大規模な山林火災から復興へと歩みを進める中、岩手県大船渡市三陸町綾里では8月14日、6年ぶりに伝統の「夏祭り」が開かれています。
(報告:三倉茉裕子アナウンサー)
三陸町綾里地区のほぼ中央に位置する綾里小学校の校庭からお伝えします。
会場では、祭りのやぐらを囲んで盆踊りが行われています。
太鼓や笛の音が夏の夜に響き、輪になって踊る人たちの笑顔があふれています。
この夏祭りは大正時代に始まったとされていて、毎年、25歳を迎える綾里出身の若者たちが実行委員を務めています。
2019年には100回目が開かれましたが、新型コロナウイルスの影響で、以降中止が続きました。
そんな中、2020年から2022年までに、本来実行委員を務めるはずだった世代が夏祭りを復活させようと動き出した2025年2月、大規模な山林火災が大船渡市を襲ったのです。
ここ綾里地区でも68棟の住宅が焼けるなど大きな被害がありました。
「被災した人が大勢いる中、祭りをやるべきではない」という声も上がりましたが、「この状況だからこそ、綾里に元気を取り戻したい」という強い思いが広がり地域を動かしました。
10人ほどの実行委員メンバーは山林火災のあとも週に2回集まり、寄付金を募ったり会場を彩る装飾を作ったりして準備を重ねてきました。
祭りのシンボル・高さ6.5mの迫力あるやぐらは地元産の木材で仕上げられ、実行委員の思いが詰まっています。
Q:6年ぶりの夏祭り、2月には山林火災がありましたが、どんな思いで準備をしてきましたか。
実行委員 東川今(ひがしかわなう)さん
「私自身も自宅が被災し落ち込んでいたが、綾里地域をどう盛り上げていったらいいか考えた時、夏祭りが思い浮かんだ。実行委員会のメンバーと相談し開催を決めた。地域を盛り上げていきたい気持ちでここまで頑張ってきた」
そして、地域の人たちが笑顔で祭りに参加しているのをみて東川さんは「この光景を夢見ながら頑張ってきたので、嬉しい気持ちでいっぱい」と、感慨深い様子で話しました。
夏祭りは14日昼すぎに幕を開け、地元の子どもたちによるダンスパフォーマンスや綾里地区の郷土芸能などが披露されました。
参加者の中には現在、仮設住宅で暮らす人や山林火災の後、綾里を離れた人の姿も見られ、久しぶりの集いにかけがえのない時間を紡いでいます。