痛みと闘い創作を続ける画家です。先天性の関節や骨の疾患を抱えながら、個性豊かな作品を描き続けているカミジョウミカさん。現在、長野県松本市でこれまでの創作活動をたどった企画展が開かれています。カミジョウさんの30年の歩みです。
人の顔?生き物?細胞?色鮮やかで、個性豊かな作品が並びます。描いたのは、安曇野市の画家・カミジョウミカさん(48)。創作活動30年を記念した企画展が松本市で開かれています。
画家・カミジョウミカさん:
「こんな変化があるんだとか、こういう作品も描いているんだっていう多種多様な作品ばかりが今回展示されていて、それが面白いなと」
カミジョウさんは世界に5人の超希少難病で関節や骨の痛みと闘いながら創作を続けてきました。
カミジョウミカさん:
「自分にとって絵を描くことは本当に生活の全てであって、絵がなければ、何やってたんだろう?と30年間振り返っても、何も思いつかないんです」
先天性の疾患で、関節が柔らかく脱臼しやすいカミジョウさん。車椅子生活を送ってきました。関節の痛みを抱えながらも、夢中になり、続けてきたのは絵を描くことです。
入退院を繰り返していた19歳の頃。病院スタッフの似顔絵を描いたことがきっかけで、制作に取り組むように。独自の世界観が評価され、数々の賞を受賞するようになりました。
創作は、自宅でほぼ毎日行っています。作品の多くは、自身の夢や空想の世界です。
カミジョウミカさん:
「夢を覚えていて、自然に身についていて、それを絵にすることが多い」
全身の痛みと闘いながらも―。
カミジョウミカさん:
「痛みがフワッて消える時がある。絵を描いていると集中してしまって、両親に止められるっていうパターン」
夢中になって描き続けて30年ー
その歩みをたどる企画展「カラフルユメハムテキ」が8月30日から始まりました。これまで制作した2000点以上の作品から、約100点を選びました。
カミジョウさんの原点がこちら。
カミジョウミカさん:
「これ、全部入院中に描いた作品で」
寝たきりで入院中、退屈しのぎに描いた看護師「古村さん」や医療スタッフの似顔絵。
カミジョウミカさん:
「妄想するのが昔から好きだったので、こういうふうに(デフォルメして)描いたらきっと面白いんじゃないかなと。すごく楽しんでもらえたので、それがあったからこそ今がある」
こちらは20代前半に描いた「バク」。頭には、ユニークな夢の世界が詰まっています。
カミジョウさん:
「眠っている時に見る夢を自分の中で記憶して、面白いものはメモしたり、お化けのようなキャラクター性の強いものがいっぱい出てきますね」
この30年、自身の夢の世界をカラフルな色を使って緻密に、時に大胆に表現してきました。
30代になると、立体的な作品にも挑戦。腸内細菌を表現した作品は、色を付けた綿をまるめビニールシートで覆っています。
こちらの作品、満月の凹凸はティッシュペーパーを使いました。
カミジョウミカさん:
「眠っているときの夢に近づけるっていうのもありますし、デフォルメから始まっている創作活動の熱が凹凸になって広がりをみせた」
表現力は、常に進化しています。
会場でひときわ目を引くのが、大きな「鯉のぼり」ならぬ「信州サーモンのぼり」。2024年、地元の国営アルプスあづみの公園の依頼でデザインし、大空を泳ぎました。
カミジョウミカさん:
「見てくださった方々がウキウキするような、楽しい気分になっていただけたら」
見る人を魅了し、豊かな気持ちにさせるカミジョウさんの作品。自身にとっても、創作活動は生きる源です。
8月完成したばかりの最新作「多様性な細胞」。
カミジョウミカさん:
「たくさんの目を描いたんですけど、人の目が一番多様性を邪魔しているし、(自分は)車椅子に乗っているだけで目立ってしまうので、視線というのが今後、多様性が広がる中で感じなくなればいいなと」
最近は病気の進行で、痛みが増し、動きも制限されていますが、創作への意欲はとどまることがありません。
画家・カミジョウミカさん:
「海外や他の地域で展示してもらえるように、がんばっていきたいなと。できるだけ、細く長く絵を描き続けられたらいいな」