北海道函館市にイカが戻ってきた。
不漁続きだったスルメイカ漁が活気を帯び、価格も下がっている。
一方で見慣れない魚も水揚げ。
何が起こっているのか?
函館市の港に戻ってきたイカ釣り漁船。
この日の漁は?
「いくらか取れた、70箱ぐらい」
「函館沖としてはまあまあ取れた。量は多くないけれど」(いずれもイカ漁師)
この日、約15トンのスルメイカが水揚げされた。

“イカの街”に衝撃が…
しかし、2025年6月には…
「漁獲量ゼロ、こんなの初めて」
「全然、イカがいなかった」(いずれもイカ漁師)
6月の解禁当初は歴史的な不漁に見舞われた。
「この船で獲れたイカはたったの4匹。大きさも小ぶりです」(熊坂友紀子ディレクター)
初日に出漁した11隻のうち半数以上の船で1匹も取れず、初競りが中止となる事態に。
“イカの街”に衝撃が走った。

しかし、9月に入り状況が一転。
函館市水産物地方卸売市場では漁獲量が急激に増加。
9月の取扱量は約230トンで、2024年の同じ月と比べ10倍以上に。
「最盛期と比べたらまだ少ないと思うが、近年の不漁続きの中まとまった水揚げ量が続くのはすごく良いこと。順調に水揚げが続いてくれたらいい」(函館魚市場 今村雄平さん)

平均価格も漁が始まった6月は1キロあたり1987円でしたが、9月は706円まで下がった。
2024年の同じ時期と比べると、3分の1ほどになっている。

「イカを買おうという気持ちになっている。去年はほとんど食べなかったが、今年はこれで2~3回目」(函館市民)
函館市内の鮮魚店。
この日の朝に水揚げされた新鮮な「いけすイカ」は1匹あたり475円。
定置網で取れたイカは1匹250円。
「去年より3~4割安い。イカが入荷してありがたいし、楽しい。『子どもたちにイカ飯を送ってやれる』という客が増えている」(紺地鮮魚 紺地慶一さん)

創業110年を超える水産加工業の老舗。
名物は1週間発酵させて作るイカの塩辛。
原料の入荷状況が好転したという。
「去年は鮮魚店が買う量しか漁獲がなく、水産加工業者が使える量はなかった。9月に入って水産加工業者も仕入れられるようになった」(小田島水産食品 小田島隆社長)

ボタンエビも豊漁
イカだけではない。
北海道南部の森町では、噴火湾の秋のエビかご漁が好調だ。
9月のボタンエビの水揚げ量は約1.7トンで、2024年の同じ時期の2倍に迫る勢い。

2年前から主役のボタンエビに変わり、比較的単価の安いオオズワイガニが大量に取れていた。
それが3分の1ほどに減少している。
「オオズワイガニが入らなくなったら、今度はエビが入りだした」(漁師)

水揚げされる魚にもさまざまな変化が
函館市の鮮魚店ではイカの入荷が増える一方で、見慣れぬ魚も店頭に並ぶようになった。
「きょうも、また変わった魚がとれた。スギという魚。マダイもこの時期になると、この周辺海域で取れる」(紺地鮮魚 紺地慶一さん)

また、魚の大きさにも変化が起きているという。
「ソウダガツオは何年か前から水揚げがあったが、今年は異常に大きい。去年のデータが全然通用しない」(紺地さん)

イカやボタンエビの豊漁など、水揚げされる魚介類の変化。
その要因の一つにあげられるのが「黒潮大蛇行」の終息。
2017年8月以来、日本列島の太平洋側を流れる暖流の黒潮が、紀伊半島から東海沖にかけ大きく南に蛇行していた。

2025年4月、7年9か月続いたこの大蛇行が終息したのだ。
「こんなに劇的に変わった年はおそらくない。気象条件など地球規模で変わっている。黒潮がこれだけ変化するということは、他の海洋環境や気候も変わっている目安になる」(北海道大学大学院水産科学研究院 中屋光裕准教授)
“イカの街”函館は復活するのか。
今後の漁が注目される。
