内閣府は、富士山噴火による被害を想定したCG映像を初めて公開した。それによると、周辺地域をはじめ首都圏の東京や千葉まで影響が出るという。
被害の様子を想定CGと合わせて、フジテレビ報道局災害対策チーム百武弘一朗記者とともに分析する。

もし富士山が噴火したら?

宮司​キャスター:
富士山の噴火警戒レベルですけれども、レベル5まである中の現在はレベル1の段階なんですが、もしも今後、富士山が噴火したらどのようなことが起こるのか。内閣府のこの想定CGで見ていきたいと思います。

富士山噴火:大きな噴石
富士山噴火:大きな噴石
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宮司​キャスター:
まず大きな音とともに富士山が噴火します。 火口付近には大きな噴石が無数に吹き飛ばされていくとみられています。 この噴石の中には数メートルにも及ぶものがあるといいますが、危険度はどうですか?

百武記者:
住宅の屋根など、その建物の屋根を打ち破るような かなり強い威力があります。命の危険やけがをする危険は必ずあります。

溶岩流
溶岩流

宮司​キャスター:
こちらは溶岩流です。マグマが加工から噴き出して、高温のまま地表を流れ落ちる現象です。 スピードはあまり早くないのですが、通過した場所を消失させ、埋没させていきます。

火砕流
火砕流

宮司​キャスター:
続いて火砕流を見ていきます。 火砕流は、噴煙や溶岩の塊が崩れ落ちていく現象です。

百武記者:
時速100㎞を超えてくるスピードで崩れ落ちることも考えられるわけです。その温度は数百度に達すると言われています。 ですから通過した場所は、焼き尽くされてしまう現象です。過去には巻き込まれて亡くなった方々もたくさんいました。

融雪型火災泥流
融雪型火災泥流

宮司​キャスター:
さらに冬ですね。 雪の季節に噴火した場合は、融雪型火山泥流による被害も想定されます。 これは火砕流の熱で斜面の雪が溶けると、大量の水になって土砂や岩石を巻き込みながら、高速で遠くまで流れ落ちていくといった現象です。

降灰
降灰

宮司​キャスター:
さらに噴火に伴って火山灰が上空の風で遠方まで、飛ばされて流され、降り積もることが考えられます。 遠くにいたとしても、直径数センチ程度の小さな噴石が風に流されて降ってくる場合もあるということです。

青井キャスター:
とても怖いなと思ったんですが、富士山噴火は起きる可能性はあるんですか。

百武記者:
気象庁の観測では、今のところ異常は観測されていないという現状です。 ただ富士山では、過去5600年で180回ほどの噴火が確認されています。 1707年に起きた宝永噴火がありますが、それを最後に約300年間、噴火は確認されていません。

百武記者:
東京大学の藤井敏嗣名誉教授は今の静かな状態について「少し異常な状態」とした上で、「次の噴火はいつ起こっても不思議がない」と表現しています。 富士山噴火の避難の基本計画の策定に携わった静岡大の小山真人名誉教授は、低周波地震といって、マグマの活動との相関が指摘される地震の状況から「マグマが生きているということは間違いなく言える」と話しています。 噴火の予兆があるというわけではなく、マグマ自体は今もそこにあるという説明です。

CGが想定する降灰の影響が及ぶ範囲は?

宮司​キャスター:
富士山から25㎞、60㎞、100㎞離れた3つの地点について見ていきたいと思います。

富士山から25㎞
富士山から25㎞

宮司​キャスター:
まず富士山から25㎞離れた地点、神奈川県の丹沢湖付近の場合、直径2ミリを超える火山れきが降るとみられています。より富士山に近い場所では、直径数センチの小さな石が降ることも考えられています。

富士山から60㎞
富士山から60㎞

宮司​キャスター:
そして60㎞ほど離れた相模原市付近では、直径2ミリ以下の目の粗い火山灰が降ります。砂浜の砂が降ってくるようなイメージということです。

噴火後、まもなく火山灰が積もり始めて、2日後には20cmの厚さに達するということです。

富士山から100㎞離れた東京・新宿付近
富士山から100㎞離れた東京・新宿付近

宮司​キャスター:
最後に富士山から約100㎞離れた東京都内です。 新宿の場合、直径0.5ミリ以下の細かな火山灰が降る可能性があり、東京にまで影響は及ぶとみられています。 都心にも降るかもしれない火山灰は、交通障害や停電などをもたらす恐れがあります。

どのような被害が出ると予想されているのか?生活への影響は?

青井キャスター:
富士山の噴火が起きた場合、火山灰がどこまで影響を及ぼすのか、といったところを詳しく見ていきます。

降灰の厚さ
降灰の厚さ

宮司​キャスター:
25㎞ほど離れた場所では2日後に火山灰60cmから70cmの厚みになると考えられています。
さらに60㎞離れた相模原市付近は2日後には20cmの厚さに達するということです。
100㎞離れた都内、例えば新宿などでは、影響はどう考えられているんでしょうか。

新宿の降灰
新宿の降灰

百武記者:
新宿でも噴火後、まもなく火山灰が降り始めて、そのまま積もり始めると、2日後には5cm以上の厚さになるとされています。さらに雨が降ると、火山灰が泥のようになってぬかるむところもあります。 当然新宿だけではなく渋谷、池袋といった代表的な街や、官庁街の霞が関も含めて、多くの地域が同様の現象に見舞われます。

宮司​キャスター:
都内にも降灰する可能性があるということですが、我々の生活にどのような影響が出るのでしょうか。

建物への影響
建物への影響

宮司​キャスター:
まず、建物への影響を見ていきましょう。 このように屋根に30cm以上火山灰が積もると、雨が降った時に重みで家屋が倒壊する危険性があります。

建物への影響
建物への影響

宮司​キャスター:
また体育館のように広い空間のある建物でも、積載荷重を超える火山灰が積もると、損壊する恐れがあるということです。

道路への影響
道路への影響

宮司​キャスター:
建物だけでなく、道路にも影響が出ます。
 雨が降っていない時は、10cm以上の降灰で2輪駆動の車が通行不能になります。雨が降った場合はぬかるんでいき、3cm以上の降灰で通行不能になります。そして道路が通行不能になるということは、物流など物資にも影響が出るということです。
 他にも鉄道や電力、水道、通信などへの影響も考えられます。

青井キャスター:
富士山に近い場所ではもちろんわかりますが、都内でもこれらのインフラがもう使えなくなる可能性があるということですか?

鉄道への影響
鉄道への影響

百武記者:
特に鉄道への影響については、わずかな降灰でも電車とレールの間で、通電不良という状況がおきます。踏切に誤作動が出たり、運行システムで列車の位置が把握できなくなると、鉄道の運行ができなくなってしまうということです。

宮司​キャスター:
他の電力や水道など生活インフラへの影響はどうでしょうか?

生活インフラへの影響
生活インフラへの影響

百武記者:
電力への影響では、3ミリ以上の降灰で雨が降ってしまうと、電柱の「がい子」という部分の器具の能力が低下し、停電が発生する可能性があります。断水もありますし、 通信にも影響は出ます。

青井キャスター:
 今は暑い時期ですが、例えば夏に噴火して停電が起きたら、かなり大変なことにもなりますかね。

夏場は熱中症のリスク増大
夏場は熱中症のリスク増大

百武記者:
火山灰を避けるために、家の窓を閉めていて、停電によってエアコンが稼働しない、そういう状況だったら、それが夏だったら、高齢者の方とか、お子さんを中心に被害はどうなるのかなど、そういったことも考えていかなきゃいけません。

青井キャスター:
我々は、どう備えていくかということですよね。

 山口真由スペシャルキャスター:
首都圏の場合、自宅退避が軸になるので、自分たちの家族がそれができるのか、もし患者さんがいれば、医療が受けられる地域に移動しなければいけないですが、移動手段をどうするのか。
リアルに考えることが求められます。

国や自治体の対策はどの程度進んでいるのか?

宮司​キャスター:
国や自治体の対策はどれくらい進んでるんでしょうか?

自治体などの対策
自治体などの対策

百武記者:
 先ほど火砕流の話などがありましたが、富士山の麓の市や町では避難訓練や説明会などが繰り返し開かれています。 さらに遠くに身を移しましょうという広域避難計画もすでに策定されています。
ただ、内閣府は今後、東京・新宿まで届くような広域な降灰について、関係自治体や事業者と具体的な対策を検討する方針ですが、まだその協議体はありません。まだスタートラインにいるという状況なので、具体的な対策の協議や暑さ対策なども含めて、対応が求められています。

青井キャスター:
まもなく防災の日を迎えます。番組でも今後しっかりと取り組みを伝えていきたいと思います。 (イット!8月26日放送より)