1枚の写真から街を再発見する「兵動大樹の今昔さんぽ」。
今回の舞台は滋賀県近江八幡市。
【兵動大樹さん】「これまたすごいよね~」
兵動さんが手渡されたのは、1961年(昭和36年)に撮影された、白装束の人々が水辺で何かの儀式をしている不思議な写真。
どこの風景か、探しに行きます。
■「結ぶ会」は何を結んでいる?
【兵動大樹さん】「『結ぶ会』って書いてある。なんやろう。広い海みたいなものがあるから琵琶湖なんかなあ」
広い水面が写っていることから琵琶湖の風景であろうことは予想できますが、人々が何をしているのかはわかりません。
写真の人物の衣装に「結ぶ会」という文字が確認できただけでした。
手がかりを求めて街を歩いていると、兵動さんは「Going Nuts!」というナッツ専門店を発見しました。70種類以上のナッツを取り扱うこだわりの専門店で、店主の道城さんは自らを「ナッツの伝道師」と名乗ります。
店主おすすめの組み合わせは「燻製マカダミアナッツ」を「無添加パイナップル」で挟んで食べることだそうで…兵動さんもいただきます。
【兵動大樹さん】「おいしい。甘じょっぱさがずっと続く」
【道城さん】「生ハムとメロンあわせたみたいな甘じょっぱさ」
【兵動大樹さん】「そんなん言われたら生ハムの味しかせんくなってきた」
■富士宮と近江八幡は「夫婦都市」巨人伝説が由来
本題の写真について聞いてみると、店主からヒントになりそうな情報が。
【道城さん】「静岡県富士宮市と近江八幡市は夫婦都市なんですよ。50年続いてて、富士山のお水を琵琶湖に戻して、琵琶湖の水を富士山に持っていくのをやられてる」
【兵動大樹さん】「ここに、桶みたいなのを持ってるんですよ」
さらに、富士山と琵琶湖にある伝説を教えてくれました。
【道城さん】「神話で巨人がいたみたいなんですけど、巨人が土掘ってできたのが琵琶湖で、土を乗せたのが富士山みたいな」
■ダイダラボッチが1日で琵琶湖と富士山を作った?
次に、近くの文房具店を訪れると、店主の藤井さんからも同様の伝説を聞くことができました。
【藤井さん】「伝説では、1日で琵琶湖があった地面が移動して富士山になったというめちゃくちゃな話。ダイダラボッチという、神様か化け物か...」
この行事はいまも続いているそうで、場所は長命寺港から宮ヶ浜という琵琶湖沿いのエリアのどこかの浜だということです。
場所を移動し、長命寺港で聞き込みを続けます。
【兵動大樹さん】「港があんねんね。キレイやなあ琵琶湖」
港にあった「漁師の店」と書かれた「川田商店」を訪ねると、琵琶湖で獲れた魚などを「佃煮」などにして販売していました。
いまの時期の旬は「うろりの佃煮」。ビワヨシノボリの稚魚を甘辛く煮たもので、炊き立てをいただきます。
【兵動大樹さん】「うまいわ~。甘辛の『あ』が大文字やね!」
■富士山の頂上まで水を持っていく「お水取り」の儀式
ご飯と一緒に食べたい、食欲をそそる一品をいただいたところで、肝心の写真を見せると…
【川田さん】「富士山のお水を琵琶湖に流してるところですよね。いまもやってます」
「水ヶ浜」という場所でいまも続く行事であることと、近くにある「シャーレ」という喫茶店が詳しいと教えてもらいました。
【兵動大樹さん】「シャーレですねぇ。しゃれてるわ」
「シャーレ水ヶ浜」は琵琶湖に突き出た素晴らしい景観の喫茶店でした。
店長の浜田さんは24歳。浜田さん自身も「お水取り」の儀式に参加したことがあるんだそうです。
【浜田さん】「自分もお水を汲んで、(富士山に)持って行って、それからあちらの方の水をこっちに持ってくるっていう風に参加させてもらったことはあります」
【兵動大樹さん】「えー、参加してんの!?富士山ってどこまで行くの?」
【浜田さん】「一番上までです」
さらに、浜田さんは「富士と琵琶湖を結ぶ会」の元会長を知っているそうです。
写真の「結ぶ会」は「富士と琵琶湖を結ぶ会」のことだったのです。
■伝説がきっかけで「夫婦都市」に
浜田さんに連絡を取ってもらい、「富士と琵琶湖を結ぶ会」の元会長・深尾さんが来店。
儀式の歴史について詳しく説明してくれました。
【深尾さん】「当時の近江八幡の初代市長はじめ、ここで水行をされてた大先輩が、寒い時に水かぶったりして。そんな中で富士山と琵琶湖は一夜にしてできたという話があって」
ここであの伝説の話題が!
琵琶湖の北側の地形が3カ所ギザギザしているのは、ダイダラボッチが地面をすくった時の指の跡ではないかという新たな伝説まで飛び出しました。
この伝説から、なにか交流を取ろうと、「琵琶湖の水を富士山に献水する案」が立ち上がり、「お水取り・お水返し」の儀式が始まったそうです。
この儀式は1956年に始まり、翌年には「富士と琵琶湖を結ぶ会」が発足。
これをきっかけに1968年には近江八幡市と富士宮市による国内唯一の「夫婦都市提携」が結ばれました。
■儀式は今年で69回目
ことしでお水返しの儀式は69回目。
深尾さんは33回富士山の頂上に登ったそうです。
最後に、「お水取り」の儀式が行われる現場を訪れ、同じ場所で写真撮影しました。
【兵動大樹さん】「富士宮と近江八幡は姉妹都市ということでございます。ほんま、すごくええとこです」
こうして、1枚の古い写真から始まった探索は、60年以上続く富士山と琵琶湖を結ぶ美しい伝統行事の発見へとつながりました。
(関西テレビ「newsランナー 兵動大樹の今昔さんぽ」2025年8月29日放送)