長野県は「ジュース用トマト」ともいわれる加工用トマトの生産が盛んで、全国2位の産地です。近年はトマトジュース人気もあり需要が高まる一方、高齢化などで生産者が減少しています。そこで、JAなどは生産拡大に向けて様々な取り組みを始めました。
真っ赤に実ったトマト。
よく見ると、茎を支える「支柱」がなく、いわゆる露地栽培です。
農家・青柳仁さん:
「『ジュース用トマト』の畑です。ジュース用トマトというのは生ジュースになるものです」
安曇野市の青柳さんの畑で栽培されているのは、今、収穫の最盛期を迎えている「ジュース用トマト」。加工用トマトとも呼ばれます。
ジュース用トマトは、その名の通り、トマトジュースやケチャップなどに加工されます。生で食べる品種とは栽培方法が異なり、支柱や農業用ハウスを使わないのが一般的です。
農家・青柳仁さん:
「生食用のトマトというのは脇芽をとって成らせているわけですが、これは脇芽も伸ばして、収穫量を多くするためにそういう格好になっています」
栽培労力の少なさに加え、大手メーカーとの契約栽培になるため、収入も安定することから、初心者でも始めやすいといいます。
農家・青柳仁さん:
「価格も決まっているし、全量出荷できる。格好の悪いものや少し日焼けしたものでも出荷できるので、生食用に比べたらロスが少ない」
また、直射日光を受けて育ったトマトは糖度が高く、抗酸化作用があるとされるリコピンも豊富だということです。
(記者リポート)
「皮は硬めなんですが、実は柔らかくて、甘みもあります。生食用のトマトと変わらない味がします。とてもおいしいです」
長野県は、このジュース用トマトの一大産地。雨が少なく、朝晩の寒暖差も大きいため、栽培に適していたことから、1970年代に爆発的に生産者が増え、長く全国トップの生産面積を誇っていました。
しかし―。
JA全農長野・栗原亜未さん:
「近年は、高齢化や夏場の異常気象、暑すぎてしまったり、ゲリラ豪雨などで、ジュース用トマトの栽培が難しくなっていて他品目に移行する人が多い」
JA全農長野によりますと、ピークの1980年に1622ヘクタールあった栽培面積も、2025年は約74ヘクタールと、20分の1以下に減少しました。
一方で、コロナ禍以降、健康志向の高まりや美容ブームで、トマトジュースが人気になっていて、国産トマトの需要が高まっているといいます。
そこで、JAなどは2025年、ジュース用トマトの生産拡大に向け、本格的に力を入れています。
8月10日、朝日村で初めて開かれたのは、「ジュース用トマトの収穫・試飲体験会」です。ジュース用トマトの魅力を知ってもらおうと、JAやメーカーが主催し、子どもたちは赤く実ったトマトを楽しそうに収穫していました。
体験会では、ジュース用トマトを使った料理も披露されました。生のトマトから作ったトマトソースにペンネを加えた料理。
お味は―。
子ども:
「おいしい」
搾りたてのトマトジュースは―。
母親:
「とても“トマト”でおいしいです。色がすごくキレイ」
評判も上々でした。
生産者の青柳さんもこうした取り組みを通じて興味を持つ人が増え、生産者が増えればと期待を寄せています。
農家・青柳仁さん:
「生産者も増えて、人数が増えて部会の活気がないと、皆さんやりがいがないというか。ぜひ作ってもらえる人がいれば作ってほしい」
夏に収穫期を迎え、手間もあまりかからないジュース用トマト。JAでは、他の野菜の収穫や稲作の合間に、空いている畑を活用できる点もメリットとしています。
JA全農長野・栗原亜未さん:
「(トマトジュースの)販売が堅調というところから、トマトという品目を残していきたい。農業初心者の人でも比較的始めやすい品目なので、魅力に思って、若い人でもやってもらえる人もいるので、そういう人を1人でも増やしていければ」