実在する有名企業の名をかたり、架空のPR動画制作を依頼。
案件詐欺の被害に遭ったのは、TikTokやXなどにコスプレ自撮り動画を投稿している「そが氏」さんです。

ネットアイドルとして活動している「そが氏」さん:
TikTokのDMが連絡来て、ハーマンインターナショナルの桑原拓磨さんって人から、今回ワイヤレスイヤホンのPRをお願いしたいって連絡DMが来て。

依頼されたのは、ワイヤレスイヤホンのPR動画を投稿して報酬をもらう、いわゆる“案件動画”でした。

依頼主は「JBL」や「AKG」など、数々のオーディオブランドを傘下に持つ世界有数の音響機器メーカー「ハーマン」の“クワバラ”という人物を名乗っていました。

“桑原”を名乗る人物:
独創的なアプローチと細やかな映像表現に深く感銘を受け、ぜひコラボレーションの可能性を探りたいと。

誰もが知る音響ブランドのロゴを勝手に使ったアカウントからの案件動画のオファー。
SNSで約2年活動してきたそが氏さんにとって、初めての企業案件でした。

そが氏さん:
(PR案件は)初めてでした。怪しさはあったんですけど、ではぜひ案件したいです、PRさせてくださいとお願いした。

依頼人が名乗っていたクワバラ氏を調べてみると、ハーマンインターナショナルの日本法人代表取締役の桑原氏と同姓同名でした。

その後、LINEでのやり取りに誘導されたそが氏さんは、報酬15万円で2本のPR動画を作ることで契約しました。

しかし、メッセージのやり取りでは不審な点が…。

“桑原”を名乗る人物とのやりとり:
私たちの会社は、あなたに2の異なるスタイルのPR動画を制作してほしいと考えています。

そが氏さん:
最初から全体的に日本語がおかしいなというか、言わないであろう文字の感じとか言葉のチョイスがあって。

そして、報酬15万円を前払いするためにと指定してきたネット送金システムを巡り、案件詐欺の疑いが決定的になる出来事が…。

そが氏さん:
口座に報酬金額と同じ金額「15万円を入金してください」って。

報酬15万円を受け取る手続きの途中にエラーが発生。
そが氏さんの入力ミスで口座が凍結されたと告げられ、凍結を解除するためには入金額と同じ15万円を追加で入金する必要があるとされたのです。

そが氏さん:
私もひたすら入金はできません。実際にお金が返ってくるかも分からない、普通に詐欺だと疑ってもおかしくない案件ですよと。その後、Xで注意喚起のポストを流したら、自分も同じような感じで詐欺に遭いましたという方がポツポツ現れてきて…。

大手音響メーカー・ハーマンをかたる案件詐欺。
企業側もホームページで注意喚起し、被害を訴えていました。

ハーマンインターナショナル・濱田直樹シニアマネージャー:
実は、6月の末ごろからコールセンターの方に問い合わせの件数が増えてきた。桑原は日本の法人の代表取締役ですので、DMを送ってインフルエンサーの方に直接案件をお願いするということは絶対にあり得ないということが言える。

同様の手口を使った案件詐欺を巡っては、SNSで被害を訴える声が続々と…。

別の有名企業をかたる案件詐欺に遭ったのは、神奈川・横浜市で不良メイド喫茶を経営する矢口さん。

やはり「報酬を振り込んだ口座が凍結された」と告げられ、45万円を振り込み、だまし取られたといいます。

コンセプトカフェを経営する矢口優太さん:
娘と2人で生きていくためにコツコツと積み上げてきた大事な貯金だったんですよ…。(犯人は)恐らく海外だと思うんですよ。ただ、やりとりに恐らくAIを使われているのか、違和感が全くなかった。

相次ぐ案件詐欺。
専門家は、海外の犯罪グループが関わっている可能性が高いとしたうえで、注意するポイントを指摘します。

犯罪ジャーナリスト・多田文明さん:
今、非常にはやっている詐欺の手口の1つが、「あなたはミスをした」と言いがかりを付けてお金をだまし取ろうとする手口。まだ仕事をしていないのに「前払いでお金払うよ」とか、こうしたものにはまず気をつけてほしい。