有名企業などをかたった偽広告被害について、「イット!」ではこれまでサーキュレーターなどをお伝えしてきましたが、今回はフライパンです。
老舗の企業が作り上げてきた信頼が、広告で悪用されています。
名前を勝手に使われた町工場を取材しました。
巨大な機械式ハンマーの音が鳴り響く、神奈川・横浜市の町工場。
作られていたのは、フライパンなどの鉄鍋です。
昭和32年創業の山田工業所。
平らな鉄板を5000回以上たたいて作る、“日本唯一”の打ち出し製法で鉄鍋を作り続けています。
地元・横浜中華街にある数々の名店で使われるフライパン。
今、その自慢のひと品が偽広告のターゲットになっているのです。
山田工業所の名前を勝手に使った問題の広告動画。
動画では「10年かけてもさびず、1300セ氏で鍛え上げられた99.9%の高純度鉄で、30年たっても真っ黒さを保っています」などと紹介され、加熱した鉄を職人が加工する様子や、さまざまな料理を作る様子などが描かれています。
一方で、「フライパン」が「プライベン」と表記されるなど、日本語の表現がおかしな点も確認できます。
偽広告にあったネット通販ページを見ると、「日本鉄器協会“金の羽釜”認証」や、「2024年グッドデザイン賞金賞受賞」などと表示され、通常価格2万9000円を、80%オフの5800円で格安販売するとしています。
加えて掲載されていたのは、フライパンを推奨する料理人による実名コメント。
しかし、肝心の手元を見ると鍋の部分がカットされていて、実際にこのフライパンを使っているのかは確認できません。
そして、「一個多役」と書かれた料理法の紹介では、炒める、焼く、煮るに続き「爆発」と、揚げ物の写真に物騒な文言が添えられていました。
広告ではあたかも山田工業所が作ったフライパンであるかのように紹介されていますが、担当者は否定します。
山田工業所・山田憲治さん:
(Q.このフライパン製造している?)ないですね。うちはそもそも冷間で作ってるので、常温で。さっき(偽広告)みたいに(高熱で)赤めて、たたいてのばしたりしない。ありえないですね。偽広告です。
あまりに悪質な偽広告。
山田工業所には3月ごろから、被害を訴える問い合わせが殺到し始めたといいます。
山田工業所・山田さん:
多いときは1日5件とか。お宅の鍋テレビで見て買ったんだけど中国の箱に入ってたとか。もう、まさかって感じですね。
「イット!」は、偽広告とは思わずに問題のフライパンを購入してしまったという、東京都内に住む50代の男性を取材しました。
28日に届いたばかりだというフライパンを開封すると、出てきたのは中国語の説明書。
不審に思い山田工業所に問い合わせた結果、偽広告の被害に遭ったことに気づかされたといいます。
山田工業所・山田さん:
(Q.被害の問い合わせはどこから?)日本全国から来てる印象です。広告に出ているものを買うときは一度少し待って、いろいろ調べてから購入していただきたい。
さらに取材を進めたところ、グッドデザイン賞の主催者も、このフライパンが受賞した事実はないとして、名称の無断使用だと回答。
さらに、金の羽釜認証をしたとされる日本鉄器協会は、そもそも存在しない団体でした。
そして、広告に実名で推薦コメントが掲載されていた料理人について調べたところ、大阪府内に実在する中華料理店の料理人の写真が勝手に使われていたものだと判明。
悪用された写真は、京都市内のフライパン専門店用に撮影した広告写真をそっくりそのまま無断転用したものでした。
鐵兎堂・林田征之オーナー:
非常に憤りというか怒りを感じます。ご協力いただいたプロの料理人の方のイメージを損なう可能性がある。
悪質な偽広告でフライパンを売っているのは、どんなインチキ業者なのか。
取材班は商品の送り状に記載された連絡先に電話し、対応したオペレーターに取材を依頼。
すると相手は、フライパンが広告と違うとの問い合わせが入っているが、詳細は分からないと回答しました。
そのうえで、販売元は中国の会社だと説明しつつも、取材はできないとして、詳しい連絡先を聞くことはできませんでした。