静岡県牧之原市にある認定こども園で当時3歳だった女児がバスに置き去りにされ、死亡した事件から9月5日で3年です。こうした中、同じような悲劇が再び繰り返されないよう、2025年6月に1冊の絵本が発売されました。

6月に発売された”いのちを守るえほん”

福島流星 記者:
静岡市内の書店に来ています。こちら特設コーナーも設けられている「ぶたすけのラッパ」。いまこの絵本に注目が集まっています

2025年6月に発売された「ぶたすけのラッパ」。

子供たちが車に置き去りにされ、死亡する事故が無くなることを願って書かれた“いのちを守るえほん”です。

谷島屋 児童書バイヤー・田雜麻紗子さん:
絵を描いているのが「パンどろぼう」でいま大人気の柴田ケイコさんということもあり、手に取る来店客がたくさんいる。中(内容)をしっかり見て買う人が多い

悲劇を二度と繰り返さないために。

2児の父でもある作者が込めた想いとは…。


主人公は鼻を押すとラッパから音が鳴る「ぶたすけ」

ぶたすけのラッパの作者・やまざきひろしさん。

作者・やまざきひろしさん:
この絵本の主人公はぶたすけというキャラクター。ぶたすけは鼻を押すとラッパから音が鳴る。ブーという音が鳴るキャラクターになっている。彼はやんちゃというかお茶目な部分があって、お絵描きの時間にブーっと言ったり、みんながお昼寝している時間にブーと言って起こしちゃったり、ちょっと悪ふざけしちゃうのが彼。彼がブーブー鳴らしてるのに対して、先生が「大きな音を出すのをやめなさい。車のクラクションみたいでちょっとうるさいからやめてね」と彼に注意するところからこの話はスタートしていく

すると、物語はこんな場面へ…

【ぶたすけのラッパより】
そんなあるひのこと。

ぶたすけたちがかくれんぼをしていると ほいくえんのバスのドアが あいているではありませんか

しめしめ。

ぶたすけと おともだちの りすみちゃんは うんてんしゅさんが にもつをはこんでいるすきに バスにのりこみました

ふたりはみつからないように いすのしたでいきをひそめました。

するとつぎのしゅんかん!

バタン!!!

2児の父でもある作者が抱いた想い

2022年9月5日。

牧之原市の認定こども園・川崎幼稚園の送迎バスに河本千奈ちゃん(当時3)が長時間にわたって置き去りにされ、重度の熱中症により死亡しました。

作者・やまざきひろしさん:
子供が2人いて、下の子がいま7歳で(事件)当時4歳で保育園に通っていたこともあり、他人事ではないという感じがすごくした。なので自分だったらどうするのかということは考えた。結構その考えさせられた事件だなと思っている

後を絶たない子供の置き去り。

ひとりの親として何か出来ることはないか…

たどり着いた答えが“絵本”でした。

作者・やまざきひろしさん:
自分も子供の頃、絵本を読んでいた経験もあり、何度も何度も読むものだと思っている。繰り返し読み、親も毎回読むことで継続的に学びにつながるのが絵本だと思ってるので、そこが良いなと思っているポイント

さて、バスの中に閉じ込められてしまったぶたすけたち。

【ぶたすけのラッパより】
バスのなかはどんどんあつくなり あせもどんどんでてきます

どうしたらいいんだ…

そのときぶたすけは せんせいのことばを 思い出しました

「ぶたすけくんのラッパはくるまのクラクションみたいで…」

はっ!!そうだ!おいらのラッパでだめなら クラクションをならせばいいんだ!

「ブー!!」

作者・やまざきひろしさん:
調べていく中で、クラクションを鳴らせば助けを求めること・知らせること・自分がいま閉じ込められているということを、子供自身が伝えることができるという事実を知った。でも意外とこの事実が知られていなくて、クラクション鳴らすと周りは気づいてくれるかもしれないということがなかなか知られてない。これをなんとか伝えられないかと思ったのが(制作の)きっかけ

置き去り対策は”掛け算”

牧之原市の事件のあと、全国の幼稚園やこども園などで行われたのが、万が一置き去りにされてしまった場合にクラクションで存在を知らせる訓練です。

さらに、置き去りを防ぐため安全装置の設置も義務化されましたが、やまざきさんは備えや対策はいくつあっても良いと考えています。

作者・やまざきひろしさん:
僕は掛け算だと思っている。安全装置もありつつ、それがない車両もあったり、もしかしたら安全装置が働かない場合もあるかもしれず、その時は子供自身がクラクション鳴らすことができるというように、二重三重に安心を作っていくことが大事

置き去り防止を啓発するプロジェクトも

また、絵本の制作にあわせて置き去り防止を啓発するためのプロジェクトも展開しているやまざきさん。

その名も「たすけてブーブープロジェクト」で自動車メーカーの協力によりクラクションの体験会を実施しているほか、絵本の読み聞かせを行っています。

目指すは子供たちがクラクションを鳴らすことをためらうことのない世の中です。

作者・やまざきひろしさん:
エンジンがかかっていない時に鳴らせないと思っている人もいるし、鳴らしてはいけないと教わる。日本の車社会の中ではマナーとしてブーブー鳴らさないことが基本的なマナーになっている中で「鳴らしていいの?」というのがある。置き去り事故がゼロになる世界を目指したいと思っているが、まずはみんな当たり前にクラクションを鳴らすんだよねというのが知られるというか、当たり前になる世界になっていくといいなと思う


【ぶたすけのラッパより】
さあ、きょうもかえりのバスからこどもたちのうたがきこえてきます。

どじこめられたらブーブーブー

クラクションならそうブーブーブー

ぶたすけのラッパでブーブーブー

おおきなおならだブーブーブー

テレビ静岡
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