プロ野球に偉大な足跡を残した選手たちの功績、伝説を徳光和夫が引き出す『プロ野球レジェン堂』。記憶に残る名勝負や知られざる裏話、ライバル関係など、「最強のスポーツコンテンツ」だった“あの頃のプロ野球”のレジェンドたちに迫る!
現役時代、通算868本のホームランを放った王貞治氏(現福岡ソフトバンクホークス会長)。その「世界の王」の最後のホームランバットは徳光が持っていた。王氏の了解のもと、“徳光家のお宝”が野球殿堂博物館に寄贈されることになった。
「徳光家の“王バット”殿堂入りスペシャル」パート1(前・中・後編)
【中編からの続き】
王貞治さんが現役時代練習に使用していた“日本刀”
関口貴広さん(野球殿堂博物館主任学芸員):
こちらが王貞治さんが現役時代練習で使用していた日本刀です。

徳光和夫:
こんなのがあるんですか。

2025年2月18日放送回
徳光:
有名な、日本刀で垂れ下がっている短冊をパッと引く、スパッと切る。あれはどういう練習なんですか?
王貞治(85):
あれはですね、結局バットっていうのは、やっぱり水平に比べばやっぱり多少下がるんですね。ただこれが大きく下がるのを少なくしようということですね。感覚的にこういうふうに、そういう感覚で練習しててちょうどいいんですね。
関口:
王さん個人の持ち物ではなくて、荒川コーチが、荒川博さんがご所蔵だったもので。
徳光:
荒川さんの持ち物だったんですか、あれは。
関口:
で、こちらに荒川さんが持ってきてくださって。
徳光:
これは本身ですよね。
関口:
ちゃんと刃があります。
徳光:
そうですよね。
関口:
銃刀法の登録証も一応。
遠藤玲子(フジテレビアナウンサー):
銃刀法の登録証ですか。

関口:
王さん、毎日荒川さんのお宅に行って、荒川さんのお宅で素振りをしていくってことで。
徳光:
こういうふうにつるした紙を切ってたわけですよ、ストン、ストンって。
これ、切れるもんじゃないらしいよ、簡単にスパンとは。やっぱり相当の瞬発力があるからこそ、見事に切れるみたいだね。
遠藤:
隣は756号の時の記念碑。
関口:
こちらが後楽園スタジアムのライトスタンドに、翌年の1978年の開幕のタイミングで建てられたモニュメントです。
外野のイスを2席・2席で4席取り壊して、これが建ってたということで。
遠藤:
後楽園球場にあったのを、解体する時に。
関口:
外して、いただいてきたという。
徳光:
これは一本足打法にせずに、あえて振り切った…。
関口:
フォロースルーの。

徳光:
フォロースルーをモチーフにしたんだね。
徳光:
この部屋も、ベースボールの起源と発展。
関口:
野球そのものの歴史の展示になります。
向かって右側がアメリカでの発展の話で、左側が日本での伝来と発達の話になります。
遠藤:
え? これ、明治時代の。

徳光:
最初、こんなんだったね。でも、キャッチャーマスクってあったんだね。明治時代にあったんですね、こんなの。
江本孟紀:
そうですね。剣道から来てるみたいな。
遠藤:
剣道とかフェンシングですよね、どちらかというと。
徳光:
最初のバットがすりこぎ棒ですよ。
遠藤:
いやあ。重そうだな。

徳光:
正岡子規のユニホームの姿。正岡子規も殿堂入りしてるんですよね。
関口:
されました。
徳光:
確かね。
関口:
東京の学生さんが野球をし始めたころの1人として、熱中をして、卒業後新聞記者になって、随筆の中で野球の楽しさを何度も書いたりということで殿堂入りをされたということで。
徳光:
そういう意味でね。
関口:
ペンで野球の楽しさを普及したということですね。

徳光:
中馬庚(ちゅうまかのえ)って人が「野球」って言葉をつくったんだ。
遠藤:
私、正岡子規さんだと思ってました。
関口:
正岡子規は自分の雅号、俳句を詠むときのペンネームのひとつとして、升(のぼる)さん、のぼさんで、野の球と書いて「のぼーる」と読ませてたということで。
徳光:
野球じゃなくて、のぼーる。
関口:
野球という文字は使ってたけど、訳語としてつくったわけではないらしくて。
遠藤:
じゃ、中馬さんがつくったってこと?
関口:
なので、中馬さんがベースボールを。
徳光:
ベースボールを野球って訳した。
関口:
野球と訳したということで。
遠藤:
早慶戦。
徳光:
最初の早慶戦って、明治36年(1903年)なんだ。慶応、こういう帽子だったんだね、母校は。

遠藤:
いやあ、2本線だったんですね。でも、慶応は変わらないですね、胸元の慶応は。
徳光:
同じ文字だね。書体も変わんないよね、こういう感じだもんね。
遠藤:
はい。

関口:
新興の早稲田が慶応に(試合を)申し込んで、それで、「じゃあやりましょう」っていうのがこの手紙で。
遠藤:
こんな手紙で。
徳光:
そうですか。そんなのがあるんだ。
関口:
申し込みの手紙を慶応義塾の方で保存されてまして、その返信とされるこの手紙は当館の方で、当事者の方から寄贈されています。
遠藤:
粋だな。
徳光:
始球式はないんですか、最初の始球式は。
関口:
大隈重信さんの始球式に関して、今ちょっと展示はしてないですけど。
遠藤:
大隈さんが最初の始球式?
徳光:
最初の始球式。それで、(投球が)とんでもない方向に行っちゃったんだ、ダッグアウトの方に。
でも、「大隈さんが投げたボールを打たないわけにいかない」っていうんで、バッターボックスのやつが振る。
それで、始球式はどんなボールでも最初に振ることになった。
遠藤:
じゃあ、最初にそういう。
徳光:
最初に。大隈さんがいいボール投げてたら、そうなんなかったかもしれない。
遠藤:
そしたら、打ち返しちゃったかもしれないってことですね。
これが慶応。水原さんの?
関口:
水原茂さんの。
徳光:
これ、水原さんのですか。
関口:
はい。
徳光:
これもフラノ地みたいですね。
関口:
そうですね。リンゴ事件の際に着用されたものということで。

リンゴ事件(1933年10月22日)
水原に向けて投げ込まれたリンゴの芯がきっかけで起きた大乱闘事件
徳光:
そうですか。
こんなグラブだもんね。
遠藤:
これで捕れるんですか。
徳光:
ボールは変わってないんですかね、あんまり。
関口:
そんな変わってないはずです。
遠藤:
痛くないっていうだけで、捕りやすくは絶対ないですよね。
関口:
そうでしょうね。
遠藤:
この平らで。
徳光:
両手で捕ってたんでしょうね、おそらく。みんな片手で捕らずに。
江本さんの“幻のセンバツ” 東京六大学野球の名人物エピソード
遠藤:
ここからは少年野球から、高校・大学・社会人まで、アマチュア野球に関する資料が展示されています。
高校野球、これ、選抜高校野球の歴代の決勝の…。
江本さん、2列目の一番上。

江本:
一番上、誰?岡山東商業だ。1965年、岡山東商業、ピッチャー・平松政次です。
徳光:
市立和歌山商業に見事に勝ちました。
江本:
和歌山商業は藤田平がいましたね。
徳光:
いましたね。
江本:
本当はあそこに高知商業って出る予定だったの。

徳光:
あなた、どこにいらした、この試合?
江本:
この試合は、僕ら出場辞退で、高野連から、「あんたたちは世の中から消えなさい」って言われて、どこにも表へ出てなかったんです。

2024年9月24日放送
徳光:
2年生の秋、四国大会で優勝したのにもかかわらず、春の選抜出場確定して、結局でも出場はかなわなかった。
江本孟紀:
四国大会っていうのは、四国4県で大会で優勝して、翌年もう2月1日に甲子園に選ばれて、甲子園が始まる3週間ぐらい前だったんですよね。
3月に入ってテレビ見てると、ちょうどNHKのニュースで、どこかの高校が暴力事件を起こして、出場辞退だっていうのが出てるんですよ。みんなで笑ってたんですよ。「バカな奴いるな、今ごろ」って言って、よく見ると字幕に「高知商業」って出てたんですよ。それでもう終わりました。
一生分の涙出たでしょうね、悔しくて。
徳光:
スタンドにいたんじゃないですか。
江本:
いや、それは(スタンドで見たのは)開会式だけ。
徳光:
開会式だけですか。
江本:
はい。決勝戦は見ない。決勝戦は僕らが行く予定だったから。
徳光:
本来はね。本当はここに載ってたかもしれないんですよ。

江本:
いや、間違いなく載ってたと思います。
徳光:
そうですよね。
江本:
「37回大会優勝は高知商業」と。
徳光:
高知商業。相手は岡山東で、2 - 1で勝ってましたよね。
江本:
いや、岡山はもっと前に負けてたと思いますけど。
高知商業はその後、優勝したんですよ。1980年、1 - 0で帝京に勝って。
徳光:
ほんとだ、帝京に勝ってるんだ。PL全盛時に勝ってるんだ。
遠藤:
コロナで中止っていうのが2020年。
徳光:
そうだ、2020年。
遠藤:
戦争の時以来ですもんね。

関口:
毎年、今、優勝チームのユニホームを収集して、この春の選抜の横浜と、昨年夏の京都国際のユニホームも展示をしています。
徳光:
京都国際か、これ。
関口:
大学野球の展示になるのですが。
徳光:
これは青学だ。
関口:
そうですね。これは全日本大学野球選手権の優勝チームのものを毎年いただいています。
こちらが東京六大学。
徳光:
(江本さんの)同期じゃないですか。一緒にやったんですよね。

江本:
嫌いです。こいつ(山中正竹)の陰にずっと4年間隠れて…。

2024年6月11日放送回
徳光:
当時の六大学、法政大学のメンバーがまたすごいメンバーじゃないですか?
田淵幸一(78):
そうですね、(田淵の同級生)富田(勝)、山本浩二、私、いろいろね。
ピッチャー、山中ですよ。江本もいたしね。山中の48勝(六大学リーグ通算)はもう破られません。そんな投げないですから。
170cm弱のピッチャーがね、48勝もしたんですよ。
徳光:
すごいですよね。
江本:
身長170cmもないんですよ。石川よりちっちゃいですから。
徳光:
そうなんだよ、山中さん。
江本:
48勝もしてね。私の方が先に出たんですけどね。春のリーグ戦で。
遠藤:
山中さんも野球殿堂入りされてるんですね。
江本:
そうですよ。してます。
徳光:
だってやっぱり六大学の大エースだったもん。

江本:
あの松永(怜一)さんという監督がね。本当に立派な監督さんで。アマチュアというね、もろアマチュアの。
遠藤:
松永さんのノックバット。
江本:
これね、ノックが好きでね。
徳光:
そうですか。
江本:
一日中ノックをしてました。僕らはやらなかったけど。

徳光:
そうだ、ちょっと見える? へこんでるんだよ、バットが。
江本:
あれぐらいやったと思います。
あの当時、法政三羽ガラスの田淵、山本浩二、富田、この3人は松永さんのおかげで。
徳光:
そうでしたよね。
これ島岡(吉郎)さんのキャッチャーミットだって。
遠藤:
あの島岡さんの。
徳光:
島岡さんってキャッチャーやってたんだ。一応。
遠藤:
やってたんですか。
徳光:
応援団長かと思ってたんですけどね。

2024年4月16日放送回
徳光:
明治大学はもっと厳しかったでしょ。
高田繁(79):
知らなかったんですよ。御大のこと知らなかったんです。
徳光:
島岡さんのことを?
高田:
知らなかった。だからあんな恐ろしいあんな怖い人だと思わなかったよね。
一番初めて驚いたのは4年生のキャッチャーがミスしてね。それで終わって負けて、その先輩の名前呼んで、「お前、野球続けたいか」って言い出して、当然「はいっ」って答えるじゃないですか。そしたら「よし、前に出ろ」って言って、ボンボン殴りだしたんです。「わぁ、えらいとこに来たな、すごいとこに来たな」と思いましたね。

2025年3月4日放送
広澤克実(63):
1年生の時、冬になると1塁と3塁のベンチ前に、まき割って火をつける当番だったんです、最初。
徳光:
何ですか、たき火?
広澤:
そしたら監督が、「広澤、あそこで芋焼け」って言われました。芋焼けって。
徳光:
その3塁側のたき火で?
広澤:
「監督焼けました!」って持っていたんです。「うまい!広澤うまいぞ、毎日焼け!」って言われてですね。毎日焼き芋当番ですよ。それが評価されましてね。そこから(試合に出るようになった)ですね。
遠藤:
焼き芋ね、焼かせたり焼いたり。そのキャッチャーミットもあるんですね。
徳光:
そのキャッチャーミットか、これ。焼き芋を焼く。
徳光:
これは殿堂入りしていないのに、なぜ出ているんですか。上重(聡)は。
関口:
完全試合は、東京六大学史上2回目と。高梨さんが3回目ということで。
徳光:
そうだ、ジャイアンツの高梨がね。その前に上重がやってるんだね。
遠藤:
上重さん、すごいんですね。
遠藤:
これ、全日本大学野球選手権、1968年。

江本:
僕もちょっと投げたことあります。あのころ(法政大が)優勝したんですよね。
駒澤とか亜細亜とか強い時代ですよね。
都市対抗も。私も投げたんですよ。
徳光:
都市対抗?
江本:
ええ、熊谷組ですから、私。熊谷組、優勝した時はいないですよ。もちろん。
熊谷組全盛のころは1966年。ちょっと前に、僕の前に強かったんですよ。
関口:
軟式野球、それから少年野球です。
遠藤:
少年野球も。
徳光:
少年野球も入ってるんだね。

関口:
例えば2016年の侍ジャパンの15歳以下の日本代表ですけど。
徳光:
この中に誰かいますか?
遠藤:
宮城。
関口:
宮城君。宮城大弥投手。それからタイガースの及川(雅貴)さん。
徳光:
本当だ、横浜だよ、彼は。これ中学生ですね。
関口:
中学3年生の時ですね。
徳光:
やっぱりちゃんと伸びてるんだね。
遠藤:
まだサインじゃなくて、署名というか。
遠藤:
女子野球と。

関口:
ワールドカップ7連覇ということで、7つトロフィーが並んでます。
徳光:
女子7連覇なんだ。すごいな。
このコーナー新しいでしょう?
関口:
ここ10年ぐらい、やはり競技人口も増えて、日本代表も活躍をしているということで、アマチュアコーナーの一角に女子野球を作りまして。
こちらが野球日本代表の展示になります。
徳光:
こんなに変わってるんだ。気がつかなかったな。
関口:
正式種目になったオリンピックのバルセロナから、各大会のユニフォーム。東京2020まで。
徳光:
これはぜひ若い人たちに見にきてもらいたいな。
遠藤:
アテネ(オリンピック)の時。
徳光:
これは長嶋さんが途中で倒れちゃって、中畑(清)が代理監督やって。3位になった時ですよね、確か。

遠藤:
長嶋さんのボールもありますね。
関口:
こちらは東京2020のオリンピックの決勝戦のウイニングボールとチャンピオンズリング。
徳光:
これは王さんの時ですか。
関口:
これは東京2020、稲葉監督の。
遠藤:
稲葉監督の。
徳光:
稲葉監督の時か。あの時か。
関口:
ここからがワールド・ベースボール・クラシックの。
徳光:
ここからWBCになるわけですか。

関口:
こちらが2006年ですね。これが(監督が)王さんの時ですね。
遠藤:
第1回の時ですね。イチロー選手のサイン入り。
徳光:
メキシコがアメリカに勝ったんで、あわてて帰り支度をしてたのをもう一度球場に戻ったっていう、あの年ですよね。
遠藤:
徳光さん、WBCをご覧に、アメリカまで?
徳光:
僕が見たのは大谷ですね。大谷のホームラン。WBCをリアルタイムで見たのはその試合しかない。大谷のホームランすごかったの、(東京ドームの)長嶋さんの看板に当てて。あったでしょう?対オーストラリアかな(第5回WBC1次ラウンド、大谷は看板直撃の3ランを放った)。
遠藤:
字体がJAPANって、WBCの時は筆記体じゃないですけど。

関口:
そうですね、2013年までこのスタイルで、17年から今のデザインに変わってきてる感じですね。
徳光:
野球選手はそれぞれ自分をアピールする場は増えてますね。
江本:
そうですね。いろんなそういう大会ができましたからね。
(BSフジ「プロ野球レジェン堂」 2025年7月8日放送より)
【「徳光家の“王バット”殿堂入りスペシャル」パート2へ続く】
「プロ野球レジェン堂」
BSフジ 毎週火曜日午後10時から放送
https://www.bsfuji.tv/legendo/