岩手県岩泉町には、地名にまつわる神秘的な伝説や歴史が息づいている。日本三大鍾乳洞の一つ「龍泉洞」をはじめ、宇霊羅山の龍伝説、温かな人のつながりが残る「うれいら通り商店街」、そして藩境の名残を伝える「国境」地域。地名を辿ることで、町の魅力と人々の思いが浮かび上がる。

岩泉町について、長年にわたり県内各地の地名について調査している宍戸敦さんは次のように説明する。

宍戸敦さん
「岩泉町にある宇霊羅山には観光地として有名な龍泉洞がある。その龍泉洞の断層に沿って岩から水が湧き出るという意味で、岩泉という地名になった。龍泉洞はかつて『わっくつ(湧窟・湧口)』と呼ばれていた。昭和12年、地質学者の脇水鉄五郎が『龍泉洞』と名付けた。龍泉洞の『龍』は『水神』という意味の『龍』、『泉』は『泉(いずみ)』、そして洞内の『洞』ということで『龍泉洞』と名付けている」

Q:龍泉洞の伝説とは?

岩泉町観光協会 事務局長 武田保男さん
「宇霊羅山に昔、龍が住んでいた。ある日、突然雷鳴が轟き大地が揺れて、ここから龍が天高く飛び去った。そしてその龍が飛び去った後の穴が今の龍泉洞になったという伝説を聞いている」

武田さんは「観光地として、たくさんの人が来てくれる。岩泉町にとっては大切な大切な宝になっている」と話す。

このように町に欠かせない存在の龍泉洞は、宇霊羅山の懐にあり、この山とともに親しまれてきた。
そして、山の麓には「うれいら」という名前がつく商店街がある。

うれいら通り商店街の洋服のお直しがメインのお店「きくちや」は、地域住民の手作り品や地元の野菜を集めて委託販売もしている。

うれいら通り商店街の魅力について、きくちや店主の菊池賢子さんは、「若い人がとても頑張ってくれている。商店街の会長も若い人で、みんな仲が良くて、とてもいい雰囲気。重鎮の人が温かく見守っている」と話し、温かな人のつながりを大切にしていることが伺える。

町中から離れたところに「国境」という地域がある。かつてはどんな境界を示していたのか、宍戸さんは次にように説明する。

宍戸敦さん
「国境は読んで字のごとく『国の境』という意味。かつて岩手県は南部藩が治めていた。江戸時代初めに南部藩と八戸藩に分割される。ちょうど国境の辺りが南部藩と八戸藩の境。『国境』というのはそこから由来になっている。国境は『くざかい』とも言われたようだが、盛岡市と宮古市の「区界」と混同することがあったため『国境(くにざかい)』という名前に変えていったようだ」

今では葛巻町と岩泉町の境になっている。こうした地名が、歴史を知るきっかけとなっている。
龍泉洞の神秘、商店街のにぎわい、そして国境に刻まれた歴史。それら一つ一つが、岩泉町を彩っている。

岩手めんこいテレビ
岩手めんこいテレビ

岩手の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。