2015年に観客の間に落下する死亡事故が起きてから中止となっていた「東近江の大凧揚げ」。

10年ぶりの再開に向け地元の保存会などがおよそ1か月かけ大凧を完成。

復活までの道のりとその思いを取材した。

■江戸時代から揚げられていた畳100畳分の「東近江大凧」

先週、滋賀県東近江市で披露されたのは、畳100畳分の大きさの「東近江大凧」。

地元の保存会、そして市民たちの協力で復活を遂げた。

【東近江大凧保存会・山田敏一会長】「大凧が完成して嬉しい半面ちょっと複雑な思いも...」

江戸時代から揚げられていたとされる「東近江大凧」。その風習は国の無形民俗文化財に選ばれ、およそ40年前から「大凧」を揚げる祭りも開催されていた。

完成した大凧
完成した大凧
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■観客の間に突き刺さるように落下し1人が死亡、8人が重軽傷を負った

しかし2015年5月、「大凧」が大勢の観客の間に突き刺さるように落下した。

この事故で1人が死亡し8人が重軽傷を負った。

【記者リポート(事故発生当時)】「たこが落ちた場所は本来であれば立ち入り規制をかける予定でしたが、想定以上の観客が訪れたためエリアを広げていたということです」

痛ましい事故を受け、東近江市は長年続いた大凧づくりを中止した。

しかし...

ことし7月、「大凧」作りの伝統が途絶えることに危機を感じた保存会が、復活を目指し製作を再開した。

落下した大凧(2015年5月)
落下した大凧(2015年5月)

■「昭和100年」を「慶(鶏)祝する」ニワトリが描かれる

凧に描かれたのは、向き合うニワトリとその下に「祝」の文字。「昭和百年のことしを慶(鶏)祝する」というメッセージが込められている。

【小椋正清・東近江市長】「絶対に事故が起きないことに配慮していただいて、飛翔・飛揚に臨んでいただきたい」

「大凧」作り初日の7月26日、子供たちも参加し、およそ400枚の和紙を糊でつなぎ合わせる作業が行われた。

そして一週間後。学生たちが参加して行ったのは「墨入れ」。
保存会のメンバーも手応えを感じる出来栄えだ。

【保存会メンバー】「ええ感じやね。 墨でやっているのでかすれたり、にじんだりするけど、それがまたひとつの味」

8月22日には最も重要な「骨組み」作業が行われた。

絵の縁にそって骨を組んでいきます。

【市職員】「ここをくくったらいいですか?」
【保存会メンバー】「そう!おっしゃ、おっしゃ上手い、上手いぞ」

保存会のメンバーなどが「大凧」作りを知らない市職員や学生に技術を継承していく。

伝統の継承には、のべ559人が参加した。

【市職員】「こんな大きいのにやってることちっちゃく(細かく)て…」

(Q「大凧」が上がるところを見たことは?)
【市職員】「ないです、ないです」

細かい作業に市職員も苦労
細かい作業に市職員も苦労

■参加した中学生「全部の工程に昔の人の知恵とか感じる」

8月28日の切り抜き作業では、作業に参加した人たちの「願い」を書いた和紙を貼り、空を舞う大凧に託した。

【大凧に貼られた願い事】「天下泰平」「平和な世界を」「大凧が無事に空へ飛べますうように」

9月6日。ついに、縦11.8メートル、横11.1メートルにもなる巨大な「大凧」が完成。

【参加した中学生】「全部の工程に昔の人の知恵とか感じる部分があって、私も受け継いでいけたらいいなと思います」

【東近江大凧保存会・山田敏一会長】「皆さんの力の結集によって百畳の大凧が完成した。亡くなられた方の気持ちを思いながら伝統文化の継承をしていきたい」

保存会は来年の春頃に「大凧」を空に揚げたいとしている。

(関西テレビ「newsランナー」2025年9月11日放送)

未来に託された伝統
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関西テレビ
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