2025年6月に運行を終えた寝台特急「カシオペア」が、廃車の作業のため9月3日朝、長野市の車両基地に回送された。沿線の人気撮影スポットには100人以上の鉄道ファンが集まり、「本線を走る様子は二度と見られない」と「動くホテル」の最後の雄姿をカメラに収めていた。
「最後の姿を見たい」早朝に鉄道ファン
9月3日午前5時半過ぎ、長野市のJR篠ノ井線の線路脇でカメラを構える鉄道ファンが100人以上が集まっていた。
お目当ては寝台特急「カシオペア」だ。

東京から来たファンは「寝台特急『カシオペア』が廃車されるということで、最後の姿を見ようと思って来ました」と話した。
6月に引退した「動くホテル」
寝台特急「カシオペア」は1999年から上野駅と札幌駅を結び展望室などの設備や客室の静かさなどから「動くホテル」とも呼ばれた人気列車。
2016年に定期運行を終えた後もツアー専用の団体列車として東日本の各地を走っていたが、2025年6月、車両の老朽化などから全ての運行を終え、引退していた。

そのカシオペアが走行するとしてカメラを構える鉄道ファンたち。廃車するために長野市の車両基地に移送する「廃車回送」を狙っていたのだ。
JRは運行予定を公表していないが、それでも、沿線各地に多くの鉄道ファンがかけつけていた。
山梨からのファンは「田んぼがきれいなのでこれを入れながら撮れないかと」と構図を練っていた。
人気スポットに鉄道ファン100人以上
100人を超える鉄道ファンが集まったのは、長野市篠ノ井塩崎の通称「稲荷山ストレート」。
まっすぐな線路が続き、電車とカメラの間に電柱などがないため人気の撮影スポットだ。

神奈川県から駆け付けた奥田圭さん(25)は前日の午後11時半からいるという。「カシオペア」と同じ年ということで最後の雄姿をカメラに収めに来た。「本線を走るのは二度と見られないということになるので」と列車が来るのを待ちわびていた。
鉄道警察隊が「(荷物が)線路のほうに来ないようにね」と呼びかけ、周辺を警備していた。
「思い出をありがとう」
そして、午前5時半ごろに麻績村を通過したカシオペア。午前6時過ぎは稲荷山ストレートにさしかかった。

奥田さんは「最高でした。ばっちり撮れました。いいお見送りになったと思います。同い年として、お疲れさまでしたと言いたいです」と満足そうに話した。

神奈川からのファンは「新婚旅行の時に上りのカシオペアの一番後ろの展望スイートに乗りました。大勢の人がすてきな思い出を持っていると思うので、最後までみんなに思い出をありがとう」と語った。
「約30年お疲れさま」車両センターへ
そして、午前6時半ごろ、長野市の長野総合車両センターに到着。
市内のファンは「ちょっとさびしいですよね。寝台列車って乗ったことないですから」、「まさか最後、こういう形で見ることができるとは思わなかったので、ちょっと神妙というか、約30年、お疲れさまと」と話した。

JR東日本長野支社によると、沿線で目立ったトラブルなどはなかったという。
JR東日本では、廃車にはするものの、今後、展望室のある1両を埼玉県内の施設で展示するなど、有効活用することにしている。