防災システム研究所の山村 武彦 所長と、記録的大雨の爪痕が残る熊本県内各地を回り、その教訓について考えます。2回目の19日は、木葉川が氾濫するなどした玉名郡玉東町を訪れ、「早めの避難」で人的被害を出さなかった高齢者施設などを取材しました。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「浸水の高さが1メートル以上。柵に絡まっている竹などを見ると相当な流速、水の流れが速かったのではないかと思う」
玉東町は一連の大雨で町の中心部を流れる木葉川が氾濫しました。
木葉川と白木川が合流するエリアでは公民館や体育館などが水に漬かりました。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「特に川の合流点だとそれぞれの川が同時に越水する危険性があるので今回の多分そういう傾向が見てとれる」
また、木葉川では堤防の決壊も…。白木川との合流点から500メートルほど下流の左岸側が約50メートルにわたって壊れていました。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「まるで怪物が暴れまわった跡みたいなそんな感じの破壊力だ。雨の量、線状降水帯の恐ろしさ。それがこういう中小河川の決壊にまでつながる、その力。大量の雨が短時間に降ったことを物語っている」
木葉川が決壊した箇所から約500メートルの場所にある特別養護老人ホーム『葉山苑』を訪ねました。
施設は、一連の大雨で浸水被害に遭いました。
【特別養護老人ホーム『葉山苑』 宮本 英郎 主任】
「(10日の)午後11時ごろから雲行きが怪しいなと思って、入所者を避難させようという話になった」
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「その時はまだ浸水してなかった?」
【特別養護老人ホーム『葉山苑』 宮本 英郎 主任】
「まだ浸水していなかった」
8月10日、宿直をしていた宮本 英郎 さんは、夜勤の職員4人と協力して午後11時ごろから、1階にいた入所者15人を2階に『垂直避難』させました。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「どうして怪しいなと感じたのか?」
【特別養護老人ホーム『葉山苑』 宮本 英郎 主任】
「ここは水に弱い地形なので、雨が強い時は回りの田んぼを見ることにしている。そこを見て、田んぼから道路に水が上がってきそうな状況だったので2階に避難させた」
停電のリスクがあるエレベーターを極力避け、職員らが車いすごと抱えて、階段を使って避難させたといいます。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「その後、施設内にも水が入ってきたんですか?」
【特別養護老人ホーム『葉山苑』 宮本 英郎 主任】
「膝上ぐらいの高さまで」
施設は、1階部分が1メートル近く水に漬かりましたが、全員、2階に避難していたため、無事でした。
ただ、1階にあったベッドや椅子などが泥水で汚れたほか、駐車場の10台以上の車が水没したということで、この日も、職員らが片付けに追われていました。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「周辺の異常に気付いた職員たちが力を合わせて、高齢者を車いすごと2階に避難させて事なきを得たと、これは非常に教訓とすべき成功事例の一つだと思う」
山村所長は、「夜間の高齢者施設は職員が少なく、避難に時間がかかるので、周囲の異変を察知し、『早めに避難スイッチを入れる』ことが大事だ」と指摘します。
熊本県によりますと、一連の大雨で県内の熊本市や玉東町など10の市と町にある92の高齢者施設が浸水被害に遭いましたが、人的被害は報告されていません。
20日は、中小河川の境川が氾濫した玉名市を取材、住宅の被災状況などについてお伝えします。