マイページ
「家族も一緒に罪を償う」涙と怒りの法廷 そして懲役26年【仙台・折立強盗致死事件ルポ・後編】|FNNプライムオンライン
追跡ニュース 記者の目

「家族も一緒に罪を償う」涙と怒りの法廷 そして懲役26年【仙台・折立強盗致死事件ルポ・後編】

Google ニュース プリファードソース

この記事は後編です。

奪った大金 薄れた罪悪感

この記事の画像(6枚)

佐藤が奪った1400万円は、どこへ消えたのか。法廷で示された使途は具体的だ。
80万円以上を生活費として妻に渡し、50万円は娘の自動車学校やバイク購入に充てた。洗濯機の買い替え、家族へのプレゼント、パチスロや外食…。家族には「パチスロで勝った」「仕事場で出た廃材を売ってコツコツ貯めた」と嘘を重ねた。
逮捕時、残金は約1060万円だった。

佐藤加寿也
「生活に余裕がなく、大金を見つけて、これがあれば家族や子供が喜ぶのではないかと思った」
「使っているうちに罪悪感が薄れた。妻や子供の笑顔が見られて…」

「家族のために」という言葉は、いつも、遅すぎる。

元妻「夢であってほしい」証言台で涙

事件直後とみられる現場(視聴者提供)
事件直後とみられる現場(視聴者提供)

呼ばれたのは被告の元妻。証言台の前で、彼女は涙をこぼした。

「夢であってほしいと思いました」

夫婦と4人の娘。家事は皆で分担し、穏やかな家庭だった。事件後、家族は転居を余儀なくされ、長女は退職。次女と四女は不登校に。彼女は娘たちを一人で育てるため、離婚を決めた。それでも…。

被告の元妻
「私も娘たちもパパのことは嫌いにならない、なれない」

逮捕時に残されていた金は、全額を遺族に送金した。そこには「また家族旅行に行きたい」と貯めていた家族の貯金も含まれていたという。

最後に裁判官が問う。「伝えたいことは?」。

彼女は嗚咽交じりに言葉を絞った。

「本人だけでなく、加害者家族である私たちも一緒に罪を償っていくつもりです。刑期を終えて帰ってきたからといって許されるわけでもない。一生、私は主人と死ぬまで罪を償っていきます。直接被害に遭われたご家族にお詫びすることも何もできなくて、本当に、本当に申し訳ありませんでした」

法廷には、被告の嗚咽と元妻の泣き声だけが残った。

被害者遺族の怒り「命だけでなく日常も奪われた」

被害者の大塚修さん(当時72)は、建築関係に従事し、家族には厳格でありながら愛情深かった。大病後は酒もたばこもやめ、孫の成長を楽しみにしていた。

長男は、失われた日常を語る。
「父の命だけではなく、家族が過ごすはずだった日常も奪われた」
「小学校一年生の頃は、会社の人にサンタのコスプレをさせてプレゼントを届けてくれた」
「リフォームしなければよかったと悔やむ。今もその場所で生活することは、言葉にできない苦痛」
「家族が受けた苦痛と悲しみは、どれだけ時間がたってもなくならない」

被害者の妻もまた、悔恨で胸が詰まる。
「もし私が家にいたら。出かけなかったら。後悔の毎日。遺影に留守にしてごめんね、と語りかけている」
「(夫は)孫たちの成長を楽しみにしていた。孫たちがリフォームした家で走り回っていると『ここに夫もいたはず』と悲しさがこみあげてきた」

被害者の次女は怒りを隠さない。
「家庭を抱え、苦しい事情があったのかと思っていたが、裁判で理由を聞いても納得できない。あまりにも身勝手な理由」
「玄関で父と会った時に立ち去ることもできたはず。しかし、タックルをし、犯行に及んだ。父の命を奪った行為は決して許されない」

被害者の長女
「父の死から夜眠れない日々が続く」
「厳正かつ重い処分をお願いする」

「命」と「日常」。遺族が繰り返し口にしたのは、その両方が奪われたという事実だった。

「一生かけて償っていきます」被告の最後の言葉

送検される佐藤
送検される佐藤

検察は「被害者の命を顧みることなく、金銭を奪うことのみを優先」した極めて悪質な犯行だとして懲役30年を求刑した。

最後に、裁判長に発言の機会を与えられた佐藤は、涙を浮かべてこう述べた。

「遺族の方の大切な人を奪ってしまい申し訳ございません。一生かけて償っていきます」
「心を入れ替え、これから決まる刑を務めていきたいと思います」

懲役26年「仕事で知り得た事実の悪用」を強く非難

2025年9月3日午後3時。白いシャツに黒いパンツの佐藤は、落ち着いた様子で証言台の前に立った。

裁判長「主文 被告人を懲役26年に処する」

仙台地裁は判決理由で、こう述べた。

「犯行計画は周到なものではなく、犯行前に逡巡している様子もうかがえるなど、犯意が強固であったとは評価しがたい」。

一方で「仕事上で知った事実を強盗のために悪用したことには、強い非難を向けなければならない」と指摘した。

さらに榊原敬裁判長は「裁判員からの言葉」として、こう付け加えた。

「刑期を終えても、被害者の命が帰ってくるものではない。犯行が意図したものでなくても、絶えず遺族に苦痛を与えていることを忘れないでほしい」

佐藤は真っすぐ裁判長を見つめたまま、判決を聞いていた。

弁護側は控訴について「これから相談のうえで決める」としている。

“偶然”は免罪符にならない

担当者が、依頼主の家で偶然見てしまった大金。それを仕事上知り得た事実として悪用し、命を奪い、日常を壊し、家族を傷つけた。

元妻は「加害者家族である私たちも一緒に罪を償う」と涙ながらに語った。遺族は「父の命だけではなく、家族が過ごすはずだった日常も奪われた」と静かに、しかし強く訴えた。

失われた命は戻らない。残された人々の時間は、止まったままではいられないが、元に戻ることもない。

※本稿は、傍聴した記者の詳細な法廷記録に基づいて構成した。発言引用はすべて公判で示された供述・証言を記載した

仙台放送

仙台放送
仙台放送

宮城の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。

  • 1
  • 2
関連記事
追跡ニュース 記者の目の他の記事
候補者乱立 “風雲急”の市長選挙 知名度浸透目指す政党の思惑? これまでに12人が立候補を表明 再選挙の可能性も 【福岡発】
候補者乱立 “風雲急”の市長選挙 知名度浸透目指す政党の思惑? これまでに12人が立候補を表明 再選挙の可能性も 【福岡発】
政治
東京五輪フェンシング代表・ストリーツ海飛 鹿児島の高校で特別授業「鹿児島のためにメダルを狙いたい」
東京五輪フェンシング代表・ストリーツ海飛 鹿児島の高校で特別授業「鹿児島のためにメダルを狙いたい」
スポーツ
「1回の買い物で1000円違う」年間値上げの4割が秋に集中 9〜10月で8000品目超、家計への打撃がピークに
「1回の買い物で1000円違う」年間値上げの4割が秋に集中 9〜10月で8000品目超、家計への打撃がピークに
社会
宮城・仙台の名物「笹かまぼこ」に暗雲 老舗メーカーが次々に破産 いったい何が? “地元の食文化”だからこそ立たされる苦境
宮城・仙台の名物「笹かまぼこ」に暗雲 老舗メーカーが次々に破産 いったい何が? “地元の食文化”だからこそ立たされる苦境
経済
一覧ページへ
×