福岡・朝倉市で民間の事業者による“外国人向けマンション”建設計画。SNSなどで『中国人など2000人超が居住』などの噂が広がり、反対の投稿が拡散されたことなどを受け、福岡県が異例の記者会見を開いた。“不道徳な外国人”の増加や排他的政策を打ち出す政党の影響などで、今、全国各地で自分の街への急速な外国人移住に対し、警戒と不安を募らせる動きが相次いでいる。

県が会見「知事は許可してない」

「事実と異なる点がございますので説明したい」。福岡県が9月22日に開いた異例の記者会見。「事実と異なる」としたのは、朝倉市柿原地区で持ち上がっているマンション計画を巡る問題だ。

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県などによると、このマンションを巡っては、中国籍の人物が経営する会社が、建設を計画。2024年5月には、朝倉市からの要請を受け、地元住民に対して建設計画の説明会を開いた。

地元住民に対して事業者は、ゴルフ場に隣接する土地、約1万8000㎡の敷地に14階建てのマンション2棟を建設し、290世帯が入居見込みだというものだった。

中国と香港・台湾の住人が80%

中でも地元住民が驚いたのは、入居者の大半が外国人であること。内訳は、40%が中国人で、香港と台湾が40%、残る20%が韓国人と日本人になる予定だと示された点だ。しかも将来的には、6棟に増やし、2000人が住むことを目指すという内容に、住民は、更なる驚きを隠せなかった。「言葉が通じないから、いろんなトラブルが起こった時にちゃんと対応してもらえるのか?チャイナタウンみたいになっては困る」「『来てほしくない』という話しか聞かない」と地元住民は率直な感想を漏らした。

地域が大きく変わりかねかない状況に住民が不安を募らせる中、SNS上には、更に不安を煽る根拠のない情報が拡散された。『朝倉市に現在マンションができており、数十年後には、1000棟のマンションを作り、2万人の中国人を移住させるとの話』というデマ情報だ。

朝倉市議会でも説明会後の2025年6月、このマンション計画について、議員が市に説明を求めたところ、市の都市建設部長は、「現在、建築確認申請に向けて建築設計を行っている。市としては、地元民の理解を得た後に建築工事に着手してほしいと事業者にお願いしている」と答弁するに留まった。

「移民反対」SNSの誤情報で炎上

SNS上では、『知事が建設を許可をした』などという事実と異なる情報も投稿されている。これを鵜呑みにした人からの抗議電話やメールが県に殺到した。

こうした状況を受け、県は、『許可した事実はない』と否定する異例の会見を開くことになったのだ。「県は、当該マンション建設計画について、現時点で都市計画法第29条に基づく開発許可申請を事業者から受理をしておりません。したがって許可した事実はございません」。

2025年8月に横浜市で開かれたアフリカ開発会議でJICA(国際協力機構)が発表した国内4市(山形・長井市、千葉・木更津市、新潟・三条市、愛媛・今治市)を、それぞれアフリカ4か国の「ホームタウン」に認定し、国際交流を後押しする“ホームタウン事業”を巡り、『移民で埋め尽くされるのでは?』『日本が乗っ取られる』などといった不確かな情報を基にした批判のコメントがSNS上に溢れて“炎上”した。関係市役所の職員が対応に追われる事態となるなど、今、日本各地では、移民に対し、必要以上にナーバスになっている。

今回、福岡県は、現時点では、事業者から相談を含め、具体的な建設に向けてのアプローチはないとしているが、今後、正式な手順を踏んで、建築申請など法的な手続きが進められてきた場合は、どう対応するのか?

現在、行われている自民党総裁選の大きな課題の1つとして議論されている“移民問題”。日本の文化や地域性を守りながら、いかに共生していくか。国が、早急に方針を示す必要がありそうだ。

(テレビ西日本)

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