世界遺産「石見銀山」の町、島根県大田市大森町に住むデザイナーの松場登美さんと写真家の藤井保さん。全国に向けその仕事を発信する2人が、松江市で開かれたトークショーに登場、活動拠点にしている大森の町の魅力について語りました。
デザイナー・松場登美さん:
便利さも取り込みながら一部回帰する時代は来てるんじゃないかなって思ってるので。それを実践するのには、大森の町はもう本当にあれ以上の町はないじゃないかと。
写真家・藤井保さん:
登美さんの1日通勤して仕事場でそれも全部福ちゃんと一緒ですから、それを写真にしていくことをまず考えて撮らせてもらたった。
8月24日、松江市の書店で開かれたトークショー。
登壇したのは、「繕いデザイナー」の松場登美さんと写真家の藤井保さん。
世界遺産の町、大田市大森町に暮らす2人です。
松場登美さんは、大森町を拠点に素材と手仕事にこだわった衣料品や生活雑貨などを全国展開するブランド「群言堂」のデザイナー。
1981年に夫の故郷である大田市大森町にIターンし、1994年に「群言堂」を立ち上げました。
6月にこれまでのブランドの歩みを振り返り、大森町での暮らしぶりを描いた本を出版、その記念に開かれたのがこのトークショーです。
デザイナー・松場登美さん:
神楽の恵比須様が、私が作った服を着て堤防のようなところで並んで楽しそうなところを見て、この写真を見た時にきっといい本になると確信が生まれました。
この本の写真を担当したのが、藤井保さんです。
大田市出身で現在76歳、広告写真の第一人者として活躍し、大手企業の広告を中心に多くの作品を手がけてきました。
2021年に大田市にUターンし、松場さんも暮らす大森町に活動の拠点を移しました。
最近では、人気ロックバンド「Mr.Children(ミスターチルドレン)」のアルバムジャケットやポートレート写真の撮影を担当、今も第一線で活動しています。
同じ町で暮らす縁もあって、松場さんの本でも写真撮影を担当しました。
デザイナー・松場登美さん:
私が生けたお花を写真に撮りたいとおっしゃってくださって、いつもは野に咲いている物を積んでは入れるだけなので、たまたまそこにあったものを生かすというか、私の花の生け方が2枚の写真ですごく表現されているなと思っています。
自然豊かな大森町での暮らしの何気ない瞬間を藤井さんが見事に切り取ったと、絶賛しました。
デザイナーとして「群言堂」ブランドを支える一方で、松場さんは古民家の再生、活用を通じた大森町の活性化にも取り組んでいます。
なかでも築200年を超える古民家を活用した宿泊施設「他郷阿部家(たきょうあべけ)」は、10年以上をかけて準備を進め、2012年にオープン。
宿泊者は、これまでに1万5000人を超えました。
大森町は人口わずか400人ほどの小さな町ですが、そこにある風景や暮らしは人を引き付ける大きな可能性をもつと話しました。
写真家・藤井保さん:
登美さんが、大森町でやっていること、それは風景を作る仕事だと思っている。言葉よりも風景が語るそのことを信じる。
同じ町に暮らし、同じ空気をまとう2人が紡いだ言葉に…。
参加者:
2人の人柄が1冊の本に表れているなと思いました。用意された花ではなくて、そこにあった道端の一輪の花を挿すというそれがすごいすてきだなと思って、涙が出そうでした。
デザイナー・松場登美さん:
発想する、生まれてくる、考えたとか作られてるプロセスとか、それが美しいことが大事なんですね。それを次の世代の人たちに伝えていくのが私たちの役割だと思っています。
写真家・藤井保さん:
変なおじさんと変なおばさんがなんか楽しそうに仕事も生活もしているということ、その背中を見せることも一つ大事かなと思います。
山陰の小さな町から全国へ…そして世界へ。
地域に根付きながら「仕事」を楽しむ2人の言葉は、先駆者としての誇りに満ちていました。