精神障害者や身寄りのない高齢者など「社会的弱者」とされる人の生活支援を続ける女性が岡山市にいます。新たな社会問題となりつつある課題解決のため、次の取り組みを始めようとしています。
◆不動産会社の女性社長のもう一つの顔は・・・
「もうちょっと引っ張る?」
岡山市北区にある就労継続支援B型事業所。毎日、20代から70代の約20人が通い、クラフト製品を作成したり、弁当づくり、配達、販売など幅広い作業を行っています。
運営しているのはNPO法人岡山県精神障害者家族会連合会、通称「岡山けんかれん」。理事長を務めるのは阪井ひとみさん(66)です。
岡山市内で不動産会社の社長を務める阪井さん。精神障害のある人、身寄りのない高齢者、家族から虐待を受けた人など社会のセーフティーネットからこぼれ落ちそうな人たちの入居支援を続けています。
◆来る者拒まず入居可能なマンション「サクラソウ」 社会的弱者の入居支援理由は生活保護につながる「住所」
岡山市の閑静な住宅街にある7階建てのマンション、「サクラソウ」もその1つです。
(「岡山けんかれん」阪井ひとみ理事長)
「この部屋は一般的な入居者のお部屋。7畳ぐらい。来る者拒まずで入居してもらっている」
阪井さんが活動を始めたきっかけは約30年前に、差別や偏見から、誰も借りないような劣悪な部屋にしか住めない、社会的弱者の現状を知ったからでした。
(「岡山けんかれん」阪井ひとみ理事長)
「なんで黙っていると思います?頭がおかしいから?そうではないんです。住所がないと何も始まらないから。住民票がなかったら生活保護も受けられない、年金も受けられないんです」
◆精神疾患がある入院患者の「年齢構成」に変化 75歳以上は20年前の2倍に
厚生労働省によりますと、精神疾患のある入院患者は2023年、全国で26万6000人。そのうち、75歳以上が約40%を占めています。その割合は、2002年と比べると2倍に増え、この20年で高齢化が大きく進んでいることが分かります。
事業所に通う人の年齢構成も変わってきたと阪井さんは言います。
(「岡山けんかれん」阪井ひとみ理事長)
「高齢者が少しずつ増えてきた。65歳以上は高齢者として支援を受ける精神の病気がある人が次の施設に移れるかという問題が今出てきている」
◆「差別」「偏見」などで精神障害者の施設への受け入れが進まない現実 “安住の地”づくりへの使命感
精神障害者の中には認知症がある人や身体合併症の人も少なくないこと、さらに、差別や偏見などもあり、介護保険施設や福祉施設での受け入れが進まない実態があります。
(「岡山けんかれん」阪井ひとみ理事長)
「最近は既に両親が亡くなっていて1人暮らし、生活自体が厳しくなって1人で住むことができなくなっている」
「岡山けんかれん」は今後、社会福祉法人の設立を目指し、1人でも安心して過ごせる施設をつくりたいとしています。
(「岡山けんかれん」阪井ひとみ理事長)
「まだ社会の偏見は強くて、彼らの安住の地を考えるのが私たちの仕事だと思っている」
岡山けんかれんは10月11日に岡山市中区で中国ブロック家族会研修会を開きます。参加費は有料ですが、誰でも参加することができます。自身のこと、家族のことで少しでも不安や困ったことがあれば相談してほしいとしています。