「伝承館」スタッフになった当時14歳だった女性

福島県が整備した「東日本大震災・原子力災害伝承館」。
福島第一原発から約4km、2020年3月に避難指示が解除された福島・双葉町中野地区にある。

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加井佑佳さん:
これから伝承館はオープンするんですけど、まだ津波の爪痕が残っていて、がれきが残っているところもあるので、まだまだ復興は道半ばなのかなと思います

福島第一原発が立地する大熊町出身の加井佑佳さんは、2020年4月からスタッフの一人として伝承館で働いている。

2011年3月11日午後2時46分…あの日、福島を襲った震災と原発事故。
当時はまだ14歳、中学2年生だった。

加井佑佳さん:
これから何が起こるんだろうと、すごく恐怖感でいっぱいだったことを覚えています

震災の記録と自身の記憶…芽生えた思い

あの日を境に一変した生活。
加井さんも、ふるさとからの避難を余儀なくされた。

加井佑佳さん:
放射線というのが見えない中で、自分たちの生活もこれからどうなるか分からないっていうところで、不安ばかりで過ごしていました

今も避難区域に指定されている自宅。

ふるさとを思い過ごす日々の中で、ある思いが芽生えた。

加井佑佳さん:
私自身、震災以降、浜通りの復興に携わりたいという思いがあって…就職活動をしていく中で伝承館の募集があることを知り、新しい施設に携われるっていうことと、復興にも携われるっていうことで、今回 伝承館の職員を希望しました

震災と原発事故を物語る資料の数々。
その一つひとつが、自分自身の経験と重なる。

加井佑佳さん:
自分が経験してみて、この事故の悲惨さというか、そういったものはもう2度と繰り返してほしくないと思っているので。やっぱり、この経験っていうのは伝える必要があると思います

伝え続けるため…「伝承館」開館

2020年9月20日、東日本大震災・原子力災害伝承館が開館した。

東日本大震災・原子力災害伝承館 高村昇館長:
未曽有の原子力災害に、どのように立ち向かって復興していったかという証を皆様方に見ていただく、そして知っていただく。そのような目的を持っております。お待たせいたしました、この伝承館、本日開館いたします

加井佑佳さん:
これまで半年程度準備をしてきて、いよいよ本当に来館者を迎える時期が来たんだなという思いでいます

オープン初日、全国から約1000人が訪れた。

9年半前、福島で何が起きたか…。その記録と記憶に向き合う。

避難を経験した男性:
こうやって伝えていけばね、将来、原子力発電とか地域とかにも、みんな関心を持つんじゃないの

群馬県から訪れた男性:
(震災と原発事故を)忘れちゃいけないなって、改めて思わされるいい経験になったかなと思いますね

復興に携わりたいと選んだ伝承館での仕事。
加井さんは、自分にしかできない役割を見つけていた。

加井佑佳さん:
展示物はもちろんなんですけど、それをどうやって来館者の方に翻訳というか、これはどういう経緯で展示されているだとか、もしくは自分の経験ですとか、そういったものを直接 来館者の方とコミュニケーションをとりながら伝えていきたいなと思います

震災と原発事故を風化させないために伝え続ける。

(福島テレビ)

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