「キッチンの水道修理」を依頼しただけなのに…女性が業者に請求されたのは80万円。工事後のキッチンには、とても修理をしたとは思えない大量の“傷”が。
国民生活センターによると、昨年度の「レスキュートラブル」に関する相談件数は過去最高の8802件。10年前のおよそ4倍になっているということだ。
一体、どのような手口を使っていたのか…実態をツイセキした。

■「害虫駆除」で33万円請求…業者の社員2人逮捕
18日、恐喝などの疑いで逮捕されたのは、「近畿住宅設備」の社員の男2人。
2人はことし6月、害虫駆除を依頼してきた大阪府寝屋川市の男性に対し「はよ金払ってサインせえや」などと脅し現金33万円を支払わせ、無理やり契約書にサインをさせた疑いがもたれている。
警察によると2人は、男性に対して「害虫の原因はキッチンの水漏れ。33万でどうにかしたる」などと発言。
不審に思った男性が、知人の業者に電話で相談したところ、ケータイを取り上げられ、脅迫されたということだ。

■「小賢しいまねすんな、全部出せ」“別会社”名乗り同様の事件でも起訴
2人は、この事件の翌月に同様の事件で逮捕され、すでに起訴されている。
起訴状によると、2人はことし5月、トイレの修理を依頼した大阪市都島区の20代の男性の家を訪問。
このときは、「近畿住宅設備」ではなく「西日本住宅設備」と会社名を名乗っていた。
2人は、「便器を外した瞬間、うんちの水があふれてきた」「財布の中身出して。小賢しいまねすんな。全部出せ」と強く迫り、現金20万1000円を支払わせた罪に問われている。
さらに、外に出て車の中で「クレカ持ってる?俺らは別に強制させてない。お前が作業をお願いした。そうやな」と問い詰め…
恐怖を覚えた男性は中古品買取店で、スマートフォン2台を購入し、男らに渡した。
先週開かれた初公判で、起訴内容を読み上げられた被告の男は「一部違いはあるかなと思います」と答え、もう一人の被告は「間違いないです」と答えた。

■高額請求された被害者はほかにも
さらに取材を進めると、2人が名乗った「西日本住宅設備」の工事で高額請求された被害者がほかにもいることがわかった。
兵庫県・尼崎市に住む70代女性はことし1月、キッチンの水が出にくくなったため、ネットで業者を探し、修理を依頼した。
被害を訴える女性:ここから水が細く出て、どこかが詰まったと思ったんです。
30分ほどで作業員が家を訪れ、修理を始めたが…
被害を訴える女性:工事はとにかく、養生(テープ)をしないからもうほこりだらけ。下は下で工具を置きっ放し。すごい粗い仕事でしたね。
工事直後のキッチンの写真を見ると、シンクのふちがへこみ、壁には傷もついている。
現在の様子と比べてみると、工事のずさんさがよくわかる。
また、作業員は女性に「お風呂場も見せてくれませんか」と質問してきたという。
被害を訴える女性:お風呂も次見たいと言いましたからね。だから『風呂はちゃんと工務店さんがいますから、それは結構です。ここだけです』と言って、お断りしました。

■悪質業者は「トイレ・台所」を“キッカケ”にする
被害者の救済を行う長岡健太郎弁護士は「悪質な業者の特徴がある」と話す。
長岡弁護士:トイレとか台所がきっかけのことが多くて、(業者が)来たときに『家のほかの水道もおかしいんじゃないですか』みたいなことで、家中の水道を見られたり、それで修繕を頼まれたり。そういう形でどんどんやって、無理なので『次の高額の工事』を勧める形が多い。
国民生活センターによると、昨年度の「レスキュートラブル」に関する相談件数は過去最高の8802件。
10年前のおよそ4倍になっているということだ。

■修理後に“80万円”請求!「業者がいると警察に電話できない」
キッチンの水道の修理を依頼した女性。およそ4時間の工事が終わった後に、作業員からようやく契約書が渡されたが、そこには驚きの金額が!
なんと、合計金額が「80万円」。
契約書の写しをよく見てみると、金額欄の隣にある備考欄に、あとから「0」を付け足したとみられる形跡がある。
被害を訴える女性:とにかく金額が大きいから、銀行振り込みがいいと言ったんです。
(Q業者は何と言った?)
被害を訴える女性:『現金でじゃないとダメです』って言われたんです。
女性は翌日、現金80万円を引き出し、作業員に支払ってしまった。
被害を訴える女性:慌てたらダメです。慌てたからこういうことになって。でもやっぱり怖いですよ。1人で家にいてその人(業者)がいて、警察に電話なかなかできません。

■組織ぐるみで“高額請求”?会社は所在不明
関係者によると、去年「西日本住宅設備」に関する被害相談が“80件以上”あったということだ。
会社ぐるみで悪質な修理や高額請求を行っているのかー。
取材班は神戸市にあるという会社に向かった。
記者リポート:ここですね、この建物の1階に会社が入っているということなんですが、見た目は一般的な集合住宅に見えます。実際に会社があるのか中を見てみようと思います。
記者が部屋を訪ねたが、いまは無関係の住民が住んでいた。
いったい会社はどこに行ったのか。
インターネットで検索すると、ホームページはすでになくなっていた。

■「代表とみられる人物」に直撃
しかし…「口コミサイト」に会社の電話番号とみられるものを発見。
さっそく記者が電話をかけてみると、会社の代表とみられる人物が電話に出た。
会社の代表とみられる人物:もしもし。
(Q西日本住宅設備でしょうか?)
会社の代表とみられる人物:そうですね。
関西テレビの記者と明かしたうえで質問する。
(Q水道工事で高額の請求をしているという被害があるが、把握しているか?)
会社の代表とみられる人物:そちらに関しては事実確認中ですので。
(Q2人が逮捕されたのは知っている?)
会社の代表とみられる人物:はい、そうですね。
(Q2人は西日本住宅設備の社員か?)
会社の代表とみられる人物:違います。じゃないです。
(Qどういう関係性?)
会社の代表とみられる人物:そちらもいま仕事中ですので、またご連絡させてください、すみません。
(Q水道工事をやっている会社?)
会社の代表とみられる人物:はい、またご連絡してください。

■社名を変えて事業は続いていた
2人を知っていると言いながらも、「社員ではない」と突き放す。
さらに、驚きの事実が明らかに。
(Q会社名が変わっている?)
会社の代表とみられる人物:あーそうですね。ちょっと変更してます。
電話は切られてしまったがが、社名を変えて、水道工事事業を続けていることがわかった。
急なトラブルにつけ込む「レスキュー商法」。
被害に遭う危険性はあなたの身近に潜んでいるかもしれない。

■「安すぎる料金表示」と「夜間のトラブル」に注意!
レスキュー商法に詳しい長岡弁護士によると、安すぎる料金表示と夜間のトラブルには注意が必要ということだ。
業者のマグネット広告がポストに投函されていることもあるが、安すぎる料金表示には注意が必要だ。
また「24時間対応」を謳っている業者もあるが、今回の事件は2つとも夜間に発生していた。夜中にトラブルが起きても、落ち着いて業者を選ぶことが大切だということだ。
ちゃんとしたサービスをしている業者もあるが、悪質な業者が社名を変えて、拠点を変えて次のターゲットを狙っているかもしれない。
菊地幸夫弁護士:(今回の被害者の方が、警察を呼べないので)1人で対応するのは怖いとおっしゃっていました。だから、例えば家族やお隣に仲の良い方がいたら立ち会っていただいて、圧力に負けないような体制で業者の方を受入れるっていう工夫も必要かなと思いますね。
(関西テレビ「newsランナー」2025年9月18日放送)
