「一生涯の絆」を手に入れた夏 松山東高校が俳句甲子園に挑む
松山市で開催された「俳句甲子園」に、全国最多26回目の出場を果たした松山東高校の挑戦に密着。
五・七・五の十七音に青春を捧げた高校生たちの熱い夏を追った。

26回出場の伝統校、松山東高校
俳都・松山で熱弁をふるう高校生たち。全国27校32チームが出場した今年の俳句甲子園全国大会だ。
第28回目となる今回の全国大会。愛媛からは4校が出場し、中でも13大会ぶりに優勝を目指すのが26回出場の伝統校、松山東高校だ。
松山東高校・山本恭児主将:
「緊張しつつなんですけど、まあ楽しもうかなという気持ちです」

初日の予選リーグ
この俳句甲子園。
初日の予選リーグ、トーナメントを通過し、2日目の敗者復活チームを加えた決勝リーグも勝ち抜いて最後、決勝戦を制した高校が栄えある全国優勝の栄冠を掴む。
勝敗は俳句の作品点と、高校生同士のディベートによる鑑賞点を審査員が採点し、決まる。

予選リーグで対戦するのはこの3チーム
松山東高校が初日の予選リーグで対戦するのはこの3チーム。
松山東高校・坂上昊翼副主将:
「去年敗れてしまった学習院さんが相手になるので、自分たちの句を1人でも多くの人に届けるつもりで頑張りたいと思います」
松山東高は1試合目の灘高校に続いて去年敗れた、この学習院女子との対戦も落とすと、予選リーグ敗退に終わってしまう。

透き通るっていうのがちょっと順当すぎる?
東高の俳句
「心太 もちあげきつて 透きとほる」
学習院女子の質疑:
「透き通るっていうのが、ところてんに対して、ちょっと順当すぎるのかなという気もして」
松山東・古角涼真:
「器に入っているときにはこの影が重なる感覚もあって、どこかまだ完全に透き通ってはないんですよね。持ち上げ切ったからこそ見えた心太の真の姿みたいなもの。これを感じてほしいです」
判定は松山東が1本とった。
大会前、実際にところてんに触れて、食べて俳句を作ってきた東高。この日、初の1本を取った勢いそのままに、続く2本目も連取して勝利を挙げた。

冷却シートを額や首に貼って挑む
青野そらさん:
「東高文芸俳句部といえばやっぱりこれじゃないかなって。頭を冷やすっていう意味でもトレードマークって意味でも気に入ってます」
東高のトレードマーク、冷却シートを額や首に貼って挑む3戦目。リーグ通過には勝利しかない。
「一句入魂!頑張っていきまっしょい!」

兼題は自信のある「天牛」しかし…
兼題は自信のある「天牛」。
(※「天牛」とはカミキリムシのこと)
残念ながら、洗足学園に一歩及ばず、無念の予選リーグ敗退となった。
松山東高校・櫛部先生:
「お疲れ様。みんなよく戦ってくれたと思うよ。ここで落ち込んでたら駄目よ。負けて成長する。その気持ちをしっかりと持ってやっていこうじゃないいいですか」
うなだれる坂上副キャプテンの背中を叩いた顧問の櫛部先生。2日目の敗者復活戦出場に望みを賭ける。
山本キャプテン:
「任せてください。ゲバラはいけるよ。ゲバラはいける」
山本キャプテンが語る「ゲバラ」とは一体…?

決まるか!?敗者復活戦
運命の2日目敗者復活戦に出場できるのは9チーム。
予選トーナメントで敗退した4チームと、残りの5チームは敗者復活用で、事前に提出している俳句の作品点で決まる。
敗者復活発表アナウンス:
「敗者復活戦の舞台に上がってくるのは、この9チームです」
そこには松山東高校の句が!歓喜する東高生。東高は事前提出句の枠で見事、切符を掴んだ!

ゲバラはいけるよ。ゲバラはいける
東高の俳句
「枝豆に ゲバラのシャツの 大笑い」
松山東高校の山本キャプテンが言っていた「ゲバラ」とはこのことだった!
審査員:
「ちょっと個性的な俳句かと思いますが、ゲバラも含めて情景を教えてください」
審査員の質問に対する回答など、総合点の高い2チームが決勝リーグに進むことができる。
山本キャプテン:
「一対一で会話をしていて、その間に枝豆があって相手はですね、ゲバラの顔がプリントされたシャツっていうものを着ていて、その相手が大笑いをしていて、なんだかその笑いの声とともにシャツをくしゃっとしているような様子も見えて、そのときにふとゲバラも何だか笑っているようだと」
山本くん渾身の一句。はたして、結果は…

十七音にかけた夏は…
1校目は山形東高校、2校目は高崎高校。東高は健闘を見せたが、十七音にかけた夏がここで終わった。
山本キャプテン:
「貴重な敗者復活の語りの場っていうのをいただけたので、そこは嬉しさもあって悔いなく終われたかなと思います」
青野そらさん:
「(Q.3年生とやれる舞台が終わっちゃいましたけど?)
もう一度一緒にやりたかったなって思うんですけど、今までに対して感謝っていうところです。さらに力をつけて、練習にも今まで通り本気で取り組んで、来年の舞台に帰って来れるようにしたいです」

こんなご褒美が待っていた
他の県勢3校も予選敗退に終わり、戦い終えた松山東高校だが、最後、こんなご褒美が待っていた。
個人優秀賞発表アナウンス:
「続きまして、西村麒麟先生選 “百歳を迎えし肌や花衣”」
大会に出場した全選手の1280句の中から、坂上副キャプテンの句が見事、優秀句に選ばれた。

俳句甲子園で得たものは?
俳句甲子園を通じて、みんなが得たものは。
松山東高校・山本キャプテン:
「正直迷惑をかけられたこともあったし、もちろん僕も迷惑をかけてきて、でもお互いに補い合って何とか形を保ってやってこれたのが仲間だと思っていて。一生涯の絆、仲間を手に入れられたかなって思います」
3年生3人は引退となりますが、ともに戦ってきた後輩がバトンを引き継ぐ。

後輩たちには自由にのびのびやってほしい
松山東高校・山本キャプテン:
「後輩たちには本当に自由にやってもらいたい。実際今ものびのびやってくれているので、そのままでいてくれたなって思います」
夏井いつき審査員:
「私達は言葉という、それを使って真剣に遊びました。この2日間、遊び倒した」
「真剣な言葉遊び」に無我夢中になった青春のひと夏。来年もまた高校生たちが十七音に全力を注ぎこむ。
