新潟市の北越高校の生徒など21人が死傷した磐越道のバス事故で、運転手の男が逮捕された。警察は5月8日朝からバスを手配した会社を家宅捜索に入るなど捜査を進めている。逮捕された男は事故の3日前、なじみの飲食店で「免許を返納する」と話していたことが新たに分かった。
■過失運転致死傷の疑いで運転手の男を逮捕
過失運転致死傷の疑いで逮捕されたのは、新潟県胎内市の無職・若山哲夫容疑者(68)だ。
若山容疑者は5月6日、郡山市の磐越自動車道でマイクロバスを運転し、ガードレールなどに衝突。
遠征先に向かうため、このバスに乗っていた北越高校ソフトテニス部の稲垣尋斗さん(17)を死亡させ、17人の高校生にケガをさせた疑いがもたれている。
■高校と運行会社 “バスの手配”めぐり食い違う主張
この事故を受け、7日夜、保護者会を開いた北越高校。
出席した保護者は「怖いところはある。安全確認が今後どうされていくかがポイントだと思う」と話した。
また、学校から事故の状況や生徒のケアなどについて説明があったというが、「『報道と一部違う』という話があった」と明かした。
保護者会のあとに開いた会見で北越高校の灰野正宏校長はバス運行会社側のある発言を否定した。
「業者側の会見で、北越高校がレンタカーの手配をしたとか、北越高校で運転できる者がいないので運転手の依頼もあったという発言をされているが、ソフトテニス部の顧問によれば、こうした発言はしていないということを確認している」
これまでも付き合いのあった五泉市の蒲原鉄道にバスの運行を依頼したと話す北越高校側。
しかし、事故を起こしたマイクロバスは蒲原鉄道のものではなくレンタカーで、運転をしていた若山容疑者も蒲原鉄道に所属する運転手でもなかった。
蒲原鉄道営業担当の金子賢二さんは「青ナンバーを使うと、やっぱり今高くつくので、結果的に『安いものを探してよ』と、学校からの要請でレンタカーを手配して、なおかつ『人も頼むよ』という中で紹介したということ」と話し、蒲原鉄道は学校の要請で貸し切りバスではなく、レンタカーと運転手の手配を依頼されたと説明。あくまでもお手伝いであり、手数料ももらわないとしている。
しかし、北越高校は貸し切りバスの手配を依頼しただけでレンタカーや運転手の手配を依頼した事実はないと主張。
■警察は“白バス”視野に捜査
その責任の所在があいまいになる中、8日朝、蒲原鉄道で家宅捜索を開始した警察。違法な旅客輸送行為いわゆる“白バス”にあたるかどうかも視野に捜査を進めている。
蒲原鉄道の茂野一弘社長は「現状生まれてしまっている主張のねじれを証明するような資料は残っている。捜索を受けているので細かいことはお話できない。(Q.会見では何を根拠にお話しを?)すみません。よろしくお願いいたします。ご理解いただいてよろしくお願いいたします」と話した。
■若山容疑者“二種免許”所持せず
ほかにも蒲原鉄道の説明と食い違う事実が判明している。
蒲原鉄道の営業担当が知人の紹介で運転を依頼した若山容疑者。旅客輸送に必要な二種免許を持っていると説明していたが、警察の調べで二種免許を持っていなかったことが判明した。
■若山容疑者の異変とは
さらに、若山容疑者の異変に周囲の人たちは気づいていた。
地元のタクシー運転手は「乗り降りが大変なぐらい足が悪い人だった。杖をついたり、傘を杖がわりにして乗り降りするぐらい歩くのは大変だった。だから、そういう状態の人が何でそういう運転をしていたのかなと。目の焦点があっていないような、とぼとぼ歩くような。日中眠気がさしてきて」と明かす。
■事故の3日前には「免許返納する」
若山容疑者が5年ほど前から通っているという飲食店でも「歩くときも、あんなにしゃんしゃんと歩いていたのに、傘をついていた」とその異変が目撃されていた。
今年の3月ごろから歩き方や話し方が大きく変わったという若山容疑者。事故の3日前にもこのお店を訪れていて、自身の運転を不安視するかのような言葉を残していたという。
「自分の車も乗らないんだと言って。『ママ、僕68歳になったから免許あげようと思う』と言っていた。(Q.あげるというのは?)返納するということ」
免許を返納しようとしていたという若山容疑者。
かつて自身も高校の部活の監督を務めたことがあるにも関わらず、なぜ不安な状態で高校生を乗せる依頼を引き受けたのか…。
警察の調べに「時速90km~100kmで走っていた」「速度の見極めが甘かった」などと容疑を認めてい若山容疑者。
国交省も7日の蒲原鉄道に続き、レンタカー会社への聞き取りを行うなど事件の全容解明に向けた動きが加速している。