およそ30年ぶりの記録的な渇水。
深刻な「雨不足」がもたらす影響を徹底取材した。
異例の「早い梅雨明け」がもたらした水不足で、近畿有数の米どころ兵庫・豊岡市では、田んぼがひび割れ、農家は「このままでは収穫量が減るかも」と訴える。
気象予報士の片平敦さんは「台風が1個や2個来たぐらいでは足りない」ぐらいの渇水だと指摘し、1人1人が節水を心掛けることが大切だと話した。

■記録的な渇水 「早く雨が降ってくれへんかな」
記者リポート:土が見えてますよ。もっと水がありそうですよね、ダムって。
ダムには水が無くなり、貝の死がいが…。
カメラマンリポート:川が完全に干あがっています。
全く水のない川…水不足の影響は、米作りにも…。
米農家:かなり割れてますね…「そうですね」(Q.米はできる?)「かなり収量が減ってくる。
一体いま、何が起きているのか?
気象予報士 片平敦さん:梅雨の雨がかなり少なかった。数十年に1回あるかどうかというような雨不足。
かつて琵琶湖が干し上がった「平成の大渇水」以来の“雨不足”に!?
農家が「早く雨が降ってくれへんかなと」「雨が降ってくれるのを祈るしかない」「雨降ってくれ~」と口をそろえる、異常事態。
生活を脅かす「雨不足」の実態をnewsランナーが緊急取材した。

■土が“まる見え” ダムの処水率は33%台 7月の降水量は、平年の4分の1程度
「雨不足」で深刻な影響が出ていると聞き、取材班が訪れたのは、兵庫県丹波市の三宝ダム。
近隣のおよそ1800世帯に生活用水などを供給しているが…。
記者リポート:土が見えてますよね。ダムって、もっと水がありますよね。エーッ!?
4日時点のダムの貯水率は、35.0%と、33%台にまで下がった、12年前の記録に迫る勢いだ。
丹波市では7月、国内での観測史上最高となる41.2度を記録するなど、連日35度以上の猛暑日となる一方で、ほとんど雨が降らず、7月の降水量は、平年の4分の1程度に。
ダム近くの畑を訪れると…。
丹波市民:本来、ナスとかも、どんどん実がなっていくんですけど、水もないし、しおれてきて、最終的に枯れてしまいますね。
暑さと雨不足で、野菜は、枯れてしまい、水をためるはずのタンクは空っぽになっていた。
(Q.今まで経験は)
丹波市民:ないですね、だいたい夕立があったり、去年も少なかったですけど、今年は特に厳しいですよね。早く雨が降ってくれないかなと、みんな祈ってるんですけど。

■夏休みでにぎわうはずのプールはオープンから3日営業中止に
さらに、雨不足の影響は、こんな所にも。
記者リポート:こちらのプールは、水不足の影響で営業が中止されました。中には人がいません。
本来、夏休みで、子供たちの声が響くはずのプールは、オープンからわずが3日で営業中止になった。
この状況を受け、丹波市も、市民に節水を呼び掛けているが…。
丹波市水道課 池上大樹係長:こちらの水は水道水にも使用しているし、農業用としても使用しているので、お盆ぐらいまでは、稲作にも水が必要ということで、雨が降らない限りは水はつくれないので、一刻も早い雨を期待している。
今後、雨が降らない状態が続けば、水道から出る水の量を少なくする「減圧給水」や、さらには「断水」にまで踏み切らざるを得ないという。

■31年前の『平成の大渇水』に匹敵かそれ以上の「水不足」
こうした「雨不足」はいま、全国で相次いでいて、中には、貯水率が0%になってしまったダムも…。
一体何が起きているのか?気象予報士の片平さんに聞いた。
片平敦気象予報士:ことしの梅雨の雨がかなり少なかった。梅雨入りした当初、南の方で雨を多少降らせたが、いきなり夏が来たという状況に。梅雨前線が一気に近畿地方をジャンプして、北海道あたりまで飛んで行ったような形に。31年前の『平成の大渇水』に匹敵するような、今後の雨の降り方次第では、それ以上になるような水不足も心配される。
31年前に起きた「平成の大渇水」。
琵琶湖で観測史上最低水位を記録し、近畿の広い範囲で取水制限が実施されたが、ことしはそれ以上の「雨不足」になる恐れがあるというのだ。

特に心配される地域が…。
片平敦気象予報士:本来(雨雲が)通過するべきだった地域、具体的にいうと九州北部から日本海側、近畿の北部も経て、東北、北陸にかけて。その地域が特に雨不足になっていると言える。

■ひび割れた田んぼ 7月の降水量は平年の1割程度
そこで取材班が向かったのは、日本海に面する兵庫県豊岡市。
近畿有数の米どころとして知られているが…。
記者リポート:見てください。ひび割れていますし、かなり深いですね。
豊岡市で農業を営む平峰さんに話を聞いた。
米農家 平峰拓郎さん:もう全く水がないので、こういう状態になっています。
記者が許可を得て、ひび割れた田んぼを触らせてもらいます。
記者リポート:完全に乾いていますね。
平峰さんの田んぼでは、これまでは川からポンプでくみ上げるなどして、水を確保していた。
しかし今は、川にほとんど水が流れておらず、代わりに田んぼの土の中からしみ出た水を、もう一度吸い上げて使うなどして、なんとかしのいでいる状態だ。
米農家 平峰拓郎さん:ひと月ちょっとぐらい多分降ってなくって、1度7月にパラパラっと降ったんですけど、焼け石に水という状態。
豊岡市では、7月、13日連続で35度以上の猛暑日となった一方で、雨はほとんど降らない状態が続いた。
7月の降水量は、平年のわずか1割程度にとどまっている。

■米がとれない? 「かなりの減収になる」と米農家
異常な暑さと雨不足で、稲の葉先も茶色く枯れてしまっている。
米農家 平峰拓郎さん:水がない状態で、ここ数日の40度に近い気温によっても、焼けてしまってる状態。これが進むと、もう枯れるのを待つしかない。
今の季節は、稲穂が出るタイミングで、米が育つために、一番水が必要な時期。このまま雨が降らなければ、「米の収穫にも大きく影響しそうだ」という。
(Q.米は取れない?)
米農家 平峰拓郎さん:かなりの減収になると思います。豊岡だけじゃなくて、日本海側は全域のように聞いています。米どころの新潟を含めて、かなり大変なことになるんじゃないかな。
深刻な影響を及ぼしている「雨不足」。一体いつまで続くのだろうか。

■片平気象予報士「台風が1個や2個来たぐらいでは足りない」
例年より3週間ほど梅雨明けが早かった影響が各地で出ている。今後の雨の見通しなどについて、片平敦気象予報士の解説。
片平気象予報士:ここ1ヶ月分ぐらいの降水量、雨の量を見ていただきますと、今年の7月5日から8月3日までの30日分の雨の量が、いつもの年に比べてどれぐらいかというと、豊岡は12%、舞鶴は11%ということで、いつもの年の9割減、1割ぐらいしか降っていないという状況になっているんです。
梅雨入りした直後は、(日本の)南の方の地域が割りと雨が降っていて、梅雨前線は北上してくるんですが、梅雨の後半で梅雨前線は北に行って、本当であれば日本海側でたくさん雨を降らせるのに、その分の3週間ごそっと雨がなくなってしまった。一気に北へ行ってしまったので、特に日本海側を中心に雨が少なくなってるというわけなんですよね。
渇水対策はあるのだろうか。
片平気象予報士:この先の雨も含めて心配な状況でして、渇水の解消には、『台風が1個や2個来たぐらいでは足りない』ぐらいにもう雨が少ない状況ですね。
梅雨前線の梅雨の後半って、大雨がよく降るわけですけども、大雨がなかった代わりに、それぐらいの雨が降らないと、元に戻らないってくらい雨が少なくなっちゃってるというわけなんですね。

■「お盆明けにかけてまた猛烈な暑さが戻ってきそう」
今後の雨の予報はどうだろうか。
片平気象予報士:この先16日間の予報では、8月7日から割と雨が降りやすくなってきて、久しぶりの恵みの雨になってきそうです。
7日はちょっと大雨の恐れもあるくらいなので気をつけていただきたいんですが、ただこの雨もせいぜい数日4日、5日ぐらいで、お盆のころにはまた晴れてきて、お盆明けにかけてまた猛烈な暑さが戻ってきそうなんですね。
この雨でも水不足を一気に解消するほどには、きっとならないだろうなというのが今のところの見通しです。

■片平気象予報士「降ってくる雨の量調整できないですけど使う量は調整できます」
私たちができる対策はあるのだろうか。
片平気象予報士:個人でもできることがいっぱいあります。普段の生活の中でも歯磨きとか洗顔、お風呂、あとは食器洗い、とにかく水を流しっ放しにしないっていうところがポイントです。
トイレは「大・小のレバー」をうまく使い分けるという方法もあります。
お風呂のお湯張りって最近だと、お湯の量『10分の6』『10分の7』とかあるじゃないですか。あれを例えばいつもより1少なくするだけでも、みんながやれば大分水の量って変わってきますからね。
降ってくる雨の量は調整できないですけど、使う量は調整できますので、みんなで何とか乗り切っていきたいなと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2025年8月4日放送)
