瀬戸内海を含む第六管区内は、全国で最も船の事故が多いエリア。その安全を守るのが海に浮かぶ標識「浮標」である。
一般にはあまり知られていないが、浮標を管理する全国でも珍しい拠点が広島にある。
第六管区内に全国最多302基
広島・坂町の「広島浮標基地」には巨大な灯浮標がずらりと並んでいる。陸上で保管されているだけでも約70基。色や形もさまざまで、その光景は圧巻だ。

浮標(ふひょう=ブイ)とは海に浮かべる標識の総称。「灯浮標」はそのうち灯台と同じように夜間に灯りを点すものを指す。港の入り口や航路の境界線に設置され、陸上のように道路や住所がない海では船が安全に行き来するために欠かせない存在だ。

第六管区海上保安本部の森関良主任技術官が、来島海峡航路における灯浮標の位置図を見せてくれた。
「緑色のブイには奇数の番号、赤色のブイには偶数の番号を振っていて、来島の2番、来島の4番というふうに…」
障害物の存在や航路を示す目印となる灯浮標。第六管区内には全国最多の302基が設置されていて、そのほとんどをこの基地で管理・整備している。
想像以上の広さ! 灯浮標内部へ潜入
基地では毎年40~60基をメンテナンスし、損傷した部品の修理や塗装、チェーンの点検などを行っている。

テレビ新広島の辰巳キャスターが思わず「ちょっとした建物ですね」と見上げたのは、基地で最大級の灯浮標。高さは海上に出ている部分だけで数メートルあり、実際に近くで見るとその迫力に圧倒される。
「ここまで海の水に浸かります」
海に沈む部分は赤茶色に塗られ、フジツボなどの貝殻が付着しないよう特殊な塗料が使われているという。

今回、特別に灯浮標の内部にカメラが潜入した。
「わあ、広い!」
直径2.6メートルの内部には主にソーラーパネルで充電するための機器が収められていて、標準で6個の電池を装着。夜間に光を放ち、暗い海での航行を助ける。
船の安全と命を守る「海の標識」
広島県はプレジャーボートの登録隻数が全国一。コンテナや自動車の輸出など貿易船の行き来もあることから、第六管区内は全国で最も事故が多い。

船に乗らない人でも釣りや遊泳中に流された場合、近くに浮標があればつかまり「118番」に通報。その際、浮標ごとに付けられた名前と番号を伝えれば、自分の現在地を正確に知らせることができる。
「灯浮標」という言葉自体を初めて聞くという人も、知っておいて損はない。海の上での“道しるべ”は船の安全だけでなく、私たちの命をも守っているのである。
(テレビ新広島)