大手商社の三菱商事などで組織する企業連合が8月27日、秋田県沖などで進める洋上風力発電の建設計画から撤退すると発表した。資材価格の高騰で採算が見込めないと判断したという。秋田県や地元自治体は落胆し、国に対して事業者の再公募を早期に実施するよう求める声が上がっている。
秋田2海域で103基の着床式風車設置を計画
三菱商事などで組織する企業連合は、政府が第1弾として公募した2021年、秋田県の「能代市・三種町・男鹿市沖」と「由利本荘市沖」など、国内3つの海域での洋上風力発電の事業者に選定された。

秋田県内2つの海域では着床式の風車103基を設置する計画で、2026年3月の着工に向けて海底地盤や漁業影響の調査などが進められていたが、2025年2月、三菱商事は「計画をゼロから見直す」と表明していた。
「実現可能な事業計画立てるのは困難」
8月27日午後、三菱商事の中西勝也社長が会見を開き、洋上風力発電所の建設計画からの撤退を説明した。

中西社長は「誠に遺憾ながら開発を取りやめざるを得ないという結論に至った。3案件の開発を取りやめざるを得ないことについて、当社としても断腸の思いである」と述べた。
そして「企業連合を構成する各社と様々な手を尽くして検討したが、インフレや金利上昇などの影響で建設コストは2倍以上となり、4年前の応札以降、事業環境は大きく変化した。実現可能な事業計画を立てることは困難と判断した」と説明した。
報道陣から「秋田支店も撤退するのか」と問われた中西社長は「秋田支店などをやめるとは思っていない。継続すべきことは継続するべき。地域に寄り添った形などいろんな形で地域共生の仕方がある。支店も含めて三菱商事グループの貢献もあると思っている」と支店を存続させる考えを示した。
中西社長は今後、県庁に出向いて撤退の経緯や今後の関わり方を説明するとしている。
会見後、中西社長は武藤容治経済産業相に事業撤退を報告した。この中で、武藤経産相は「今回の撤退は地元の期待を裏切るものであり、洋上風力全体に対する社会の信頼を揺るがしかねない案件だと私は考えている。日本における洋上風力の導入に遅れをもたらすものであって、大変遺憾である」と強い口調で述べた。
地元自治体は落胆 早期の再公募の要求も

三菱商事が洋上風力発電所の建設計画からの撤退を発表したことを受け、秋田県の鈴木健太知事は「極めて残念で極めて遺憾である。国家肝いりのプロジェクトで、国を代表する企業が落札して、少々の状況の変化によるスケジュールの変更や見直しはあるかもしれないと思っていたが、撤退はないだろうと思っていたので大変な衝撃を持って受け止めている」と述べた。

事業の対象海域がある秋田・由利本荘市の湊貴信市長は「地域経済の活性化のみならず、観光振興にもつながる事業として大きな期待を寄せてきただけに誠に残念。早期に再公募に向けて取り組んでもらえることを期待している」とコメントした。
(秋田テレビ)