手話が語る福祉のコーナーです。学校に通えない子供たちの居場所の一つフリースクール。岡山市南区にある子供たちの悩みに寄り添い「誰もが通える場所」を取材しました。

(にぎやかな子供たち)

子供たちの楽しそうな声が響き渡ります。岡山市南区にあるうえまつフリースクール。2階建ての住宅を改装したこのフリースクールには小学1年生から高校3年生まで109人が在籍していて、月に約30人が利用しています。

その半数が発達障害がある、または発達障害と診断されていないものの、その傾向がみられるグレーゾーンと呼ばれる子供たちです。

(うえまつフリースクール 横山圭祐代表)
「学校でコミュニケーションがうまくいかなくて学校に行けなくなりました、というような問い合わせが少しずつ増えているのかなと思う」

文部科学省は2022年、通常学級に在籍する小中学生の8.8%が学習や行動の面で著しい困難を示すという調査結果を発表しました。全国の公立の小中学校で推計すると75万人を超えると言われています。

うえまつは障害のある子供の支援事業所に勤めていた横山さんが2021年4月に開校しました。

(横山圭祐代表)
「僕が不登校の経験がある。将来どうしたらいいか悩んでいる時期があった。今も学校に行くことができない子供たちにとって元気になれる場所があれば、僕の経験も生かせるかと思ってフリースクールを始めた」

うえまつの特徴は自由度の高さ。1日のスケジュールは全て子供たち次第。昼食の時間も決まっていません。子供たちが好きなことを見つけ追求したり、時にはのんびりと過ごしたりすることが元気になるための大事な一歩だと横山さんは言います。

〇動画を制作する子供たち
「どうやって字幕を入れようかな」
「うーん」

(横山圭祐代表)
「安心できる環境の中で少しずつチャレンジをしてもらえたら、フリースクール来なくなった後でも、やったことないけどちょっと取り組んでみようかなと、意気込みみたいなものを身に付けてほしい」

その自由な環境を気に入り小学3年生から通うタクヤさん(仮名)、12歳。発達障害の一つ、自閉スペクトラム症で感情のコントロールができず、人を叩く、物を壊すといった行動からトラブルになり小学2年生の3学期から登校できなくなりました。

横山さんは、タクヤさんの行動を否定せず、どうすればよかったかを一緒に考えました。

(横山圭祐代表)
「なぜタクヤさんは怒ったのか、何に困っていて、どういう助けが欲しかったのか、次はどうしたらいいかを絵や文字で書きながら振り返りをして、次につながるような話を続けていった」

次第に感情を言葉にして周りに伝えられるようになったタクヤさん。自分に自信を持てるようになると心境に変化が。

(タクヤさん)
「学校にいて、辛いこともあるけど楽しいこともたくさんあるから、中学校に行ったらもっと楽しいだろうなと思って行くようになった」

中学に進んでからはほぼ毎日通っています。現在、うえまつには月に2回ほど通っています。

(タクヤさん)
「日常がすごく楽しくなった。今の自分があるのもフリースクールのおかげだし、本当に来てよかった」
「他人を思いやれて、嫌な思いをさせない大人、PC関係の仕事に就きたい」

通信制の高校に通うゆなさん(15)。小学6年生からうえまつを利用しています。小学生の頃の自分を振り返ると大きな変化があったと言います。

(ゆなさん)
「(学校に)行ってなかった時はめちゃくちゃ暗い人だった。全然笑わないし。きっと性格も変わったと思う。小学生の時より明るくなった気がする」

うえまつに通う中で見つけた趣味が「ギター」。1日中、食事をすることも忘れて弾き続けていたと言います。

(ゆなさん)
「(ギターを始めてから)いろいろ挑戦してみようという気持ちが生まれやすくなったかなと思う。落ち着く居場所。本当に落ち着くし、実家感というか。帰ってきたという感じ」

自分の好きなことを見つけたゆなさん。将来の姿も描いています。

(ゆなさん)
「幼い子供たちと一緒に遊んだりするのが楽しいので、そういう仕事できたらいいかなと思う」

この日は、スクールの外へ遠足です。子供たちが行きたい場所を計画して、倉敷市のボルダリング施設に来ました。

「両手で持って足を置く」
「危ないから離れて」
「がんばれ」

(参加した子供たちは…)
「楽しい。一人でやるより友達とした方がいい」

子供たちと一緒に汗を流す横山さん。やりたいという意思を尊重して小さなことでも積極的に関わっています。

(横山圭祐代表)
「自分たちで選んでやりたいなと思った活動を実行して、達成感。そしていろんな経験や刺激が得られるので、将来社会に出た時に役立つ経験ができると思っているので、規模に関わらず子供がやりたいと思ったことはどんどんやってもらっている」

その裏には、うえまつの目標であり横山さんの願いがあります。

(横山圭祐代表)
「うえまつフリースクールが安心できる居場所で、やりたいことを実行してそれぞれの子供が楽しいな、幸せだなと思うような人生を歩めるような大人になってほしい」

不安や悩みを抱える子供たちにとってうえまつは自信を持って社会に飛び立つための居場所のように感じました。

岡山放送
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