能登地震を教訓に進化する木質耐震シェルター、2回目の公開実験で成功

「成功です!」。重さ3トンの砂袋が落下する試験で、柴和宏課長の声が響いた。富山県と東京理科大学が共同開発する木質耐震シェルターの改良版が、4ヶ月前の失敗から立ち直った瞬間だった。

100万円で設置可能な命を守る空間

能登半島地震をきっかけに開発が進められているこの木質耐震シェルターは、高さ2.2メートル、広さ4.5畳の空間だ。住宅1階の居間や寝室に後付けできる仕組みで、一般的な耐震改修工事より安価かつ工期が短いのが特徴である。目標販売価格は100万円とされている。

3月に行われた実験は失敗に終わる
3月に行われた実験は失敗に終わる
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3月に行われた最初の試験では、天井部分が重さ3トンの砂袋の衝撃に耐えられず抜け落ちる結果となった。

新たなシェルター
新たなシェルター

しかし開発チームは諦めず、シェルターの天井部分を強化。建築現場で使用される角型パイプを9本格子状に組み込み、前回の3倍の強度を実現した。

開発者の熱意が結実した成功

「震度7が来ても人命の安全確保ができたのが大事な目標達成だと思う」と東京理科大学の高橋治教授は語る。さらに「この4ヶ月で柴さん体重10キロくらい痩せています」と、開発者の熱意を明かした。

新たなシェルターでの実験
新たなシェルターでの実験
安堵した様子の柴課長
安堵した様子の柴課長

試験の成功を受け、柴課長は「一からのスタートになるが実用化という目標に向けて」と意気込みを示した。「耐震改修工事ができない(場合の)もう一つの選択肢としてシェルターを提案できるよう進めていきたい」

富山県内の耐震化率は全国平均を下回っており、特に1981年より前の旧耐震基準で建てられた木造住宅の倒壊が能登半島地震で目立った。鉄パイプの使用で費用はかさむ見込みだが、県は引き続き100万円での販売を目指し、今年度中の実用化を目指している。今後はモデル住宅でのシェルター組み立て検証などを行う予定だ。

富山テレビ
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