リチウムイオン電池を使用した製品からの出火事故が増加する中、正しい廃棄方法の普及が急務となっている。富山県氷見市では先月から市役所1階に専用回収ボックスを設置し、市民の利便性を高める取り組みを始めた。

増加するリチウム電池関連の火災事故

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軽量かつコンパクトという利点から、モバイルバッテリーをはじめ多くの電化製品に使用されているリチウムイオン電池。しかし、高温や衝撃に弱いという特性を持っている。

NITEの実験では、車内のダッシュボードに放置されたモバイルバッテリーが直射日光による高温で発火した。県内でも先月、富山市のホテルで充電中のモバイルバッテリーが原因の火災が発生し、客室の壁が焼ける被害が出た。

製品安全の専門家によると、発火しやすい理由は電池の素材にある。NITE製品安全広報課の宮川七重課長は「構成している素材自体が燃えやすいものが多い。電解液と呼ばれているものが灯油くらい燃えやすいものでできている」と説明する。

ごみ処理施設での深刻な問題

衝撃に弱いリチウムイオン電池は、ごみ処理施設での大きな課題となっている。富山地区広域圏リサイクルセンターの若林洋所長代理によれば、「火が出る件数は右肩上がりで増えている。混入しているケースはかなり多い」という。

同施設では1日に約20件もの発火や発煙事例が発生。取材中にも何度か火が出る場面があった。火の勢いによっては作業を一時中断して消火活動を行うため、従業員のけがリスクや作業効率の低下につながっている。

若林所長代理は「こちらとしては(リチウムイオン電池が)混ざって入ってきてしまうと分からない。入る前に止めるということは施設側としては難しい」と課題を指摘する。

氷見市が始めた取り組み

こうした状況を受け、氷見市は先月から市役所1階の総合案内にリチウムイオン電池など専用の回収ボックスを設置した。誰でも手軽に利用できるよう、利便性の高い場所を選んでいる。

氷見市環境保全課の西島秀元課長は「持ち込まれない日がないくらいほぼ毎日のように、10個くらいは集まっている」と効果を実感している。さらに「回収体制を強化することと、積極的な広報が大事。具体的にどんな製品にリチウムイオン電池が使われているのか、具体的な製品名を明示して市民に伝えることが大事」と強調する。

正しい廃棄方法の重要性

リチウムイオン電池は原則として不燃ごみとして捨てることができない。国は今月から年末までをキャンペーン期間として廃棄方法の啓発を強化している。

自治体によって回収方法は異なるため、居住地の市町村ホームページで確認することが必要だ。また、家電量販店で回収が行われているケースもあるため、それらを活用して適切に廃棄することが火災防止につながる。

生活必需品となりつつあるリチウムイオン電池の正しい使用法と廃棄方法を理解し、安全に利用することが求められている。

富山テレビ
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