米市が6000円。そして、最も自己負担が大きいのが、福岡市の1万2000円だ。

市民から「自己負担がなぜ、こんなに上がったのか?」「高いのでは?」との声が寄せられている福岡市。新型コロナワクチンの値段が、約1万2000円で、更に『手技料』と言われる人件費が約4000円かかる。福岡市では、高齢者のインフルエンザワクチンの助成と同様、手技料相当分を助成しているので、この金額になっているという。

福岡市健康危機管理課の高園英太郎課長は、「必要とされる国民全てが等しく接種できるようにするのが大事。費用に関しては、全額、国が負担するのが本当ではないかと考えている」と話す。

新型コロナワクチンの自己負担の地域格差は、全国的にも起きていて、福岡市は、他の政令市と共に国に対して国費による一律の助成を要請しているという。

自己負担額が増えると、ワクチンを接種しない人が増える懸念がある。2024年に新型コロナで死亡した人の数は、3万5000人超。インフルエンザによる死亡者の約2800人を大きく上回っている。新型コロナは、今なお、高齢者や基礎疾患のある人にとっては、リスクが大きい感染症であり、医療関係者は、引き続き、ワクチン接種を呼びかけている。

(テレビ西日本)

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