長引く令和の米騒動。コメの値段は依然として高い水準が続く中、いま密かに需要の高まりを見せているのがコイン精米機だ。

高値が続くコメ価格の裏で人気上昇

本格的なシーズンが到来しつつある新米。

ただ、農林水産省の発表によると8月25日~31日に全国のスーパー約1000店で販売されたコメ5kg当たりの平均価格は税込みで3891円。

前の週と比べて115円上昇するなど、依然として高い水準が続いている。

スーパーでのコメ価格(農水省)
スーパーでのコメ価格(農水省)
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こうした中、いま需要の高まりを見せているのがコイン精米機だ。

静岡県浜松市や磐田市を中心にコイン精米機37台の管理を行っている高塚機械製作所の中村将義 社長は「最近は利用客が増えていて、本当にありがたいことに対前年比で8%くらい伸びている」と明かす。

近年は毎年1%程度減っていたコイン精米機の売り上げだが、2024年度は一転してアップし、2025年5月は前年同時期と比較して15%も伸びているという。

そして、これに呼応するように伸びているのがコイン精米機の使い方を紹介した動画の再生回数で、中村社長によれば「閲覧数が急激な上がり方をしている」そうだ。

なぜ、いまコイン精米機の需要が高まっているのだろうか?

手ごろな金額で利用可能

浜松市中央区に設置されたコイン精米機。

玄米10㎏あたりわずか100円という手軽さもあり、この日も朝から利用者の姿が絶えることはなかった。

一般的に白米と比べて長く保存できると言われる玄米。

それだけに、必要な時に必要な分だけ精米したてのコメを味わうことができるのがコイン精米機の一番の魅力だ。

慣れた手つきで操作する利用客の男性は、自宅の白米が底を尽きそうになるたびにコイン精米機を利用しているという。

コイン精米機を操作する利用者
コイン精米機を操作する利用者

さらに、好みに合わせてコメを磨く度合いを選ぶことができる点も精米機が人気を集める理由の1つだ。

ただ、昨今需要が伸びている最大の要因について、高塚機械製作所の中村社長は「コメの値段が一番大きい。コメの値段が高くなり、少しでも安くて良い物を求める人が増えてニーズが高まっている。近年は農家が消費者に直販することが増えてきているので、コメの流通形態が変わり利用者も増えている」と分析する。

農家から直接購入する消費者増

磐田市でコメや野菜の生産・販売を手がける農健。

できる限り農薬を使わない安心・安全な農法を売りとしていて、8月下旬からは新米の収穫が始まっている。

砂川利広 社長は「あまりに暑かったので高温障害が出ないか非常に心配していたが、意外と少ないのでホッとしている」と胸を撫でおろした。

農健のコメ
農健のコメ

農健では収穫したコメの6割は卸業者に販売する一方、残りの4割は小売販売しているが、2024年8月頃から突如として個人客からの問い合わせが多くなり、注文は以前と比べ3割ほど増えたそうで、砂川社長は「米価が上がりスーパーなどにも品物が無い状況で、(直接購入するため)農家のところに来ていると思う。既存の客の分は年間を通して確保しておきたいので新規の客は断るような状況だった」と振り返る。

価格の安い玄米が人気に

さらに、最近になって増えているのが玄米の購入客だ。

農健では玄米か白米を選んで注文することができるが、10kg当たりの価格は玄米の方が800円程度安いため少しでも価格を抑えたい人や健康志向の高い人が玄米を購入しているといい、砂川社長は「コメが無い状況が起きると、心配になる人たちもいて、年間通して秋に農家から買うのが一番安く買える方法なので買って取っておく客も少し増えてきた。(在庫が)ある時に確保しておこうという考えになるのは自然だと思っていて、玄米で買っておこうという客も増える感じ」と話す。

長引く令和の米騒動。

今後の動向によっては玄米やコイン精米機の需要がさらに高まることになるかもしれない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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