健康のタネのコーナーでは今回、脳卒中について取り上げます。高齢者を中心に突然発症し“治療までの時間が命”ともいわれる脳卒中。初期症状を見逃さないためのポイント、さらに医療過疎地域を補うシステムについて取材しました。

◆若年層でも血管への高負荷で発症の恐れ

国内で年間約10万人が亡くなり、日本人の死因の第4位になっている脳卒中について、福井赤十字病院の西村真樹副院長に聞きました。
   
「脳卒中は脳の血管の病気で、突然起こりまひや意識障害が起こる病気として昔から知られている」(西村医師)
   
脳卒中には大きく分けて2種類があります。脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れる「脳出血、くも膜下出血」です。
  
その原因として西村医師は「脳の血管を傷めつけることによって起こる。最大の危険因子は高血圧ということになる」とします。他にも糖尿病や高コレステロール、肥満、喫煙などは血管を傷めることにつながり、脳卒中のリスクを高めます。
 
高齢者が発症することが多いとされていますが、若年層で起こる恐れもあります。また、寒さによって血管が収縮し血圧が高くなりやすい冬に多くなる傾向がありますが、「夏は血液がドロドロになることによって脳梗塞の割合が高くなる」(西村医師)といい、夏も注意が必要です。

◆3つの初期症状から早期治療を

脳卒中の初期症状を自分で発見する方法として「FAST」という標語があります。
 
Fはフェイス(顔)で、顔の片側の筋肉が下がって動かない。
Aはアーム(腕)で、片方の腕に力が入らない。
Sはスピーチ(言語)で、ろれつが回らない。
Tはタイム(時間)、早めの受診。
  
顔の片側の筋肉が下がって動かない、片方の腕に力が入らない、ろれつが回らない、言葉が理解できないなどの症状に少しでも当てはまる場合はためらわず、すぐに救急車を呼ぶなどして受診することが必要です。
 
「脳卒中の治療は出来るだけ早く診断し、治療を早く進めないといけない。その中の大きな一つが脳梗塞。脳卒中の中の7割くらいを脳梗塞が占めている。一番多い脳卒中と思ってもらえばいい」(西村医師)


◆医療過疎地を補う技術

特に脳梗塞の治療では「時間が命」といわれていて、発症から4時間半が一つのカギとされています。「発症から4時間半の間であればTPAという血栓を溶かす薬を点滴で打つことによって症状が改善する人がいる」と西村医師。

この点滴治療を24時間行える病院は県内に11カ所あるものの、福井市に集中しています。

そこで医師不足により迅速な対応が難しい地域では、治療に必要な画像などを共有することで遠隔で診断や治療をサポートするシステム「Join」が活用されています。
  
「脳卒中の専門家がどこの病院でも24時間いる体制を維持するのは困難。そこでJoinを導入し、地域の先生から、来られた患者の写真をリアルタイムで送られてくるようになっている」(西村医師)
 
MRIやCTなどの画像や現場の医師からの情報を確認した専門チームは、どんな治療が必要か、また搬送の必要の有無などを現場の医師に伝えることで無駄なく迅速に治療を開始することができます。
  
「どの病院も全部の科に専門医がいるわけではない。Joinを使った連携などを通して互いに足りない部分を補てんし合うのが地域医療にとっては大事」(西村医師)
   
時間が命といわれる脳卒中治療。医療過疎地域を補う仕組みが、県民の命を支えています。

福井テレビ
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