26歳の男性が監禁されたうえ殺害され、海に遺棄された事件で、監禁などの罪に問われた男に判決が言い渡されました。
そして遺族が初めてメディアの取材に応じ、「ただただ、生きてほしかった」と悲痛な胸の内を明かしました。
■海岸で遺体で見つかった男性 初めて取材に応じた遺族の思い
去年10月、大阪で起きた凄惨な事件…。
【記者リポート】「防波堤の向こうで、遺体が流れ着いているのが、見つかったということです」
大阪府貝塚市の海岸で、遺体で見つかった26歳の男性。経営者となる夢半ばで命を絶たれました。
警察は事件に関与した疑いで男3人を逮捕。
その1人に18日、判決が言い渡されました。
【宮城竜斗さんの父】「あいつなら大丈夫やと思ってたんでね。こんなことになって、本当につらい」
「息子の生きた証を残したい」と、初めて取材に応じた両親。
【宮城竜斗さんの母】「何で殺さなあかんかったの。殺されるようなことを竜斗はしたのか…」
なぜ男性は殺害されたのか。
両親の証言や、裁判の記録などをもとに、事件の経緯を辿ります。
■激しく損傷した遺体で見つかった男性 男3人を逮捕
事件が発覚したのは、去年11月。
【記者リポート】「こちらの高さが2メートル以上ある防波堤の向こうで、遺体が流れ着いているのが見つかったということです」
激しく損傷した遺体となって見つかった、宮城竜斗さん。死因は窒息死で、両足と顔は粘着テープで縛られた状態でした。
大阪府警は、複数犯による犯行とみて捜査をはじめ、遺体発見からおよそ20日後。
【記者リポート】「中村容疑者の身柄が検察庁に送られます」
警察は監禁などの疑いで、中村僚希被告(27)や川口陽大被告(22)ら男3人を逮捕。
中村被告は殺人と死体遺棄の罪でも逮捕・起訴され、主犯格とみられています。
■「経営者になってお姉ちゃんを雇いたい」「家族思い」な被害者の男性
裁判が先行して進む川口被告の判決を控える中、宮城さんの両親が初めてメディアの取材に応じ、悲痛な胸の内を明かしました。
【宮城竜斗さんの父】「本当に亡くなったかっていうのが、分かってない自分がいる」
【宮城竜斗さんの母】「ふと帰ってきそうな感じで…」
4人きょうだいの長男として生まれた宮城竜斗さん。幼い頃から「家族を大切にする子」でした。
【宮城竜斗さんの母】「やっぱりきょうだい思い、親思いで…誕生日とか記念日とかがあれば、『ごはん行こう!』っていつも言ってくれて」
【宮城竜斗さんの父】「いつも周りに明るく接して、根拠がない自信というか…みんなを励ますんですよね」
そんな宮城さんは“経営者になる”という夢を抱いていました。
その理由は、「聴覚に障害がある2歳上の姉を、自分の会社で雇うことなどで支えたい」というものでした。
【宮城竜斗さんの母】「自分が経営者になって、やっぱりお姉ちゃんなんですよね、行く着くところは。自分が経営者になって、お姉ちゃんを経理として雇いたい」
夢半ばで命を奪われた宮城さん。一体、何があったのでしょうか。
■事件の流れが明らかに 報酬100万円で事件に加担するようもちかける
取材や裁判記録で、事件の流れが徐々に明らかになってきました。
実は宮城さんと中村被告は、共同経営の形で飲食店をオープンする計画を立てていました。
しかし、開店準備の金の出入りに不信感を抱いた宮城さんは、事業から手を引きます。
これを中村被告が逆恨みし、犯行に及んだといいます。
去年10月26日、中村被告は大阪市西成区の路上で、初対面の川口被告に対し、「(宮城さんが)店に2000万円の損害を与えて逃げた」と話し、報酬100万円を提示し、事件に加担するようもちかけます。
10月26日午後11時すぎ、さらに川口被告の先輩の男も加わり、3人はアルバイト終わりの宮城さんを車に連れ込み、結束バンドや粘着テープで縛って監禁。
そして、中村被告が宮城さんの口と鼻を粘着テープで塞いで窒息死させ、岸和田市の海に遺体を遺棄したとみられています。
連絡が取れなくなった宮城さんを、両親は懸命に探しましたが、警察署で“無言の対面”となりました。
【宮城竜斗さんの母】「つらかったよね。何があったか分からへんけど、きっとつらい思いをしたよね。寒かったよねと」
■何者かがLINEで被害者の生存を偽装か
悲しみに暮れる中、“ある違和感”が両親の頭をよぎります。
【何者かが送ったメッセージ】「ごめん!しばらく沖縄におる!落ち着いたら連絡する!」
これは、宮城さんのLINEアカウントから父親に届いたメッセージ。
【宮城竜斗さんの父】「『心配せんとって』みたいなLINEが来ていて、生きていた、良かったと。『困っていたら、ちゃんと話せよ!』という感じで(返信したが)…それ、犯人だったんですよね、結局は」
送られてきたのは殺害された後の日付で、何者かが“宮城さんが生きている”と偽装した疑いがあるのです。
【宮城竜斗さんの母】「『じゃああのLINEは誰やったん?』みたいになって。すごくうれしかったところから、どん底に突き落とされた感じで」
安堵から一転、絶望の淵に突き落とされた両親。
■既読にならない…『大事に育てる』決意のメッセージ
“息子を失った悲しみは埋まることはない“と話すなか、宮城さんの姉に子どもが生まれました。
その誕生日は偶然、宮城さんと同じでした。
【宮城竜斗さんの父】「息子の命のバトンが、次に渡されたと思って、『大事に育てる』というのを、竜斗に伝えたくて」
しかし最愛の息子へ送ったメッセージは、既読のしるしがつくことはありません。
【宮城竜斗さんの父】「竜斗が(経営者になる)夢を追って、目標をもってやっている中で、その夢に殺されたというか…」
【宮城竜斗さんの母】「竜斗の結婚した姿とか孫とか、見たかったなぁていうのはあって…。まだまだこれから楽しく、好きなことをやっていたやろうから、それを奪われたのはやっぱり許せない」
■判決を前に「更生していけるような判決を」
そして18日、川口被告の判決の日を迎えました。
川口被告はこれまでの裁判で、起訴内容を全て認めています。
【宮城竜斗さんの父】「川口被告がいなければ、こういうことにならなかったんじゃないかと。そこを踏まえて、公正な裁判というか、罪を償うようにしてほしい」
【宮城竜斗さんの母】「今後、更生していけるような判決が出ればいいと思っています」
■懲役2年の実刑判決 判決に遺族は「短い刑期」「あと2人の判決を見守って」
【大阪地裁堺支部 藤原美弥子裁判長】「被告人を懲役2年に処する」
大阪地裁堺支部は、「被害者を待ち伏せし、車内で結束バンドや布テープを巻きつけた犯行態度は、粗暴かつ悪質。報酬欲しさに犯行に加担したことは、意欲的な動機で酌量の余地はなく、果たした役割も大きい」などと指摘し、川口被告に懲役2年の実刑判決を言い渡しました。
判決を聞いた宮城さんの両親は…。
【宮城竜斗さんの父】「人が亡くなってるということをふまえたら、短い刑期だとは思うが、実刑を受けるということに関しては、納得している」
【宮城竜斗さんの母】「(竜斗さんに)きょうの判決を報告して、『あと2人の判決を見守ってほしい』とお願いしようと思っている」
夢半ばで命を奪われた宮城竜斗さん。
殺人などの罪に問われている中村被告の初公判は、まだ見通しが立っていません。
■「被告の責任は重いものがある」と菊地弁護士
監禁に関与したとされる川口被告の裁判が終わり、川口被告の判決が、主犯格とされる中村被告への裁判にどのような影響を及ぼすのか解説しました。
【菊地幸夫弁護士】「(川口被告が)もちろん全部認めているということで、殺人の方ではないですけども、監禁・誘拐の証拠としては、出ると思います。
実刑ということですが、(宮城さんの)お父さんがおっしゃっていた『この共犯者がいなければ、この犯罪は成立しなかった』でしょうから、それなりの責任は重いものがある」
また、菊地弁護士は“トクリュウ”型の犯罪について、「本当に恐ろしい動機」だと語りました。
【菊地幸夫弁護士】「全く知らない主犯格から声をかけられて、報酬欲しさに犯行に加わったわけです。いわゆる“トクリュウ”匿名流動型って多いですよね。金銭で人に危害を加えることが蔓延していくのは非常に危惧します。また主犯格に関しては、人を巻き込みながら大きな犯行を犯すことは、本当に恐ろしい動機です」
裁判の行方が注目されます。
(関西テレビ「newsランナー」2025年9月18日放送)