福島県郡山市の安積国造神社で初の女性神主となった安藤比奈さん。1800年以上の歴史を持つ神社の伝統と、親子5代にわたって受け継がれてきた安積高校の精神。二つの長い歴史が交差する場所で、新たな歩みを始めた彼女の姿を追った。
140年の歴史に思いを馳せて
2025年8月30日、福島県郡山市で行われた県立安積高校の創立140周年記念式典。132期生の安藤比奈さん(24)は、特別な想いで式典に臨んだ卒業生の一人だ。

「140周年の長い歴史を感じました。一人ひとりが努力して必死に生きてきたということだと思います」と語る。
神職の家系に生まれて
郡山市中心部にある安積国造(あさかくにつこ)神社。創建から1800年以上の歴史を誇る。
神職の家系である安藤家に生まれた比奈さん。2年前に首都圏の大学を卒業後、安藤家では初めての女性神主として一歩を踏み出した。

「日本の文化の真髄である神道を伝えて実践していく、すごく責任がある仕事だなと。一年いろいろな行事があるけど、一つ一つ無事にやって伝統行事をずっと続けていきたい」と比奈さんはいう。
宮司で父の智重さんは、比奈さんについて「頼りになる。早くも神社の番頭役みたいな形で頑張っています」と話し、厚い信頼を寄せている。
5代にわたり安積高校卒
そして神社の歴史とともに受け継がれてきたことがもう一つ。
明治17年に福島県内で唯一の旧制中学校として誕生した安積高校。安藤家は親子5代に渡って安積高校の卒業生で、99期生の智重さんは4代目、132期生の比奈さんは5代目にあたる。

そんな歴史の中で、安積高校2期生の国重氏は、世界的な歴史学者として知られる高校の後輩・朝河貫一博士とも親交が深かったという。

智重さんは、宮司の仕事の傍ら太平洋戦争を回避しようと奔走した朝河博士の功績を振り返る漫画を出版。さらに著書を翻訳するなど、平和の大切さを後世に伝える取り組みを続けている。
智重さんは「平和への思いを込めて、大変な作業でしたけれども、やはり知っておくべきだと思いました」と語る。
歴史を紡いでいく
そんな父の背中をみながら、同じ高校を卒業し神職の道へ進んだ比奈さん。「先代がずっと神社を守ってきたので、守っていきたいなと思って気付いたら福島に戻っていました。いろんなことを氏子さんにも聞かれるので、まだまだ神社や神道のことを勉強しないといけない」と話す。

親子5代にわたって受け継がれてきた「安積の精神」。その志を胸に、安積国造神社の新たな歴史を紡いでいく。
(福島テレビ)