瀬戸内海の静かな街で、制作物などの準備が整いつつも、いまだ開催されていない“芸術祭”があるという。作品を制作したアーティストたちからは困惑と怒りの声が上がっている。主催者の男性と連絡が取れなくなり、開催ができなくなっているというのだ。また芸術祭のHPには勝手に名前を使われる問題まで生じるなど混乱が広がっている。
穏やかな瀬戸内海に面した街で起きたある騒動… 。
番組ディレクター:
色のついた木材が家の前を囲っています。こちらアーチ状になっていて、人の手で創作したような物が作られています。

一軒まるごと“廃材”に覆われた古民家。
番組ディレクター:
かなり大きいです。30メートル以上あるのでしょうか。家の中まで色のついた木材が入っています。

実はこれらは廃材を利用した“アート作品”だ。しかし、なぜか放置されていた。

8月1日から香川県東かがわ市で開催されるはずだった「HIKE!HIKETA―東かがわ国際芸術祭」。
しかし、直前で主催者と連絡が取れなくなり開催されていない。

番組ディレクター:
家の扉の前には、東かがわ国際芸術祭と書かれたパンフレットが貼ってあります。

展示会場だった古民家は“もぬけのから”。SNSの更新もされず、運営を担う実行委員会に活動の様子はみられない。
作品を制作したアーティストたちからは困惑と怒りの声
古民家に自らの作品を放置された現代美術家の中村岳さんは、憤りを露わにした。

現代美術家 中村岳さん:
問題なのは、展覧会が虚偽にあふれていることです。

主催者からの出展依頼を受け、中村さんは7月、現地を訪れ、10日間かけて作品を制作。芸術祭が初めての開催だったことから作品を無償で提供することに…。
主催者側からはこんな“甘い言葉”をかけられたという。
現代美術家 中村岳さん:
(主催者の)説明だと瀬戸内国際芸術祭という全国的に有名なすごい展覧会があって、その関連事業で始めると…。優秀なアーティストは引き抜きがあると言っていた。

香川と岡山の島々を舞台にして夏休みシーズンに開催されている、国内最大級のアートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」。
海外から多くの観光客が訪れるなど世界から注目を集めている。
同時期に開催されるはずだった“問題の芸術祭”。

主催者は、参加者に「瀬戸内国際芸術祭」の関係者と知り合いで「力のある作家は歓迎する」と豪語していたという。
芸術祭に出展予定だったアーティストの郁川舞さんは「作家に期待を持たせるような発言は度々していた」「ものすごく手間がかかっていてそれが全部なくなってしまいすごく悲しい」と話した。
郁川さんは主催者とLINEでやりとりしていたが8月に入り、連絡は途絶えてしまったという。

(芸術祭に出展予定だった)郁川舞さん:
あまりにも無責任な対応で怒りもそうだがこんなことがあり得るのかすごくびっくりした。口だけじゃないですけど、そういうものが積み重なって全部破綻したのでは…。
実行委員会のHPに勝手に名前を使用されるトラブルも
さらにホームページで勝手に名前を使われたとの声も上がった。

実行委員会のHPには、「連携」という項目に“香川県政策部文化芸術局文化振興課”との記載が…
しかし、「連携」している事実はなかった。

県によると2024年7月、主催者の男性は芸術関連の助成金に応募。その後、連絡がつかなくなったことから助成金の交付を見送ったという。
番組の取材に対して、香川県文化芸術局は「事実と異なっている部分の(HPの)削除を求めたい」と話した。

番組では騒動となった芸術際の主催者に連絡を取ったが、現時点で返事はない。
(「イット!」8月19日放送より)