2023年5月、長野県中野市で住民の女性2人と警察官2人が殺害された事件で、殺人の罪などに問われている青木政憲被告(34)の裁判員裁判の判決公判が14日開かれ、長野地方裁判所は「死刑」を言い渡した。被告には、完全な責任能力があったと認めた上で、「犯行は残虐極まりなく戦慄を覚えずにはいられない」「死刑を回避すべき事情は見いだせない」などと指摘した。一方、弁護側は、控訴する意向を示している。

猟銃やナイフで襲われ4人が犠牲

10月14日昼過ぎの長野地裁。注目の判決の傍聴券を求め508人が集まった。

殺人などの罪に問われている中野市の青木政憲被告(34)。

起訴状などによると、2023年5月、自宅近くで住民の女性2人をナイフで殺害。

さらに、通報を受けて駆けつけた警察官2人も猟銃やナイフで殺害したとされている。

争点は被告の「責任能力」

2025年9月4日に始まった裁判員裁判。

初公判で青木被告は、「黙秘します」と述べた。

事件現場(2023年5月、長野県中野市)
事件現場(2023年5月、長野県中野市)
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その後の被告人質問でも黙秘を続け、事件について何も語らなかった青木被告。

裁判では4人の遺族11人がそれぞれ証言台に立ち、意見陳述を行った。

被害者の遺族(裁判 9月24日):
「何も語らず、責任から逃れる被告の卑劣な態度は許せません」
「死刑しか望みません」

青木被告 初公判の廷内スケッチ(イラスト:一色こうき)
青木被告 初公判の廷内スケッチ(イラスト:一色こうき)

犯行当時、被告に「妄想の症状」があったことは検察・弁護側ともに認めていて、裁判の主な争点は「責任能力」となった。

検察側は「犯行時、善悪の判断力があり合理的な行動もとれていて完全な責任能力があった」として、死刑を求刑。

一方、弁護側は、「善悪を判断し、その判断に従った行動をとることは著しく困難な心神耗弱の状態だった」として、「死刑は回避されるべき」と訴えた。

「人を殺して死刑になるためにきた」

9月26日の結審の前、最後の発言の機会を与えられた青木被告は、初めて自身の心境を語った。

青木被告(裁判 9月26日):
「私は異次元存在から迫害を受け、人を殺して死刑になるためにきた。被害を受けた人には埋め合わせがあるだろう。中の人たちを傷つけて申し訳ない」

青木被告 初公判の廷内スケッチ(イラスト:一色こうき)
青木被告 初公判の廷内スケッチ(イラスト:一色こうき)

そして、迎えた10月14日の判決公判。

坂田正史裁判長は、主文を後回しにして、先に判決理由から読み上げた。

「被告人を死刑に処する」

争点となった責任能力については、「妄想症の症状はあったが、善悪を判断し行動をコントロールする能力を特に問題なく保っていた」などとして完全な責任能力があったと認めた。

その上で、「強固な殺意に基づく、残虐極まりない犯行。人の命を軽視してはばからない様子には戦慄を覚えずにはいられない」と指摘。

さらに「刑事責任はあまりにも重大と言わざるを得ず、死刑の選択を回避すべき事情を見いだせない」などと述べた。

(2025年10月14日、長野地裁)
(2025年10月14日、長野地裁)

そして―。

裁判長:
「被告人を死刑に処する」

検察の求刑通り死刑判決を言い渡した。

判決を言い渡した際も、青木被告は特に変わらず、落ち着いた様子だった。

判決の後、弁護側は、控訴する意向を示した。

担当弁護士:
「心神耗弱という主張をしてきて、なかなかその(医師の)証言についての信用ができないと言われたことは非常に残念。諦めるわけにはいかないので、必ず控訴します」

死刑判決となったポイント

死刑判決となったポイントはー

司法担当記者:
「被告に完全な責任能力があったと認めた点が大きいです。検察側は、妄想症の症状があったものの、犯行への影響はなく、『完全な責任能力があった』と主張。弁護側は、『妄想に支配され、善悪の判断力が著しく低下した心神耗弱の状態だった』と主張していました」

「裁判所は、犯行を目撃した人は攻撃せず、母親に絞首刑への抵抗感を訴えていたことなどから、『善悪を判断し行動をコントロールする能力があった』として、完全な責任能力を有していたと判断しました」

「被告の口から事件について語られることはありませんでしたが、4人を殺害した結果の重大性なども踏まえ裁判員と裁判官は死刑を選択しました」

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