いま、旬を迎えている「緑の宝石」とも言われる高級フルーツ「シャインマスカット」。
高いものでは1万円を超える高級品のイメージですが…ことしはスーパーで1000円以下のものも出回っている。
猛暑などの影響で例年より小粒になったことや、生産量が増えていることが要因とのことだが、“シャインマスカット開発秘話”や甘いシャインマスカットの見分け方を徹底取材した。

■カフェでも「不動の人気ナンバーワンフルーツ」
皮ごと食べられる種なしのブドウ、「シャインマスカット」。
「緑の宝石」とも言われる美しさと、さわやかな甘さで、大阪市内のカフェ「and.cafe」では、シャインマスカットを使ったスイーツが大人気。
ランチについているサラダにもふんだんに使われている。
客:甘さすごい。甘くてびっくりしました。
客:う~んおいしい!
and.cafe 店主の大山友里さん:今マスカットメニューは人気ナンバーワンですね。不動の人気ナンバーワンフルーツっていう感じです。

■仕入れ価格が1房600円~800円程度のシャインマスカットが並ぶ市場
人気の高まりで百貨店では、贈り物として売られるなど、高級なイメージもあるが…この価格に、いま異変が起きている。
カフェの店主・大山さんが、市場でお手頃なシャインマスカットの仕入れをするということで同行させてもらった。
ずっしりと重さがありそうな一房の価格は…
卸売会社の担当者:だいたい800円~850円くらいですね。
大山さん:そう思ったら安いですね。
別のものはさらにもう少し安いようだ。
卸売会社の担当者:これで650円くらい。
大山さん:安い。
大阪市の東部中央卸売市場では、仕入れ価格が1房600円~800円程度のシャインマスカットが並んでいた。
東果大阪・国産果実部 津田佳典部長:5キロの箱入りで、だいたい1000円からもう少し下がっている。いつもの年よりは価格が下がっている。

■スーパーでは1000円を下回るものも
さらに、大阪市内のスーパーをのぞいてみると。
記者リポート:お店に入ってすぐのところにシャインマスカットずらっと並んでますね!価格も1000円切ってますね!
お店の目玉商品の一つ!このお値段にお客さんも次々と手に取る。
客:私、大好き。やっぱりブドウの中で一番これがおいしい。甘くて。
(Q.1000円切っていると?)
客:いいよ。シャインマスカットで1000円切るのは安いからね。
フレッシュマーケットアオイ・内田寿仁社長:9月上旬くらいから値段がドンと下がりまして、例年の2割安くらいの価格で推移してますね。ことしはすごく安いですね。

■ことしのシャインマスカットは「実が小粒」
一体、なぜここまで安くなったのか?その理由を探るため、取材班が向かったのは、大阪府柏原市のブドウ農園。
(Q.今年のシャインマスカットの出来は?)
かねとも葡萄農園横尾慎一さん:お盆明けてからがほとんど雨がまともに降ってなかったっていう影響もあると思うんですけど、ちょっと隙間が生まれたりして、粒も小さめになってることが多い。
ことしは猛暑や雨不足の影響で、すき間が見えるほど実が小粒になっているそうだ。
農園でシャインマスカット一房の重さを量ると、420グラムだったが…
かねとも葡萄農園横尾慎一さん:このサイズ感で粒が太って詰まってたら700グラム以上には乗ってくる。
重さで価格が変わるため今年はひと房あたりの価格が安くなっているというのだ。
ただ、小粒でもいいこともあるようで…
かねとも葡萄農園・横尾慎一さん:今年のシャインは小粒のイメージになるんですけど、味は抜群に甘いかなって。

■生産者が増えたことによる「生産量増」も安さの理由
もう一つの安さの理由は生産量が増えたことだ。
かねとも葡萄農園・横尾慎一さん:やはり人気のブドウでもありますし、生産者も増えてきていると思う。
ほかの品種に比べて病気に強いなど育てやすく、全国の栽培面積は、2007年からの15年間で、1000倍以上に!流通量の急増も安さの一因になっているとみられる。
(Q.なぜこんなに人気に?)
かねとも葡萄農園・横尾慎一さん:皮ごといけて、酸味もなくて、甘い。これがそろってるのは最初シャインマスカットだけだったと思う。
(Q.シャインマスカットの生まれは?)
かねとも葡萄農園・横尾慎一さん:広島県の研究機構が開発したといわれています。

■“日本生まれ”のシャインマスカット 粒が大きく、病気に強い“いいとこどり”
なんと、シャインマスカットは“日本生まれ”。いつ、どのように誕生したのか知っているだろうか?
シャインマスカットの開発に携わった人が和歌山にいると聞き訪ねることに。
(Q.日本生まれなんですね)
近畿大学附属農場 佐藤明彦教授:そうですね。
(Q.どういう経緯で誕生した?)
近畿大学附属農場 佐藤明彦教授:果肉は硬いものがいいだろうと、粒は大きいものがいだろうと。種なし栽培が可能な品種がいいだろう。それから、農家の方が作り、作りやすいためにはやっぱり病気に強いものじゃないといけない、雨が降っても身が割れないものがいいと。
シャインマスカットは2006年、広島県にある、国立の研究所で誕生。
「粒が大きいけど、病気によわい」ヨーロッパ系のブドウと「粒が小さいけど病気に強い」アメリカ系のブドウの“いいとこどり”をしようと、試行錯誤を数十年重ねた結果、開発に成功したのだ。

■開発中は1日250粒ものブドウを口にした佐藤教授
佐藤教授が開発したシャインマスカットを食べてもらった。
近畿大学附属農場・佐藤明彦教授:香りも出て美味しいですね。
佐藤教授は開発中多い時には、一日250粒ものブドウを口にしていたという。
近畿大学附属農場・佐藤明彦教授:丸一日ずっとブドウを食べ続けているもんですから、もう甘いものあんまり見たくなくて。夕方になったら、しょっぱいもの食べたくなってくるんですよ。おせんべいみたいな硬くて、パリパリして、しょっぱいものがもうずっと食べたかったですね。
佐藤教授はシャインマスカットが大人気になったことに喜びを感じる一方で、先も見据えている。
近畿大学附属農場・佐藤明彦教授:いろんな品種があって、それが食べたい人が食べたい時に食べたいものを食べるというのが豊かさになりますから、シャインマスカットができたからといって、安心しちゃダメなんです。次のものを作っていかなきゃいけないですね。

■甘いシャインマスカットの見分け方は「色」
そして「甘いシャインマスカット」の見分け方があるそうだ。
色で糖度が変わり、濃い緑色のものより、黄色のものが糖度が高いということだ。
今や不動の人気を誇るフルーツとなったシャインマスカット。
これからどんな進化を遂げ“輝き”続けるのか?
(関西テレビ「newsランナー」 2025年9月19日放送)
