NTT・ソニー・伊藤忠…「親子上場」解消相次ぐ

親会社と子会社がともに上場する「親子上場」の解消が相次いでいる。

9月29日、NTTはNTTドコモに対しTOB=株式公開買い付けを実施し、2020年度内に完全子会社化すると発表した。
買い付け総額は約4.3兆円で、国内企業に対するTOBとしては過去最大規模。
TOBが成立すれば、ドコモは上場廃止となる。
会見で、NTTの澤田純社長は「グローバルレベルでのダイナミックな経営環境にグループとして対応していく必要がある」と述べ、グループで連携することで、厳しい競争環境にあるドコモの収益性などを高めたい考えを強調した。

NTT澤田純社長とドコモ吉澤和弘社長
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こうした大型再編の動きは、2020年度に入ってからピッチを速めている。
5月には、ソニーが金融子会社のソニーフィナンシャルホールディングスの完全子会社化を発表。
約4000億円を投じてTOBを実施し、保有比率を100%に引き上げ、親子上場を解消した。

ソニー 吉田憲一郎社長:
金融事業はエレクトロニクス事業などと並ぶコア事業で成長領域。この事業に対する経営力をさらに強化し、グループ全体の企業価値向上のため完全子会社化を決定した

ソニー 吉田憲一郎社長

また、7月には、伊藤忠商事が傘下のファミリーマートに対しTOBを実施し、保有比率を100%に引き上げると発表。
買い付け総額は約5800億円で、100%にまで引き上げた後、食品分野での連携を深めるため、約5%をJA全農=全国農業協同組合連合会などに譲渡する計画だ。
上場廃止となる見込みのファミリーマートの澤田貴司社長は、会見で、伊藤忠が持つ人材・技術を活用して海外事業の推進やデジタル分野の強化を図る考えを示した。

“日本特有”親子上場…13年連続で減少

野村資本市場研究所の調査によると、親子上場の企業数は2006年度末に417社とピークを迎えたが、その後は右肩下がりに減少し、2019年度末には259社まで減っている。

海外ではあまり見られない「日本特有のグループ形態」だという親子上場。
一般的に親子上場には、子会社として上場させ成長を促すというメリットがあるものの、デメリットとして、親会社が自らの利益を優先させることで、子会社の株主の利益を損なう企業行動がとられるおそれが指摘される。
企業側も、親子上場の解消によってコーポレート・ガバナンス(企業統治)を強化する動きが顕著に見られるようになり、親子上場の数は着実に減ってきている。

こうした中、東京証券取引所も2019年11月、上場子会社の親会社からの独立性を高めるため、社外取締役の就任基準に過去10年以内に親会社に所属していた人を除外するなど、上場制度に関する規則を改定すると発表した。

「上場の意義薄れ拍車を…」

親子上場の解消が加速している背景には、こうした制度変更が後押ししていることに加えて、みずほ総合研究所の長谷川克之チーフエコノミストは以下のようにも指摘する。

みずほ総合研究所・長谷川克之チーフエコノミスト:
上場することの意義が薄れていることも親子上場解消に拍車をかけている面がある。
世界を見渡せば、多くの国で上場企業の数は減少傾向にあり、パブリックなマーケットからプライベートのマーケットに転換する流れがある。
背景には「SNSの拡大等により、上場していなくても企業の知名度を高め、優秀な人材を集めることができること」「基本的に資金余剰の企業が多いこと」「上場に伴う各種コストが拡大していること」が挙げられる。
実際、米国では、短期的な利益に追われ、中長期的な目線での経営に集中できないことを嘆き、非公開化を志向する動きもある。

みずほ総合研究所 長谷川克之チーフエコノミスト

みずほ総合研究所によると、欧米主要国の上場企業数は減少傾向が続いていて、ピーク時と比較すると、オランダでは74%減少(ピークは2000年)、フランスで61%減少(ピークは2000年)、アメリカで46%減少(ピークは1996年)となっている。
日本では、依然として増加傾向にあるものの、世界の減少傾向の流れは一過性ではない状況だ。

さらに、ここにきて親子上場の解消が加速しているのは、コロナ禍で生き残りをかけるためにグループ再編により経営効率を高めようとする動きが広がったこともある。
上場すること自体の意義が薄れ始めているとの指摘もある中、経営の効率化や企業統治の観点から親子上場の解消は今後も加速して続いていきそうだ。

(フジテレビ経済部 土門健太郎記者)