今回の大雨による被害は熊本県内の広範囲に及んでいる。木村知事は8月19日に下益城郡と上益城郡、それに宇城市を視察。20日は県北部の玉名市、21日は県南部の八代市と県内を回り、被災状況の確認を行っている。
孤立集落が発生した美里町や甲佐町
一連の記録的大雨で孤立地区が発生した下益城郡美里町や上益城郡甲佐町。8月19日に木村知事は、護岸が被災し、そばにある県道が崩落した美里町の筒川周辺や流木で一部が壊れるなどした二俣橋を視察した。

また、甲佐町では家族4人が土砂崩れに巻き込まれ、父親が犠牲となった現場で、静かに手を合わせた。木村知事は「県の力で土砂、流木を撤去し、一日も早い暮らしの再建に努めたい。〈最後の一人までしっかりと継続して支えたい〉という思いを新たにした」と述べた。

また、美里町の上田泰弘町長との意見交換の場で、上田町長は「18日の夕立ちで時間雨量53ミリ。また孤立しました」と話し、17日に孤立解消した中岳地区が、再び孤立した。その後、18日午後1時に孤立は解消された。
手付かずの土砂が残る宇城市の農業被害
また、19日に宇城市役所・小川支所を訪れた木村知事は、国土交通省のヘリが撮影した映像を見ながら、市内山間部の被害状況について説明を受けた。映像からは、至る所で山腹崩壊が確認できるほか、崩落した土砂が住宅に迫る被害が確認できる。

宇城市豊野町では農業施設の被災状況を視察し、収穫を目前に控えたベビーリーフの農業用ハウスには、氾濫した川から土砂が入り手つかずの状態だった。さらに、水田へと続く農作業用の道路はアスファルトがはがれ、通行できなくなっていた。

被災した農家は「稲刈りは離れた場所は機械でして、あとは手刈りする。今コメは高いから」と話し、間近に迫るコメの収穫は水田に流れ込んだ土砂の影響でどこまで機械で刈り取れるのか不安が募る。
県道が土砂崩れで行く手を阻まれた山都町
また、上益城郡山都町では、山間部の集落をつなぐ県道219号横野矢部線を視察。路面は土砂で見えていない。しばらく進むと、二車線をふさいだ土砂崩れに行く手を阻まれる。大雨直後は、山都町の職員が徒歩で孤立集落の安否確認を行ったという。

山都町の坂本靖也町長は「県道が一日も早く復旧することで、集落の住民の生活が元に戻る。農地の復旧にも一緒に取り組んでもらいたい」と話した。

また、木村知事は「これだけの崖なので、少しの雨で二次被害が起きかねない。専門家を交えて工法を検討したい。時間軸を見据えながら、農家が一日も早く農業に集中できるように環境を整えていきたい」と述べた。
被害大きい玉名市と八代市は2度目の視察
木村知事は20日には2度目となる玉名市の被災現場を視察。氾濫した境川周辺の被災家屋などを見て回り、住民などから被害状況を聞いた。

氾濫を繰り返している境川について木村知事は「改修も含めてあらゆる方法を検討したい」と述べた。

翌21日には八代市を視察。発災後、2度目の視察となった木村知事がまず訪れたのが、生姜の生産が盛んな東陽町。

視察した生姜畑では、11月には約8トンの収穫を見込んでいたが、一連の大雨で山が崩れ、土砂が流れ込んだ。状況を確認した木村知事は関係部署と連携しながら対応していく方針を示した。

また、八代市が生産量全国トップを誇るイグサ農家へ。4代目の宮下優作さんは加工前のイグサ約500キロ(畳表約200枚分)が浸水被害に遭った。

宮下さんは「(水が)60センチぐらい来ていて、数でいうと結構廃棄した」と話し、ほかにも、機械約10台が浸水し、使えるか分からない状態だ。

宮下さんが「雨が降る前の状態に戻れば。世界の人をびっくりさせられる畳表を織るので」と伝えると、木村知事は「しっかり支えていきますので、どうか気落ちしないように頑張っていきましょう」と声をかけた。

一連の大雨で農林水産業の被害額は八代市で6億円あまり、県全体では151億円を超えていて今後、さらに増える見込みだ。

木村知事は「要望事項をまとめる段階に来ている。そう遠くないうち、1週間2週間のうちに国に要望したい」と、国へ支援を求める考えを示した。
(テレビ熊本)