町を見下ろすかのように立つ彦根城。
滋賀・彦根市の中学校で2025年度から行われる、全国的に珍しいある取り組みが今話題となっているんです。

ソレってどうなの?12日のテーマは、「公約実現へ 生徒会長に10万円」です。

彦根市のホームページに公開されているポスター。
そこには「『ひこね』の中学生が地域、社会を変える!」と力強いキャッチコピーが書かれています。

市の教育委員会によりますと、2025年度から、市内の7つの公立中学校の生徒会長に10万円を交付するというんです。

とはいっても、生徒会長へのお小遣いではありません。

じゃあ一体何なんだ…というと、秋の生徒会長選挙に立候補した生徒が、まず公約を発表します。
そして、見事生徒会長に当選した生徒がその10万円を元手に、その公約を実現させるというものなんだそうです。

「公約実現のため生徒会長に10万円」。
彦根市の中学生と保護者の方に聞いてみると、「自分のしたいことができたら、もっと(生徒会に)入りたいという人も増えるのでいいと思う」「生徒会で立候補する人が多くなって、(もっと)意見を自由に言えるようになって、もっと効率が良くなって、いい取り組みだと思います。もうちょっと修学旅行をいいところにしたり、壊れているところを改装するってことを実現したい」「生徒会が使い方とかも考えて使えるのであれば、生徒の自主性とかも育つと思うので、すごくいいことだと思います」など、ほとんどの方が賛成の立場でした。

では、なぜこのような取り組みを始めるんでしょうか。
その背景には、生徒や保護者からの「形式的な生徒会活動で自由度が少ない」「子どもたちの思いが予算などの壁で実現できない」といった声あったからだといいます。

こうした生徒たちの思いを応援するために、市は2024年から予算確保や企画アイデアを検討してきました。

そして、10万円×7校分の70万円の予算を確保するために、7月からクラウドファンディング型のふるさと納税を活用して資金を集めました。

そして11日、その他の経費を含めた目標額の100万円に達したということなんです。

この事業について、彦根市の田島一成市長は「どんな公約を立てて立候補してくるのか、楽しみでもあり恐ろしいところもありますけども。仲間とともに学校生活の充実を目指して具体的に取り組む経験を重ねることが、その後の生き方にも大きく影響してくると考えています」と話しています。

原則、公約に縛りは設けませんけれども、その公約に10万円を交付するかどうかは最終的に市が判断するということです。

では、中学校ではどのような公約が掲げられているのでしょうか。
彦根市によりますと、これまで市内の中学校での公約は「目安箱の設置」が多く、その他は「地域との活動を充実させたい」「なくなってしまった文化祭を復活させたい」というものがあったといいます。

専門家の目にはどう映ったのか、教育評論家の尾木直樹さんに聞きました。

教育評論家・尾木直樹氏:
こども基本法で、子どもたちも社会に参画していくというのが基本的にすごく重視されるようになってきてますから、そういう点では時代の要請にかなっている。自分たちが主役になって、行政とともに自治体や自分たちの住んでいる地域の課題を解決していける、そういうメリットはすごく大きいと思いますね。自治体から初動的にこういった動きをしてくれるのは、非常に教育現場の感覚からいえば助かる。北海道から沖縄まで、この彦根市の取り組みが伝わっていけばいいと思う。

しかし、取り組みを評価する一方で「海外ではそれはもう常識。やってないところの方がない。ヨーロッパ諸国とか、特にオランダは進んでいる。(日本は)取り残されている。そういうレベルです」と指摘もありました。

生徒の自主性を尊重する新しい取り組み、注目していきたいと思います。