2024年7月の大雨で集落が土砂に飲み込まれた山形・酒田市大沢地区では、全壊した住宅の公費解体が進められている。一方で農地の復旧は工事の入札が不調となり、工期が延期になる可能性が出ている。また、裏山が崩れ営業を再開できずにいた鮭川村のホテルが移転に向けた一歩を踏み出すことになった。

建物の解体進むもいつになったら農業ができるのか
7月25日に酒田市北青沢を訪れると、重機による建物の解体作業が進められていた。
被災した住宅と小屋など計41棟が「全壊」と判定され、6月下旬から公費解体が始まっている。これまで9棟の解体が完了している。

建物の公費解体をめぐっては、入札が2回にわたって不調となり、その後、随意契約で業者が決まった。
市は「現時点で解体の遅れはなく2025年内に完了する見込み」としている。

公費解体の入札に加え、さらに入札不調となっているのが、田んぼや用水路に溜まった土砂と流木を撤去する農地の復旧工事だ。
工事の対象は大沢地区の田んぼで、被災面積全体の4割に近い約45ヘクタール。

市は6月30日に公告したが、入札に参加した業者がなく取りやめになった。
これに対し大沢地区の農業・相蘇弥さんは、「業者の数は限られているのである程度はしょうがないと言いながら、なかなか進まないのもヤキモキする。長期になるなら補助などの期間もなるべく長期間を見通して考えてほしい」と話していた。

市は入札が不調になった要因について、「先に道路や水道・河川の工事が始まり、人手が足りないことが考えられる」としている。
また、2025年度中としていた工期を延長することも検討していて、入札のやり直しは8月のお盆以降になると見込まれている。
移転・新築の“原動力”はボランティアへの恩返し
1年前の7月豪雨で、鮭川村・羽根沢温泉にある「ホテル紅葉館」には、裏山が崩れたことで大量の土砂が流れ込んだ。

約1メートル50センチの土砂が積もり、水や温泉などを汲み上げるポンプが止まってから1年…。
裏山の工事は完了していないが、一部の土砂は撤去されきれいな状態になっていた。
土砂が流れ込んだ倉庫も使えるようになった一方で、ホテルの建物内は友人たちの力を借りて泥をかき出したあとから変わっていない。

ホテル紅葉館・元木洋典さんは、「最初はここで再開するつもりでいたので、少しでも早く土砂をかいてきれいにして何とか再開させようと思っていたが、裏山の危険性が大きかったためここでの再開は諦めた」と語る。

思い出の詰まったホテルの廃業と移転・新築を決めた元木さんは、「昨年(2024年)、ボランティアに携わってくれた人たちに恩返しをしたいという思いもあったので、何とか頑張って前に進めてみようという思いになった」とも話してくれた。

移転場所として検討しているは約100メートル離れた自己所有地で、すでに地質調査や使っていない建物の撤去などを進めている。
想定では、部屋数を少なくし、平屋のバリアフリーな宿を目指す予定だという。

元木さんは「『帰ってきたな』と思えるような宿にしたいと思っている。昨年、手伝ってもらった多くの人が集まれる空間にしたい」と、前を見据えていた。
(さくらんぼテレビ)