金を賭けたオンラインカジノ、通称『オンカジ』。日本では賭博罪などに問われるが、プロ野球選手やお笑い芸人などが手を染めていたことが次々に明らかになるなど、手軽さゆえの深刻な社会への広がりが問題となっている。オンカジに陥った人達を取材した。
気軽なゲーム感覚 広がる“オンカジ”
警察庁によると、オンラインカジノの経験者は、国内で推計337万人にも上るという。年間の賭け額は、推計1兆2000億円を超えている。しかも経験者のうち、20～30代が58.8％、10代も3.6％と、全体の6割以上を若い世代が占めているのだ。実態はどうなのか？SNSで検索すると、『スイッチ1つで簡単起動』『ライブバカラ1ベット50万円』『入金不要。20ドルボーナス』等々、次から次に大量の広告や宣伝が出て来る。どの投稿も“気軽さ”をアピールしているのが目につく。
この日、街で話を聞いた男性は、「先輩からネットでやれると聞き、『やってみようかな』みたいな感じで…」と始めたきっかけを話す。
軽い気持ちで始めたオンラインカジノだったが、どんどんのめり込み、これまでに200～300万円ほど注ぎ込んだという。
「勝った時は、大金がボンって入ってくる。それにハマると抜けられない。携帯電話なので、いつでもできるじゃないですか。24時間、暇な時に携帯開いてやっているのが現状でした」とオンラインカジノの手軽さと、抜けられない“危険な魅力”について語る。
別の男性の周りでは、数人の友人もオンラインカジノをやっていて、結構、流行っているという。「ソシャゲ（＊ソーシャルゲーム）感覚で教えて貰ったりは、結構する。昔、パソコンにあったパチンコゲームに近い」と軽いゲーム感覚でオンラインカジノに手を出す人が増えている状況が浮かび上がる。
数千万円つぎ込み“飛んだ”人も
オンラインカジノに嵌っている人は、一体、どれくらいの金額を賭けているのか？男性に尋ねると、「“飛んだ”くらいなんで、“4桁万円”とかじゃないですか？僕に関わりのある仕事の人間で、首が回らなくなって“飛んだ”ぐらいなんで…」とさらり答えた。
男性の知人は、数千万円をつぎ込み、突然、姿を消したという。このような依存状態に陥った人は、どうなってしまうのか？
この日、訪れたのは、アルコールやネットゲームなど、様々な依存症からの回復を目指し、100人余りが支援プログラムを受講している福岡市内のNPO法人『ジャパンマック福岡』の施設。現在、10人ほどのオンラインカジノ経験者が入所していて、ミーティングなどを重ねながら社会復帰を目指している。
福岡県内に住む男性（25）が向き合っているのは、「オンラインカジノ依存症」。新たに規制の対象となったSNS広告がきっかけで始めたという。「ギャンブルの動画をYouTubeで見ていると、自動的に広告が流れてくるようになって、興味本位で登録して、そこから本格的にやり始めた。カジノによっては、登録するだけで、最初、何十ドルとかって遊べるお金を無料で貰える」と話す。
依存症「掛け金は月に1億超」
これまでに、どれくらい賭けてきたのか聞くと、「本当に酷い時は、1か月で1億ぐらいは賭けていたので…。1ヵ月間で、勝ったり負けたりを続けた金額が、1億とか普通に超えていました」と男性は振り返る。
資金の出所を尋ねると、「もともと個人で仕事をやっていたので、そこで稼いだり、あとは、横領とか窃盗で作ったお金が大半です」と答える。
犯罪であるオンラインカジノをするために、別の罪を犯した男性。2023年に自転車を盗んだ窃盗容疑で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けたと話す。「盗品を質屋に持って行って、そこで換金して、その場ですぐお金をオンラインカジノに入金して遊ぶような形だった」という。
しかし、逮捕された後もオンラインカジノから抜け出せず、男性は、親に相談して施設への入所を決めたと話す。「正直、やめる努力はしたのですが、一度オンラインカジノに入ってしまうと、もう、やりたい欲が出てしまって…。捕まった後も結局、横領しながらやったりしたので…。多分、一度やってしまったら繰り返しになるんじゃないかな。施設に入らない限りは」と男性は、自身のことを分析する。
国も法改正で“オンカジ”対策強化
国もオンラインカジノの対策強化に本腰を入れ始めた。
9月25日に施行される「改正ギャンブル等依存症対策基本法」では、オンラインカジノを開設・運営したり、SNSなどを通じて誘引したりする行為が禁止されるのだ。
人生を破滅に追い込むオンラインカジノ。経験者に共通するのは、スマホで気軽に始めたこと。
アルコールや薬物と同じく、依存状態から抜け出し通常の生活に戻るには、適切な治療と強い意志が必要となる。国の規制も強化されるが、興味本位で安易に手を出さない自制心が求められる。
（テレビ西日本）
