「楽しむ」が原動力 松山出身の全盲パラアスリート

風を切って100mを駆け抜ける愛媛県松山市出身の高校生パラアスリート石丸翔選手。

全盲でありながら陸上競技に情熱を注ぎ、世界の舞台を目指して挑戦を続けている。

そんな彼の原動力は「楽しむ」ことにあった。

世界の舞台を目指して挑戦
世界の舞台を目指して挑戦
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世界を目指して、走りを磨く原動力とは

松山出身、全盲の高校生パラアスリートが挑み続ける100m。世界を目指して、走りを磨く原動力とは。

石丸翔選手:
「やっぱ慣れ親しんだタータン(=陸上競技場の地面)なんで、感覚もすごく好きだし、知っている人もいっぱいいるので安心できる環境です」

風を切ってトラックを駆け抜ける全盲の高校生。陸上の100m走に打ち込む松山市出身のパラアスリート石丸翔選手。

石丸選手は小児がんのため、1歳で右目、3歳の時に左目を摘出し視力を失った。松山盲学校に通いながら、小学5年生で100メートル走を始め、中学進学を機に本格的に競技に取り組んでいる。

中学進学を機に本格的に競技に取り組んでいる
中学進学を機に本格的に競技に取り組んでいる

愛媛出身3人のパラアスリート

2023年の四国パラ陸上競技大会。
パリパラリンピックに出場した石山大輝選手、シドニーパラリンピック銀メダリスト・矢野繁樹選手と、石丸選手の愛媛出身の3人が同じレースで力走を見せていた。

石丸選手は現在、東京にある筑波大学附属視覚特別支援学校に在学、クラブチームに入りながら練習に励んでいる。

クラブチームに入りながら練習に励む
クラブチームに入りながら練習に励む

ある2人から指導を受けた

石丸選手は今年愛媛に帰省した際、お世話になった2人から指導を受けていた。

矢野繁樹さん:
「上げる脚ではなく、付いとる側の股関節。軸足の股関節で上げたら良い」

2023年、一緒に走った矢野選手。石丸選手にとって、盲学校時代からの陸上の恩師でもある。

石丸翔選手:
「矢野先生も全盲の選手なんで、どういう風に今まで学んできたとか、矢野先生は見えていたときの記憶もあるので、そこと合わせて全盲としての視点も教えてもらったりして勉強になります」

盲学校時代からの陸上の恩師
盲学校時代からの陸上の恩師

瀧本啓太さんからアドバイス

そして夏休みには、中学時代から石丸選手を指導しているベテラン伴走者の、瀧本啓太さんからアドバイスを受けた。

瀧本啓太さん:
「脚はどんなん?」

石丸翔選手:
「おとといは結構スピード上げたけど大丈夫そうでした。でも筋肉痛になりました」

視覚障がいのある選手にとって、欠かせない伴走者。石丸選手の苦労も一緒に乗り越えてきた。

瀧本啓太さん:
「普段足で探りながら歩く癖があるので、どうしても重心が低いんですよ。陸上って腰を高く走るんですけど、普段の探りながら歩く癖で(重心が)低いんで」

石丸翔選手:
「(競技中は)余計探りますね」

この日の練習では、地面に足が付かない時の感覚を身体に覚えさせていた。安定したストライドを目指し、速く走れるフォームを磨いていく。

速く走れるフォームを磨いていく
速く走れるフォームを磨いていく

今年中に記録更新を狙っている

国内最高峰・ジャパンパラで今年連覇。自己ベストは12秒48。
石丸選手のカテゴリーの日本記録が11秒62で、自身は今年中に11秒台を目指し将来、記録更新を狙っている。

瀧本啓太さん:
「翔くんはもともとピッチは速くて、前半は強かったんですけれども、そこが一番の武器。今後半の動きを修正して、長所にしていけるように努力している途中」

石丸翔選手:
「自分はずっと走りの動きが全体的に小さくて。足音で工夫できた部分もあるんですけれども、今は空中の動きが重要になってくるので、そこをドリルとかで意識づけを最近やっています」

今は空中の動きが重要になってくる
今は空中の動きが重要になってくる

石丸翔選手と佐野アナウンサーの100m1本勝負

今回特別に、石丸選手の速さを間近で体感すべく、取材を担当した佐野アナウンサーが一緒に走らせてもらうことに。

佐野快成アナウンサー:
「特別に、翔くんと100m1本勝負します」

石丸翔選手:
「ケガ明けですけど、絶対に負けないように頑張ります」

スタート!最初の50mはほぼ互角…!
しかし…

最後石丸選手が追い抜き、フィニッシュ!

佐野アナウンサー:
「残り半分の伸びがすごくて、とても追いつけなかったです」

石丸翔選手:
「後半やべえと思って、久々にスピード8割9割出せたんで『楽しかった』です」

久々にスピード8割9割出せた
久々にスピード8割9割出せた

一番の武器は今すごい陸上を『楽しんでいる』こと

目標に向かって努力を続ける石丸選手は現在高校2年生。
夏休み中のこんな一幕もあった。

瀧本啓太さん:
「一番の武器は今すごい陸上を『楽しんでいる』ことだと思います。今回夏休みに帰ってきたときは、連絡を取り合って練習、僕からも誘いますし、翔くんからも誘われることがあるんですけど、なんせ練習に行きたがっていますね。今陸上にすごいはまっていて、楽しいと思うので、記録も伸びていますし、そういうところから感じます」

今陸上にすごいはまっていて、楽しいと思う
今陸上にすごいはまっていて、楽しいと思う

愛媛から世界を目指して

石丸翔選手:
「パラリンピックとか世界パラ陸上にといった世界大会に出ることです。メダル圏内に入ったり、見えないながらも綺麗なフォームだなって言われるような走りをしたいです」

陸上を『楽しむ』。

可能性を秘めた高校生スプリンターは、愛媛から世界を目指して、これからも走り続ける。

陸上を『楽しむ』
陸上を『楽しむ』
テレビ愛媛
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