福島県で初の行政代執行による盛り土撤去が2025年3月に完了。約1億5500万円もの税金が投入された。県内ではさらに7カ所の「懸案箇所」が確認されていて、矢祭町では保安林にまで土砂が流れ込む危険な状態が続いている。

盛土に初の行政代執行
2025年3月に行政代執行が終了した福島県西郷村の現場。高さはかなり低くなったが、いまだ土砂が残っている状態だ。

2024年8月28日、西郷村真船地区。うずたかく積まれた土が近くの住宅などへ危険をもたらす恐れがあるとして、福島県内で初めて実施された行政代執行による盛土の撤去。建設現場などで出た土砂の処分場所として目をつけられたとみられる。
盛土規制法による規制開始から1年
県内では、県中・県南を中心に危険な盛土が確認され、1年前の9月24日に全県で「盛土規制法」による規制がはじまった。一定の規模を超える盛土は、事前の許可が必要になり、違反すると罰金などが科される法的な規制となる。

行政代執行近くの住民は「音とかも落ち着いて、前と同じことはないけど、落ち着きました。たまたま住宅が近いから力入れてくれたのだと思う。別なところでは、まだそのまま。だから規制をもうちょっと早くしてくれれば良かったと思う」と話した。
関東圏に一番近い町が抱える危機
福島県の最南端・矢祭町。大量の土砂が運びこまれ保安林にまで流れ込んだ危険な現状を約2年前に認識してから、町独自に罰則付きの条例を設けるなど警戒を強めてきた。
福島県矢祭町の佐川正一郎町長は「どうしても福島・矢祭が関東圏の一番近いところですからそういうところで、盛り土のそういう場所を選定されたのかな」という。

また佐川町長は「現場を見ても、誰だって驚きますから。やっぱり迅速な行動をとっていかないと。災害の季節になってくるので」と危機感を募らせる。

この対応をめぐっては、福島県が「盛土規制法」に基づく行政処分を検討している。県によると、これまで別の法律に基づいて「復旧命令」を行ったが、事業者からは「対応できない」との返答。土地の所有者と事業者に対し、現在復旧作業を行う意思があるかどうかを確認していて、これが確認できなければ危険性の排除を求める行政処分を下す方針だ。
進まぬ対応に町は代執行を要望
危険性を速やかに取り除きたい矢祭町は2025年8月、福島県に対して西郷村のような行政代執行を求める意見書を提出した。
しかし「県の回答としては『今の状態ではすぐ崩れる状態ではない』それ以上の代執行は県ではまだ考えていないという回答は得ました」と佐川町長は話す。
大量の土砂に焦る地元…福島県は矢祭町も含め7ヵ所の「懸案箇所」を確認している。

西郷村の行政代執行には約7ヵ月の時間がかかり、費用は1億5500万円にものぼった。この原資は私たちの税金でもあるので、私たち自身もしっかりと監視の目を持たなくてはならない。
(福島テレビ)