大きな肉団子に鶏の丸焼きなど、高級ホテルの一流シェフが自慢の料理を振る舞っているのはまさかの屋台です。
屋台に並ぶのは本格的な料理の数々。
その一流の味を求めて連日、多くの人々が訪れにぎわいを見せています。
屋台で肉まんを購入した男性は、ホテルが屋台を出店していることについて「とても便利だね」と話します。
一見すると、ホテルが当たり前のように始めたランチサービスに見えますが、実は中国経済の苦境から生まれた苦肉の策でした。
中国・北京にある国営の4つ星ホテルに取材班が訪れると、白いコック帽をかぶったホテルのシェフが屋台で料理を作る姿がありました。
その場で手際よくカットした肉に、特製のタレを絡めてパクチーと唐辛子を加えた絶品のひと品を作ります。
屋台への進出は、5つ星ホテル「ペニンシュラ」でも見られ、ホテル前に設けた屋台で、クレープやハムサンドを販売しています。
相次ぐホテル屋台の出現。
なぜ今、高級ホテルが路上販売に乗り出しているのか?
ホテルのシェフは「お客さんを呼び寄せるためです。いまはこの形の方が人気。みんな(お客さん)無駄使いをせず、節約志向になっている」と話します。
中国では現在、節約志向の広がりから、急激な消費の冷え込みに直面しています。
加えて、2025年5月には公務員らを対象に倹約令を発表し、接待での高級料理や酒、たばこを禁止しました。
その動きが一般企業にも広がり、高級ホテルの主要な収入源だった宴会需要が激減したのです。
さらに、中国経済の低迷は就職を控える若者にも影響を及ぼしています。
就職イベントの参加者は「(応募したのは)少なくとも100社くらい。どこからも返事がない」と話します。
2025年8月の若年層の失業率は18.9%で、現在の集計方法となってから最悪の水準です。
第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣さんは、「中国経済が悪くなってるので、デフレで物の値段が下がるから、中国から安い製品が入ってきやすくなるということで、日本のインフレを押し下げる要因として作用する」と話し、この中国経済の低迷が日本にも影響を及ぼす可能性があると指摘します。
そうした中、北京では20日に中国共産党の重要会議「4中全会」がスタート。
内需拡大など、今後の経済政策がどう話し合われるか注目です。