■相続トラブルを防ぐ!遺言書の正しい知識と残し方

遺言書は相続トラブルを防ぐための重要な手段ですが、60代以上でも書いている人は7%程度と非常に少ないのが現状です。

「紀州のドンファン」と呼ばれた資産家の野崎幸助さんの遺言書をめぐる裁判が話題となる中、昨年の家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割争いは1万5,000件以上と過去最多を記録しました。

しかも遺産トラブルの約7割は、資産総額5000万円以下の一般家庭で発生しています。

■遺言書の作成率はわずか7%「書きたくても書けていない」現実

関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」に出演した終活アドバイザーの平井寛さんによると、NPO法人ら・し・さの調査では60代以上の高齢者のうち、遺言書を実際に書いている人は、わずか7%程度だといいます。

多くの人は、口頭で家族に伝えるにとどまっているようですが、それでは法的な効力はありません。

遺言書を作るメリットとして、平井さんは「自分の意思表示ができる」点を挙げます。

「遺言書を書くことによって、自分が作ってきた財産を誰に残したいかということを自分で決めることができる。(遺言書が)なかったら、本当に亡くなった後、相続人同士の話し合いで分けるという形になってしまうので」と説明しました。

例えば会社経営者であれば「この会社を誰に継がせるか」、「株を誰に渡すか」といったことを、きちんと書いておかないとトラブルの原因になります。

■知っておくべき相続の基本「法定相続人と相続分」

法律上、相続人には優先順位があります。

第一順位は配偶者と子供、子供が先に亡くなっている場合は、その子供(故人の孫)が代襲相続人となります。

子供がいない場合は、第二順位として配偶者と被相続人の両親が相続人となります。

両親もいない場合は、第三順位として配偶者と兄弟姉妹が相続人となりますが、平井さんは「配偶者の兄弟というのは、自分の兄弟ではなく、亡くなった配偶者の兄弟ですから、色んなトラブルが起こる可能性があります」と注意を促します。

法定相続分についても決まりがあります。

配偶者は常に2分の1を相続。残りの2分の1を子供たちで分けることになります。例えば、配偶者と子供2人がいる場合、配偶者が50%、子供たちはそれぞれ25%ずつとなります。

■自筆証書遺言が無効になる3つのNG例

遺言書には大きく分けて「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類があります。

公正証書遺言は、公証役場で公証人と証人2人の立ち会いのもと作成するもの。自筆証書遺言は自分で書いて保管するタイプです。

自筆証書遺言を作る際の注意点として、以下の3つは無効になる可能性があります。

1. パソコンで作成: 基本的に自筆で書く必要があります。財産目録部分のみパソコン可。

2. 代筆で作成:手が震える高齢者などでも、他人に書いてもらうと無効になります。

3. 動画で遺言を残す:現行法では書面が必須です。

また、認知症になる前に遺言書を作っておくことも大切です。

エンディングノートは、一般的に遺言書としての効力はありません。

■末っ子だけに全財産を相続させる遺言書があっても他のきょうだいに権利は残る

番組では、母親が3姉妹の末っ子だけに全財産を相続させる遺言書を残したケースが紹介されました。

この場合でも、法律上の「遺留分」という権利により、長女と次女も一定の遺産を請求できます。

【終活アドバイザー 平井寛さん】「遺留分とは、法定相続分の2分の1にあたる部分です。例えば遺産が1億円の場合、2分の1の5,000万円が遺留分の対象となり、3人の姉妹なら6分の1ずつ、つまり約1,670万円は請求できます」

ただし、故人の兄弟姉妹には遺留分はなく、子や配偶者、親などの近い親族にのみ認められる権利です。

「遺言書を書くときに、遺留分があることを知っていれば、最初からそれを考慮して書けたはず。知っているか知らないかの違いは非常に大きいです」と平井さんは指摘します。

遺言書は「財産がある人だけのもの」ではありません。むしろ財産が少ない家庭こそトラブルになりやすいとも言われています。元気なうちに、そして認知症になる前に準備しておくことが重要です。

(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年9月30日放送)

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